西暦2023年卯月蝶人酔生夢死幾百夜
私は全国労働者同盟の議長に祭り上げられていたのだが、春季大会冒頭の挨拶を頼まれたので、マイクの前に立ったが、なにもいうことが無かったので、そのまま控室にもどって鏡を見たら、カストロの顔になっていたので超驚いた。4/1
「便箋2枚に認めた」という原文を、「便箋2枚にしたためた」ではなく、「便箋2枚にみとめた」というたので、これは阿呆莫迦女子アか、アホ馬鹿AIのどちらかが発音したのだと分かった。4/2
我々が、安気に暮していた生活の基盤、社会の岩盤が、突如、ガラガラと音を立てて、崩れ去ってしまった。4/3
おらっち、ニセ家族の家長に祭り上げられていたんだが、ニセ家子たちを、善導するどころか、シメシすらつけられないので、全員の総スカンを食らって、とんずらする羽目になっちまったんよ。4/4
企画室には、多士済々の男女が出入りしていたが、その中で一人の楚々とした美人がいたので、おらっちは彼女の細い首の上にうっすらとはえた、柔らかな羊の毛を、せっせせっせと、摘み取っていたのよ。4/5
夜の青山球場で、「大谷選手がカっ飛ばした、超特大ホームランの球を草の根を分けても捜し出すんだ!」と鬼監督から厳命されたので、もう1週間近くも関東平野をさすらっている。4/6
普段は、左側が汚れているおっさんが、今日は珍しく、右側が汚れていたので、おっさんは大声でわめき散らしていたが、いばらくすると、その喚き声が、焼き場の煙突から文字になって、湧きでてきた。4/7
カエルが跳びこんだ穴の奥をよく見ると、巨大な蛇の卵が、4つ5つ転がっていたので、おらっちは、日本政府の敵基地攻撃の真似をして、突き殺してやったずら。4/8
おらっちが所属している素人劇団は、演出担当の座頭が不在で、主役も脇役も、毎回役者が変わるのだが、ある日突然、「アカデミー演劇賞」を受賞したので、超驚いたよ。4/9
ミラノのヴェルディに倣って、ザルツブルク音楽院に、「引退した音楽家のためのモザール養老院」が出来、蒙録した御大カラヤン翁をはじめとする大勢の音楽家が、涎を垂らしながら、徘徊するようになった。4/10
その展覧会は、世界一広い会場で開催されていたので、数多の作品の中で、息子のちっぽけな作品がどこに展示されているのかは、いつまで経巡っても、ついぞ分からなかった。4/11
目の前に「世界のサカモト」が、カラシニコフを両腕で抱えたまま通称「民主のたこつぼ」に向かって突撃していったので、おらっちも立ち上がって、後を追ったのよ。4/12
阿呆莫迦議員たちの、破廉恥な私生活を記録した動画を、当局に提出したので、全身逮捕されて、極刑に処せられた。4/13
ヨシダ組の大幹部のマスダ若頭が、物凄くおっかない血走った眼で、おらっちの胸をこづきながら迫ってくるので、おらっちはどんどん後退して、とうとうヨシダ組の玄関の外まで追い出されてしまったが、あにはからんや、それは組と切り離そうとする若頭の親心なのだった。4/14
夜中に帰宅したおらっちは、2人の子を寝かせて夜なべしながら妻が待っている我が家にこっそり忍びこもうというている泥棒を見つけたので、手に持った傘を思いっきり背中に突き刺してやったずら。4/15
いつのまにか、また夢の中ではお馴染みの、あの町をさ迷い歩いている。かなり離れたところに、駅があるのだが、そこから汽車に乗っても、目的地に近付くどころか、かえって遠ざかってしまうことを、私は知っている。4/16
電車に乗ろうとしても、今日はここまで、なぜか自転車でやって来てしまったので、乗ることはできない。自転車をそこらにもたせかけて、ぶらぶら歩いていると、ヤクザのようなチンピラが、「やい、こんなとこに自転車なんか勝手に置きやがって」と絡んで来た。見ると、彼の後ろには長い行列が出来ているようなので、焦る、焦る。4/16
町の中には、平安時代に造営されたと思しき三重塔のある御寺や、長い参道を有する神社があって、その参道を歩いているときに、いくつかの出会いと事件が生起したようだが、その内容は、杳として定かならず、霧の中で霞んでいる。4/16
会社に夜遅く戻ると、北海道の友人が送ってくれた1本の牛乳が、私の机の上に置かれていたので、大切に家に持ち帰ったずら。4/17
またセールスの電話がかかって来たので、すぐに切ろうと思ったのだが、さかんに「ほぼほぼ」と叫ぶので、『「保母」と「ほぼ」という日本語はあっても、「ほぼほぼ」という日本語はない。恐らくボボ・ブラジルあたりからやって来た外来語だろう』と、噛んで含めるように教えてやった。4/18
この美術館では、作家たちが、来展を呼び掛ける動画メッセージを上映しているのだが、いずれも、最初の呼びかけが、暫くすると、各人各様の芸術的、政治的スローガンの連呼に変わっていくのが、面白いといえば、まあ面白くないことも、なかった。4/19
久し振りに五味家を訪れたら、ウサギの大家族が繁殖していて、1階には母親と45人の子供、2階には父親と3人の子供が分かれて住んでいて、階段には、大勢の亀さんたちが、思い思いに寝そべっていた。4/20
北から、巨大ロケットにかんする、技術提携の話がきたのだが、いろいろ考えた末に、断ったずら。4/21
死んだ父が、相変わらずハトムギチャを守って、自己解体の危機に瀕したので、コロナ以後は、「2時間を超える映画は、みな1時間半までにカットせよ」というお達しが出たらしい。4/22
私が詩集の最後の校正をしていたら、どういう訳だか自作の詩ではなく、香港の民主派の新聞『りんご日報』の2021年6月24日の、「雨の中香港の人にお別れする。また会いましょう!」という、最後で最期の記事が載っかっている。じつに不思議だ。4/23
その男は、私の壊れたラジオや空気枕など、ありとあらゆる身の周りの品々を、まるで魔法使いのように、あっという間に直してくれた。4/24
清水通りから円神神社に向かう小道は、鬱蒼とした森の中にあって、相当不気味だが、神社で賽銭を投げこむと、地下を流れる河の底に蠢く、大勢の不思議な人たちが、我がちに拾い集めている姿が見えて、一層不気味だ。。4/24
イケダノブオが、26日に「サンフランに行く」というので、つい「じゃあ一緒に行こうか」というてしまったが、別に一緒に行って、一緒になにかをするあてがあるわけでもないので、後で後悔したのよ。4/25
亡くなったはずのベルナルト・ベルトリッチ監督から、新作映画の劇伴の作曲を頼まれたのだが、ペンを執って真っ白な楽譜に向かうたびに、坂本選手の「シェルタリング・スカイ」の主題歌が頭ん中で鳴り響くので、涙を呑んで辞退してしまった。4/26
怪しげな茶色いカクテルを、誰かれなく「飲め飲め」と強いている、不届きな野郎がいた。4/27
白いワイシャツ姿の男が、てらこ下駄屋の店先に横付けして、花柄のブラウスを着て、おそらく20代の若さに輝く母の愛子さんに、なにやらぺらぺら話しかけている。危ない!きゃつが犯人なのだ。僕は、その場に全速力で駆け付けようとする。4/28
春の長雨が続き、おらっちは引き算ばかりしているので、くだんの伯爵夫人は「どこにもお出かけできないから、あたし詰まんないわ」と、のたまわるのだった。4/28
私の右隣の女は、タイコを叩きまわっているし、左隣の女は、パチンコ台の前に座って、延々とパチンコを続けている。ところが、突然右隣の女が、左隣の女と喧嘩をおっぱじめたので、私は困ってしまった。4/29
いつのまにやら道路の上に、巨大なゴミが置かれているので、近所の人たちと一緒に調べてみたら、どうも同種同文の東アジアの民草の生活道具の一式らしいが、それがいったいどのようにして、こんなところにまでやって来たのか、については、諸説紛紛だった。4/29
4年ごとに開催される映画祭にやってきたわたし。港の突提の先端には、不慮の事故で亡くなったわたしの夫の記念碑が建っているが、映画祭が終われば、誰一人訪れる人もなく、忘れ去られていくのだろう。4/30
わが糞を深々と嗅ぐ原爆忌 蝶人