あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

大高保二郎松原典子訳岩波文庫版「ゴヤの手紙上」を読んで

2021-06-06 11:32:16 | Weblog

照る日曇る日第1587回

ゴッホにテオという最愛の弟がいたとすれば、スペインの大画家フランススコ・デ・ゴヤ(1746-1828)における、ちょうどテオに匹敵するようなかけがえのない存在がマルテイン・サバテール(1747-1803)だったろう。
サバテールはゴヤと同郷のアラゴン地方サラゴーサの有力な実業家で、その比較的短い生涯のすべての時期をつうじて画家ゴヤを支援し続けたのみならず、2人は肝胆相照らす竹馬の友だった。
1746年から1828年に至る画家ゴヤの書簡の大半を収めた本書の、そのまた大半を占める親友宛の手紙は、あたかも漱石と子規のやり取りのような真率さと率直さに満ち溢れ、読む者自身の暗い胸中心さえも、らくらくと押しひらいてしまう明るい生命の解放感が息づいている。
なかでも1782年ごろに「共作された」63番書簡は傑作で、ゴヤの筆不精に抗議するサバテールからの手紙に、ゴヤがイラスト入りの反論を書き加え、それをサバテールに送り返している。145番に書かれたゴヤ唯一の詩も興味深い。
これらの微笑ましい書簡の数々を読んでいるうちに、親友同士の2人の男には、もしかすると肉親以上の精神的肉体的な関係があったのではないか、という疑念さえひそかに湧いてくるのである。

社説ではパラオリ中止を説きながらスポーツ面では推進している 蝶人
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする