音楽千夜一夜第476回
ツァハリアスなんててんで名前も聞いたことがないピアニストだったが、ともかくモザールのピアノを聴きたかったので衝動買いしたところ、意外や意外、耳タコの名曲が新鮮に聞こえてくるのでちょっと驚いたずら。
15枚の中にはピアノソナタ全曲と2つのピアノ四重奏曲、それに6番から27番までの協奏曲が詰め込まれている。協奏曲の指揮はマリナー、ジンマン、ヴァント、伴奏はシュッツガルト放響、バイエルン放響、北ドイツ放響とまちまちで、録音の時期もさまざまなのだが、随所にさりげなく聴かせどころを仕組んでいてなかなか楽しめます。これで1枚157円とはいい買い物をしたものだと自画自賛しているところ。
ところのところで、6月3日のサントリーホールでは、御大バレンボイムがベートーヴェンの初期ソナタ4曲の代わりに間違えて、翌4日用の後期3大ソナタを演奏したもんだから、大騒ぎになったらしい。
中には2日続けて後期が聞けて大喜びしているけったいな人もいるようだが、あえてマイナーな初期作品を聴こうと張り切っていた人にとっては、有難迷惑もいいところだろう。
招聘先では、3日の高額チケットを購入して別の曲を聴かされた客のために払い戻しをするそうだが、指揮に、ピアノにと、さすが博覧強記の鉄人も、寄る年波と超多忙スケジュールには勝てず、不慮の大ボケに見舞われたのだろうか。
世界的パンデミックの最悪の時期に、なんで緊急事態宣言下の本邦にやって来たのか自宅に籠り切りの老生には分かりかねるが、一日個早く帰国して自宅で静養して頂きたいものである。
君もねえいい年なんだから自宅でねえ奥さん子供とくつろいだほうがいい 蝶人