道浦母都子歌集「あふれよ」を読んで
照る日曇る日 第2113回
作者による7年ぶりの歌集を読みました。
人生の三分の二まで過ぎているこれは大へん急がなくては
チェルノブイリ原発で工員たちとランチを食べたあれから体調崩れていった
「今の日本はあんぽんたん」詩人田村隆一言えり確かに
たまさかに死刑囚坂口弘が夢に来て自ら作りし短歌を諳ず
肩書に「歌人」と記したことは無しブランキストと書きたきものを
起立せず国家うたわず千秋楽見終えて薄暮の坂を下りぬ
落ちながら匂いをかもす滝の水 滝の匂いは遊女の匂い
作者自身も、「自分は短歌より俳句をやったほうが良かったかもしれない」と回顧していますが、一読していかにも現代歌人らしからぬ散漫無頼でアナーキーな印象。それはいっこうに構わないのですが、自分が間違った道を歩んできたかもしれないと思うことは、まことい哀しいものです。
我々は何のために生きてるか税金を払うために生きてる 蝶人