照る日曇る日第1490回
この不世出の天才歌手の再登場を待ちわびること20年、その「理由」を知りたくて元付き人であった著者の手になる本書を読んだ。
有能なマネージャーであり、人世の導き手であり、最愛の夫に先立たれた歌手が、伴侶の死に大きな痛手を受けたことはよく分かったが、当初は復帰の意思も持ちわせていた彼女が、いったいどうして今なお舞台に戻ってこないのか、その真意は、依然としてさっぱり分からなかった。
著者が「愛の夫婦」を永久に独占したかった気持ちは、その拙い文章を読めばよく分かるが、万人から愛された歌手のじつにもったいない宝の持ち腐れ状態が今なお続いているのは甚だ遺憾である。
口全部マスクでぴったり覆えいなさいと中止されたり能楽堂で 蝶人