照る日曇る日第1592回
王蟲の胎内で昏々と眠り続けるナウシカは、おもむろに目ざめながら、戦乱と環境破壊の現世の矛盾が止揚され、完璧に浄化された地上の理想郷を遠望するが、果てしもない地獄の闘争が続く此岸へと引き返す。
それは、彼女自身がもはや無垢ではないからだ。無垢ではありえないからだ。
それは、彼女が、人間は、この世で生きようとすれば、汚れた存在になるほかはなく、それを勇気をもって引き受けることが生きることである、という悟りを得たからなのだ。
我見れば必ず吠える阿呆犬よ「殺したろか」という日に吠えず 蝶人