遥かな昔、遠い所で 第94回
前にも書いた通り、私は彼女の接待役であったから、雑誌社の取材の時にも立ち会って、賓客の「バーキン様」に失礼や粗相のないように気を付けていなければなかったが、マガジンハウスのふぁっちょん雑誌「アンアン」の取材のときに問題が起こった。
彼女が滞在していた帝国ホテルの彼女の部屋でインタビューし、ホテルの裏口あたりで何カットかの写真撮影が行われ、「さあこれで終わりだな」と思った瞬間、取材担当のライターのおネイさんが、バーキンが肩にかけていた白くて大きなバッグに眼をつけ、彼女に断りもせずバッグを手に取って、そのままコンクリートの地べたに置き、カメラマンに「これを取れ」と命じたのである。
後ろの方でそれを見ていた私は、思わずカッとなって最前列に飛び出し、「あんた、こんな所でバーキン様の大事な私物を撮るなんて、失礼じゃないか、即やめれ!」と阻止したのだが、その白くて無暗に大きな皮製のバッグこそ、1984年にエルメスから商品化された「エルメスのバーキン」の「原型そのもの」だったのでR。
だから今思うに、本家本元の大元祖に目を付けたオネイさんは、礼儀知らずの無礼者ではあったけれど優れた編集者であり、それを実力で阻止した私は、ふぁちょん音痴の忠犬ハチ公なのでありました。
画眉鳥と台湾リスを憎むわれ超過激なるナショナリストよ 蝶人