あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

ジェーン・バーキンの思い出 その3

2023-07-19 10:05:00 | Weblog

 

遥かな昔遠い所で 第93回

 

それはさておき、接待役の私は、日本の普通の家の暮らしが見たいというジャック・ドワイヨン&ジェーン・バーキン夫妻を鎌倉に招き、当時妻の両親が住んでいて、その死後には私の次男のアトリエ兼展示会場に変身した古民家「五味家」に案内すると、大層喜んでくれたのだった。

 

それから妻が運転するカローラに2人を乗せ、大仏と長谷観音を見物してから光則寺に行ったら、バーキンが鳥かごのカナリアに指を差し伸べながら、アカペラで知らない歌を歌っていたので、「ああ、この人はこういう不思議な少女みたいな人なんだ」と思っていたら、突然、「日本で火葬が始まったのはいつごろ?」とか、「日本人はどうして火葬にするの?」などと、矢継ぎ早に英語で聞かれ、不勉強で教養のない私は激しくうろたえたことを、いま思い出した。

 

長野県の親戚の田舎などでは、いまだに土葬にすることを知っていただけに、「日本全国総火葬」と言い切ることも憚られたのである。

その場はいい加減にちょろまかして、私らはそこから以前女優の田中絹代が住んでいた鎌倉山の眺めの良い日本料理屋に行って、4人でお昼御飯を食べたのだが、その思い出の「山椒洞」は、その後ミノモンタとかいう貧相な金持ち芸能人が買い取って、無惨なるかな跡も形もなく破壊され、すっかり新築されてしまったそうだ。

 

さて京都での撮影が無事に終わって東京に戻り、ドワイヨンが一足先に帰国してからも、バーキンは一人で帝国ホテルに滞在していたので、当時季刊映画雑誌「リュミエール」の編集長をやっていた蓮實重彦さんが彼女をインタビューし、私もその号に「バーキン愛」のエッセイを寄稿させて頂いたはずだが、肝心の掲載誌がどこかに消えてしまって見当たらないのが、とても悲しい。

 

  2万円にお目々が眩んでいそいそとマイナカードをもろたのは誰? 蝶人

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