照る日曇る日 第1940回
人間の意識の中には、その割合は別にして、男性の中には女性が、女性の中には男性がいることは間違いがないが、そのことと、人間の身体の男性、女性の性徴とはまるで無関係だから、その2つの次元を調和させるのは一生の大仕事になる。
性同一性障害を持つと自任する著者がいうとおり、「みんなちがってみんないい」とか「多様性はいいことだよね」などと、うわべだけのスローガンを唱えて拍手喝采しているのは唐人の寝言に過ぎない。
それがいかに大変なことであるかを、本書の中で男性器を持ち、ホルモン治療をしている「トランス女性」のMという著者の友人が登場して具体的に語ってくれるのはとても参考になる。
「女性にとってセックスはコントロールの手放しだが、男性にとっては一貫して集中とコントロール下におかなかればならないものだ」(222p)
Мのお陰で、著者は初めて男性のセックスの大変さを学んでくれたようだ。
かの吉本隆明は「女性は性の専門家になれるが、男性は絶対になれない」と断言したが、私も、コントロールを手放した女性の性感の実態なぞ皆目分らない。分らないままにこんな本などを読んでいる始末だ。
アメリカに紐付けられし日本に紐付けられて二重の奴隷 蝶人