あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

ドナルド・キーン9つの講演集「日本を寿ぐ」を読んで

2021-06-24 12:00:33 | Weblog

照る日曇る日第1593回


解説で尾崎真理子選手が書いているように、随所にキーン選手の声が聞こえてくる講演会のレジュメである。
「日本短詩型文学の魅力」では、韻を重視する英米の文学者らしく、日本文学における「音」に注目。例えば蕪村の「春の海 終日(ひねもす)のたり哉」の音だけで、春の海を感じさせると言うのは当然であるが、芭蕉の「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」を会場で「しずかさや いィわにィ しィみィいィる せみィのこえ」。い、い、い、い、い……」と読みあげ、最後の「い、い、い、い、い……」は蝉の鳴き声そのものであるというのである。
同様に「夏草や 兵どもが 夢の跡」をキーン選手が読みあげると、「なつくさや つわもォのォどォもォが ゆめのォあとォ」となって、悲劇的なォ音の強調が、芭蕉昨品の本質を抉っていることが具体的に証されるのであった。
このほか「松浦武四郎」や「明治天皇」「石川啄木」「泉鏡花」についての講演も興味深いものがある。


「このように思っております」というけれどこのようにの中身がスカスカ 蝶人
コメント
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