あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

村上龍著「ユーチューバー」を読んで

2023-07-29 08:35:48 | Weblog

 

照る日曇る日 第1931回

 

最近はあまり小説など出てこないので、もう作家家業からすっかり足を洗って、テレビキャスターや経済評論家?になりすましているんか、と思っていたら、突如これが出たので、おやまあ、と思って、読んでみました。

 

島田雅彦なんかは、この村上より若い方だけど、それでも昔を振り返って、「回顧録」というか「半自叙伝」らしき本を2冊も書いている。

 

ところで、これを読むまで知らなかったんだけど、村上龍ってなんと古希なんですね。誰でも歳をとる。そして歳をとると、なんだか昔を振り返りたくなってくる。これはああ、そういう本かな。

 

1976年に「限りなく透明に近いブルー」で颯爽とデビューしてから、現在に到るまでの、光も影もある人世や、なかんずく女との付き合いや、最近の暮らしのあれこれや心境やらを、小説的なオブラートにまぶさず、「正直」というのでも「露悪的」というのでもないが、わりと即物的に語っているところが、思いがけず新鮮だった。

 

人世に疲れているのか、人世を達観したのか、なんとなく全篇を覆う疲労と倦怠と死の翳りのアマルガムが、この世にありながら彼岸にあるような、不可思議な印象を醸し出していて、「へえっー、これが村上龍のいまなんだあ」と実感させてくれる、そおゆう「物語」ではなく「散文小説」の本。

 

   むちゃくちゃな暑さにたまらず死んでいく無着成恭森村誠一 蝶人

 

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