あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

郡司正勝校注・岩波文庫版「勧進帳」を読んで

2021-06-16 14:34:15 | Weblog

照る日曇る日第1590回


コロナ禍や緊急事態宣言にもめげず、松竹や国立劇場では歌舞伎や能を大胆不敵に興行しているようだが、訳あってワクチン注射が打てず、交通事故の後遺症を検査する為に能ならぬ脳の検査などで病院通いしている私が、再び芝居見物が出来る日が来るのだろうか?
せめてままならぬ焦燥をひと時なりとも癒そうと、文庫本のこの1冊を手に取ってみた。
「勧進帳」は、天保11年に7代目團十郎(市川海老蔵)が初演、明治の「劇聖」9代目團十郎が端正な一幕物とリフレッシュして以来、市川團十郎家にとって格別重んじられている歌舞伎18番の代表的な演目である。
全体の梗概や登場人物の特色については周知の事実だから特にいうこともないが、驚くべきは、詳細にわたる細部の演出の注釈である。
弁慶が強力に化けた義経を打擲するあの名場面では、「弁慶は杖を両手にひろく持ち、振り上げ、ちょっと目をつぶって、ちょっと辛き思い入れあって、前・後・前と3度傘の上より打つ。主を打つという心で、腕は肩より上へ上げないのが口伝」とある。
終幕に弁慶が揚幕に入る「飛び六方」についても詳しい。
9代目団十郎ははじめは細かく3つトントントンと飛んだが、晩年には一足飛んで片足で中心を取る、より難しい難しいやり方を選んだそうだ。
その他「振り返る型」とか「法螺貝を背負って飛ぶ型」など色々あるそうで、おらっちこれからリハビリ代わりに暫く自宅でトントントンと飛んでみようと思うのであーる。


  唇が右下がりにひん曲がりある朝突然他人の顔に 蝶人
コメント
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