きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

東芝半導体売却 四日市の苦悩② 地域に不安・危機感

2017-05-19 11:12:00 | 経済・産業・中小企業対策など
東芝半導体売却 四日市の苦悩② 地域に不安・危機感

東芝をはじめ大企業の工場を誘致し、発展してきた三重県四日市市。その街並みは時代の荒波とともに移り変わってきました。
大型ショッピングセンターの台頭によりシャッター街となっていた駅前商店街は、東芝の四日市工場の稼働にあわせて、仕事終わりの従業員らが集う、飲み屋街へと姿を変えました。昼間はシャッターが閉まり閑散としています。しかし、午後7時を過ぎたころには、飲み屋に立ち寄るスーツ姿の人たちでにぎわいます。
東芝は米原発事業での損失を穴埋めするため四日市工場を含む半導体事業を売却することにしました。街の光景は、これからどのように変わっていくのでしょうか。
近鉄四日市駅に近い諏訪西商店街で祖父の代から仏具店を営む水谷武生さん(68)は、「私が若い頃の商店街は、昼間真っすぐ歩けないぐらいにぎわっていました」と懐かしむように話します。
商店街には多くの呉服店や喫茶店が立ち並び、周辺の街からも、買い物客が集まっていました。住民同士が顔を合わせて談笑する憩いの場でもありました。「商店街は変わってしまいましたが、飲み屋まで撤退されては困ります。東芝の工場切り売りには危機感を感じます」



仕事終わりの会社員らでにぎわう四日市一番街商店街=4月7日、三重県四日市市

常連客も減少
半導体事業の売却先の選考が行われています。海外企業含めた企業の名前が挙がりますが、売却先選びの状況は、従業員や周辺地域に知らされることはありません。地域では不安の声が広がっています。
「時代の流れなんでしょうね」。四日市市内の商店街で日本料理店を営んでいる男性は、自分に言い聞かせるようにつぶやきました。
東芝に勤める常連客が来店する頻度は減り、キャンセルも増えました。東芝の半導体事業の切り売りについて、「商店街はとても衝撃を受けました。心配です」とうつむきながら語っていました。
東芝をはじめ工場への出張者が多い四日市市ではビジネスホテルが林立しています。

客の6割東芝
近鉄四日市駅近くにあるホテルの従業員は、「今のところ東芝関係での変化は感じません。東芝は雇用と設備投資は継続すると表明しているので、大きな懸念はないです」といいます。同ホテルはビジネス関係者と海外旅行客を主な客層としています。
「今後、ビジネス関係が落ち込むことがあれば、海外旅行者層の獲得に力を入れようと考えています」
「懸念はない」というものの、将来を楽観はしていません。
巨額な設備投資を必要とする半導体事業は、工場建屋の新築や建て替えを頻繁に行います。そのため建屋の建設労働者や機器を搬入するメーカー関係者が多く出入りします。
四日市市内にあるタクシー会社の男性従業員は、「お客さんの6割は東芝関係者です。朝7時から9時、夕方5時から7時がピーク。会社の車をすべて出すぐらいです」と話します。
「売却先がどこになるのか注意深く見守っています。個人的にはやはり不安です」(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月13日付掲載


東芝半導体事業の売却先。当の労働者が一番心配するところですが、地元の商店街も振り回されています。

東芝半導体売却 四日市の苦悩① 工場誘致の揚げ句に

2017-05-18 14:27:43 | 経済・産業・中小企業対策など
東芝半導体売却 四日市の苦悩① 工場誘致の揚げ句に

東芝の半導体工場がある三重県四日市市の街並みは、企業とともに変ぼうを遂げてきました。東芝は、米国での原子力事業の損失を穴埋めするため、半導体事業の切り売りを進めています。地域経済への影響が懸念されています。(斎藤和紀)

「大企業を呼び込めば、地域が潤う」
この神話にしがみついた三重県と四日市市は、雇用創出や地域産業の振興を目的に、多額の補助金を東芝に交付しています。
三重県は事業所などの新設・増設などに約24億2000万円、四日市市は事業所などの新設・増設、研究機能の強化に約28億5000万円を東芝に交付。総額は約52億7000万円に達しました。

雇用増えたか
しかし、誘致の目的である雇用創出の効果があったかは不透明です。地元の三重県や四日市市での従業員採用数は、東芝が公表しないために県や市は把握できないといいます。四日市市は「(東芝による地元での雇用数の)統計はとっていない。今後詳しく調査する予定はない」としています。
東芝の四日市工場に隣接する広大な従業員用駐車場には、三重県外のナンバーをつけた自動車がずらりと並びます。岩手、大分、沖縄など全国各地のナンバーがあります。
四日市工場の従業員数は、2017年4月1日時点で6200人と発表しています。しかし、非正規雇用の従業員が多いとみられます。メンテナンス業務を請け負って工場内で働いていた男性労働者は「部門ごとにいくつかの派遣会社が入っていた」と証言します。ところが、県・市は四日市工場での非正規雇用者数を把握していません。
東芝の四日市工場が操業開始したのは1993年のことでした。
「東芝の誘致は、市が全面的に支援して進められました」。日本共産党の萩原量吉元三重県議は語ります。
「市の土地開発公社は東芝誘致のために野山を削り、東京ドーム9個分の土地を造成しました。強引に買収し、低い値段で提供しました。工場周辺の道路整備には約17億円投入するなど東芝のための基盤整備にも力を入れました」
東芝を引き留めるために奔走する市の姿もあります。
東芝は2008年に新たな建屋を建設するため地権者と用地買収の交渉をしました。しかし地権者が建設予定地以外の土地も買収することを条件としたため頓挫。東芝は岩手県北上市への生産拠点の移転を検討しました。移転に危機感を募らせた市は「新棟建設によって雇用約1200人、税収約220億円の経済効果が見込まれる」と宣伝。1・8ヘクタールの土地を約2・5億円で市が東芝に代わって買収し、移転を踏みとどまらせました。東芝にとって不要な建設予定地以外の土地は市が所有しましたが、用途がないため放置されました。



東芝メモリの四日市工場=三重県四日市市

悲劇的な結果
半導体工場の売却をめぐり、松下智治四日市工場長は、雇用は維持すると県や市に説明しています。しかし雇用維持の保証があるのか問われると、松下氏は「(守られるという)担保はない」と答えたと報じられています(中日新聞、4月7日付)。売却先によっては大規模な解雇が懸念されます。
「屈用創出」と「地域経済の振興」のために県・市は巨額な税金を東芝に投じてきました。しかし、その結果は半導体事業の切り売りという悲劇的なものでした。
(つづく)(2回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月12日付掲載


兵庫県でも、大企業の誘致に補助金を出して、勝手に撤退されてひどい目にあっています。
東芝の場合は、企業の経営方針でなく、身売り先の術中に依存してしまう。

韓国大統領選 変革求めた国民③ 平和外交へ思いたくす

2017-05-16 19:53:28 | 国際政治
韓国大統領選 変革求めた国民③ 平和外交へ思いたくす

韓国は今年、民主化30年を迎えました。26年間続いた軍事独裁政権を倒し、国民が大統領を直接選ぶ民主体制を勝ち取ったのは1987年のこと。同年12月に行われた大統領選挙では90%近い国民が投票しました。

若者から支持
今回は、不正義をただしたいというエネルギーが集まった「ろうそく集会」で勝ち取った大統領選挙でした。そして20代、30代に圧倒的な支持を得た文在寅(ムン・ジェイン)大統領が誕生します。
恵泉女学園大学の李泳采(イ・ヨンチェ)准教授(45)は「若者が、投票を通じて政治や社会を変革できるという経験をした。韓国の民主主義のさらなる発展につながる大きな出来事」と強調します。
若い世代が文氏を支持した理由の一つは、就職難や非正規雇用など経済問題でした。李氏は併せて「安保問題でも支持を得ていた」と見ています。
「男性は兵役に就く。そのなかで何があっても戦争は起きてはいけないと考えています。北朝鮮の核問題で朝鮮半島の危機が高まっているからこそ、米中を説得し、北朝鮮とも対話するという文氏を選択した」と分析しました。
1950年に勃発した朝鮮戦争は、53年に米中主導で休戦協定が結ばれ、南北の分断が固定化しました。
ソウル大学日本研究所の南基正(ナム・ギジョン)副教授(53)は、「東アジアが安定することで、日韓の歴史問題も南北の問題も解決できる」と語ります。



「共に民主党」の幹部らと当選を喜ぶ文氏(中央)=5月9日、ソウル

北問題を重視
南氏は、文氏が就任演説で「朝鮮半島の平和定着のためになら、すべてのことをやる」と語ったことに「全く同感だ」と応じます。
「韓国は、戦争の準備もしながら対話もする。休戦状態で生きる韓国にとっては仕方がないことで、だからこそ国民は平和政策が重要だと考えています」
文大統領は公約に、北朝鮮が核開発を断念すれば休戦協定に代わる「朝鮮半島平和協定」を締結することを盛り込みました。10日に発表した人事でも、北朝鮮問題に精通する人物が要職についています。
南氏は、安倍晋三首相が考える安全保障は否定しないとする一方、「防衛を考えるのと同じくらいの努力で、平和をどうつくっていくのかを考えなければいけない」と力説。「日本が、北朝鮮との交渉を積極的に行ったり、『慰安婦』問題の真の解決にむけた努力をすることで東アジアの平和構築に寄与することになる」と述べました。
文氏は11日、さっそく米中日と電話会談を行いました。日本には、「(『慰安婦』問題で強制性などを認めた)河野談話と(植民地支配と侵略を認めた)村山談話の内容と精神を継承し、尊重する姿勢が大事だ」と述べました。こうした外交を後押しするのは平和を求める国民の声です。
(おわり)(ソウル=栗原千鶴 写真も)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年3月13日付掲載


韓国が民主化されて30年になるんですね。隔世の感です。
軍事独裁政権下、朴槿恵(パク・クネ)元大統領のお父さん、朴正煕(パク・チョンヒ)(1963年12月17日~1979年10月26日)、全斗煥(チョン・ドゥファン)(1980年9月1日~1988年2月24日)が悪名高き大統領として記憶に残っています。
民主化後に生まれた若者たち。彼らがまた韓国を変革しています。


韓国大統領選 変革求めた国民② 迷走の保守 根強い支持も

2017-05-15 11:11:11 | 国際政治
韓国大統領選 変革求めた国民② 迷走の保守 根強い支持も

国民の運動が決定的な力となった前大統領弾劾で実施された大統領選挙。若い層が押した中道左派「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏の当選について、慶北大学法学専門大学院の金昌禄(キム・チャンロク)教授(55)は、「若い世代が政治を動かし、新たな歴史の一ページを開く選挙だった」と評価しました。
一方、大邸市とその周辺の慶尚北道と慶尚南道で保守・自由韓国党(旧セヌリ党)の洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補の得票が文氏を上回ったことについて、「この地域の根深い保守意識を見た」とも語ります。



街頭演説する自由韓国党の洪候補=5月6日、ソウル近郊・安山

序盤は1桁台
旧セヌリ党は朴橦恵(バク・クネ)前大統領の弾劾の賛否をめぐり分裂しました。弾劾に賛成し、自由韓国党から離党した議員は「正しい政党」を結成。大邸出身の劉承旼(ユ・スンミン)氏を擁立しました。
選挙戦の序盤、洪、劉の両氏の支持率は1桁台でした。洪氏は文氏を北朝鮮に従う「従北」勢力と決め付け、「文候補が大統領になれば親北政権が誕生する」と危機感をあおりました。
自由韓国党は「保守の団結」を呼び掛け候補一本化を模索しますが、劉氏は拒否。これに反発した「正しい政党」議員10人が投票1週間前に離党する事態となりました。
迷走が続いた保守派。金教授は、保守の地盤が崩れていることを実感しています。大邸市では保守系の得票率が50%を割り、出口調査では全国的に50代以下は、文氏が洪氏を上回りました。

解体危機回避
「テレビ討論や街頭演説などで相手を論理もなしに『従北』と決め付け、ののしる洪氏に対して、若い世代は違和感を持った。もう保守の古い政治手法は通じなくなった」
洪氏が得た785万2849票(得票率24・03%)は固い支持層の票です。恵泉女学園大学の李泳采(イ・ヨンチェ)准教授(45)は「1桁台だった支持率を考えると、洪氏の24%という数字は、党を解体の危機から救い、次の政治活動ができる最低限の得票だった」と語ります。
一方、得票率6・76%にとどまった劉氏に対しては、「韓国に中道保守がいることを示す役割は果たしたが、信頼を得るまでには至らなかった」と分析します。
「今回の選挙は市民の勝利とは言えるが、保守派の力がなくなったわけではなく、支持基盤を固めたとも言えます。文政権が政治改革を進めるためには、今後も市民の力が大切だろう」と語りました。(つづく)(ソウル=栗原千鶴 写真も)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月12日付掲載


相手を論理もなしに「従北」と決め付ける保守の候補に、若者は違和感。もう保守の古い政治手法は通じなくなった。
日本でもかつてのような反共宣伝は通用しなくなっている。

韓国大統領選 変革求めた国民① ろうそくの力で勝ち取った

2017-05-14 10:59:09 | 国際政治
韓国大統領選 変革求めた国民① ろうそくの力で勝ち取った

韓国の首都ソウル中心部の光化門広場は、朴橦恵(パククネ)前大統領の罷免を求めて、ろうそくを手にした市民が昨年10月から20週連続で土曜日に集会を開いた場所です。そこに大統領選挙投票日の5月9日深夜、再び多くの市民が駆け付けました。
「国民の切実な願いを決して忘れない。渾身の力を尽くして、新しい韓国をつくる」―大統領選で当選確実となった文在寅(ムンジェイン)氏がこう宣言すると、大きな歓声と拍手がそれに応えました。



文氏の当選を喜ぶ人たち=5月9日、ソウル

「将来が不安」
文氏に会いたいと広場に駆け付けたキム・ウナさん(34)は、罷免までの過程で朴氏をめぐる政財界の癒着や知人に対する特別待遇などが明らかになり「衝撃を受けた」といいます。
「不正義をただし、誰もが幸福を感じられる新しい韓国をつくってほしい。私たちの大統領ですから必ず守っていきます」
求職中の男性(30)は、経済政策に期待を込めて文氏に投票しました。20歳で徴兵のため軍隊生活を送り、その後、大学院を経て食品会社に就職を希望しましたがかないませんでした。「年齢を考えると将来が不安。質のいい雇用が必要だ」と語ります。
ケーブルテレビ局JTBCが選挙後に発表した調査によると、有権者が重視した政策の1位が「貧困の解消」で、2位に「青年の雇用を増進」、3位が北朝鮮や「慰安婦」問題など「安保や歴史問題」でした。韓国では2016年、青年(15~29歳)の失業率が9・8%でした。非正規雇用も増えており、結婚や出産を望めないという若い人たちも多い。
また高齢者層でも格差が広がり、自ら命を絶つ人も少なくないのが現状です。経済協力開発機構(OECD)によると、低所得で生活が厳しい人の割合を表す「相対的貧困率」は、韓国の場合、高齢者が約半数を占めています。
イ・サンフンさん(47)は、ソウル中心部で見かけるホームレスが高齢化し、また増加していることに心を痛めています。「韓国は年金制度も不十分で、自分自身も将来が不安。雇用、経済、福祉と総合的な改革を、新大統領には期待します」と語りました。

「世論の勝利」
首都圏の大学の法学部教授(51)は「広場の人びとの世論が反映した選挙結果だった」と分析します。
「ろうそくの力で弾劾に追い込み、新しい政治、政権交代を勝ち取った。市民が、民主主義を議論のレベルではなく経験として実感したことは、今後の韓国の歴史にとっても大きな意味がある」と語りました。
政権交代を実現し、文大統領を誕生させたのは、変革を求める韓国国民の強い意志でした。(つづく)(ソウル=栗原千鶴 写真も)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月11日付掲載


政財界の癒着で大統領選になったわけだから、保守も革新もそれには応えないといけない。さらに「貧困の解消」「青年の雇用」に応えたのが、「共に民主党」の文在寅氏だった。