松本孝夫著「障害者支援員もやもや日記」を読んで
照る日曇る日 第1938回
老人ホームと間違えて障害者施設に飛び込んだ老支援員が、グループホーム(知的障害者や精神障害者、自閉症や統合失調症、認知症高齢者などが専門スタッフの支援のもとで集団で暮らす家)で働き始めて出くわした、様々な人世模様、人間模様をありのままに記して無類の感動を呼ぶ素晴らしいドキュメントである。
どんな健常者も遅かれ早かれ障害者としてこの世の最後を迎えるに決まっているのだから、私たちは先輩の障害者から多くのことを学ぶことが出来るのであるが、本書こそその格好のテキストブックというても過言ではないだろう。
そこにはホームで生活する様々な障害者の人間性があざやかに描き出され、彼らと真正面から向き合う施設の支援員たちの各人各様の対応が具体的に記述されていくのだが、そのときに利用者対障害者という図式ではなく、人間対人間の1対1の関係の濃淡の内実が、白日のもとに晒され、それぞれの人間の人間性の、いわば真価が問われる瞬間が訪れる。
ホームで過ごした8年間を著者は「きついこともいっぱいあったが、それに勝るかけがえのない喜びがあった」と振り返っているが、まさにそれこそが福祉を仕事にする人の醍醐味あのだろう。
障害児を持つと、多くの父親は私のように現場から逃げ出してしまうが、本書はそういう卑怯者大夫にこそ読ませるべき本なのである。
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