藤本頼人著「源頼家とその時代」を読んで
照る日曇る日 第1942回
悪辣非道な北条氏に若くして伊豆で虐殺されてしまった2代目鎌倉殿の悲劇の生涯を振り返る1冊である。
従来とかく「悪君」呼ばわりされていたこの人物を、丁寧に見直し、かくべつの「良君」でもないが、その行政も、人物も、蹴鞠や狩猟の趣味すらも、さして「吾妻鏡」が指弾、誹謗中傷するほどのレベルではなかったことを強調している。
それにしても本来なら北条一族を遠ざけ、比企一族と共に長く源氏の正統を世に伝えるはずであった頼家が哀れな最期を迎えるに到ったことは、運命のいたずらというも愚かなことであった。
我こそは尾籠な1匹の獣なり臍に溜まりし胡麻の臭さよ 蝶人