きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

軍事に傾く三菱重工② 18年以降「飛躍」と位置づけ

2017-05-12 10:49:24 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事に傾く三菱重工② 18年以降「飛躍」と位置づけ

三菱重工は国内外の武器市場を開拓するために、さまざまな手を打っています。一つは会社組織の再編です。2014年に事業本部制からドメイン(分野)制に完全移行したのが重要な一手でした。
事業本部制とは、社長の下に九つの事業本部を置き、各事業本部の下に複数の事業部を置く体制でした。
事業本部の編成は生産場所の共通性など社内管理の観点で行われたため、同じ顧客を持つ事業部が別々の事業本部に属していました。戦車をつくる特殊車両事業部は特殊事業本部に属し、戦闘機をつくる航空機に属するという具合でした。同じ軍事部門でも、所属する事業本部がばらばらだったのです。





戦闘機F15を製造してきた三菱重工の小牧南工場=愛知県豊山町

事業部を再編成
ドメイン制の特徴は、「顧客の共通性」という視点で事業部を統合し、四つの事業ドメインに再編したことです。①エネルギー・環境②交通・輸送③防衛・宇宙④機械・設備―の4ドメインです(17年に「交通・輸送」を解体して3ドメインへ集約し、防衛・宇宙には航空を追加)。目的は「市場への総合力を発揮」することでした。
防衛・宇宙ドメインの中には軍事と宇宙に関わるすた。特殊車両事業部と航空機事業部のほか、護衛艦や潜水艦をつくる艦艇事業部、衛星をつくる宇宙事業部などです。
権限の所在も変わりました。各ドメインにはドメインCEO(ドメイン長)が置かれ、社長の権限と責任が一部委譲されました。各ドメイン長が事業推進権を持って利益を追求するしくみです。
つまり三菱重工は、武器市場の開拓へ「総合力を発揮」するために、すべての軍事部門を一つのドメインに統合し、ドメイン長に強い権限を与えたことになります。社長に匹敵する事業推進権をもつ防衛・宇宙ドメイン長が、製造しうるあらゆる武器を防衛省や外国政府に売って歩く態勢を整えたのです。
その防衛・宇宙ドメインが16年6月10日に事業戦略説明会を開きました。説明会に提出された事業戦略の最終ページには、重大なグラフが載りました。
17年までの3年間を「拡大ステップへの準備」期間とし、18年から始まる次期事業計画以降を「飛躍のステージ」と位置付けたのです。23年までに軍事部門の事業規模をぐんぐん拡大していくイメージを示しました。

武器輸出が第一
事業戦略に記載された「成長戦略」の1番目の柱は「防衛装備移転三原則等を挺(てこ)に海外展開」すること。つまり武器の輸出でした。説明会では水谷和久防衛・宇宙ドメイン長が力説しました。
「アメリカの大手防衛産業・防衛企業、われわれがライセンス生産をさせていただいた企業との間で、何か協業できないかという話「E」(輸出承認証)の取得の手前くらいまではいくつか進んできている」
「防衛省さんなり経産省さんなりに相談して、次のフェーズ(段階)に進んでいく」
米国企業との間で武器輸出につながる協業を探っており、日本政府の承認を得る手前まできた案件が複数あるというのです。F15戦闘機の部品輸出計画は、いくつもある武器輸出案件の一つにすぎないことになります。
安倍政権が開けたパンドラの箱から、「死の商人」が勢いよく飛び出そうとしています。4月25日の参院外交防衛委員会で日本共産党の井上哲士議員は強調しました。
「国際紛争を助長する武器輸出は憲法9条に反する。武器輸出で栄える国になってはいけない。武器輸出禁止に立ち戻るべきだ」
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月11日付掲載


すべての軍事部門をひとつのドメインに集約。防衛省との関係では効率的なのかもしれませんが、非常に危険な効率化です。

軍事に傾く三菱重工① 水面下で武器輸出計画

2017-05-11 14:44:27 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事に傾く三菱重工① 水面下で武器輸出計画

三菱重工業が戦闘機F15の部品を米軍に輸出する計画を水面下で進めていました。日本共産党の井上哲士参院議員が初めて明らかにした事実です(4月25日、外交防衛委員会)。武器輸出三原則を撤廃して武器輸出を推進する安倍晋三政権のもとで、同社は軍事でかせぐ戦略を強めています。(杉本恒如)

井上議員が独自に入手したのは「三菱重工労組名航支部」が2016年2月12日に発行した「航労ニュース」です。会社側が労組に提案した内容を組合員に周知するための組合報です。そこにはF15の部品輸出計画が詳細に書かれていました。



戦闘機F15(米空軍のホームページから)

201機空自に納入
「今後の防衛事業は、武器輸出三原則の緩和に伴い、従来の既存(国内)事これを基盤とした国際協業、さらには拡張(輸出)などへの展開を目指している」
「F15についても今年度下期よりライセンサーと協業した米軍への部品輸出検討を開始し、年度末に掛けて提案活動が本格化する状況となった」
F15は米社マクドネル・ダグラス(現ボーイング)が開発した戦闘機です。三菱重工は1978年以来ライセンス(許可)契約にも201機を航空自衛隊に納入してきたと組合報は記しています。「米空軍を始め西側諸国においても今なお主力戦闘機であり、2040年代まで運用される予定」だと強調しています。
米空軍は現在468機のF15を保有しているとホームページで公表しています。米国での新規の製造は、米軍向けには終了していますが、輸出用には続いています。米国は84機のF15を輸出する契約を11年にサウジアラビアと結びました。16年には72機の輸出でカタールと合意しています。イスラエルもF15の追加調達を示唆してきました。
組合報によると、F15の部品輸出計画はすでに、きわめて具体的な段階に到達していました。
会社側は労組に対し、部品輸出を実現するために「特別暫定時間外協定」を提案しました。「短期間で検討を進める」ために、労使協定で定めた時間外労働の限度を超す、特別の長時間労働が必要だというのです。航空機整備業務課の「キーマンへの負荷集中が避けられない」というのが会社側の主張でした。
「キーマン」は何をするのか。会社側は、「輸出相手国である米国連邦調達規則等について事前に調査のうえ対応を検討する必要がある」と説明しました。さらには、「高利益確保に向けた」調査や検討が必要だと繰り返し説きました。
「輸出相手国の契約条件や会計基準に基づいて、リスク要素を加味した高い利益確保の方策を検討する必要がある」
武器輸出で利益を増やしていく姿勢が露骨にあらわれています。

自動的に拡散も
問題は米国への輸出にとどまりません。安倍政権が定めた新原則では、日本企業がライセンス元に武器を輸出する場合、輸出相手国から第三国への再輸出が日本政府の事前同意なしで可能になります。三菱重工が米国に輸出する部品は、米国からF15を買う中東諸国などに自動的に拡散しかねないのです。
本紙の問い合わせに対し、三菱重工広報部は「現時点でF15の部品を輸出する計画を進めている事実はない」と回答。しかし16年2月の三菱重工労組ニュースに同社のF15部品輸出計画が書かれた事実は否定しませんでした。
(つづく)(2回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月10日付掲載


F15などの沢山発注される戦闘機。儲け頭になると同時に、海外で使われる危険性が免れない。

島の未来築く「自治の原点」 島根・海士町 合併せず、持続可能な町づくり

2017-05-10 14:49:10 | 政治・社会問題について
島の未来築く「自治の原点」 島根・海士町 合併せず、持続可能な町づくり

日本海の隠岐諸島にある人口約2300人の小さな自治体、島根県海士町(あまちょう)。国から迫られた「合併」をせず、「自立」を選択したことを原点に、住民と行政が力を合わせて魅力あるまちづくりをめざす取り組みが注目されている同町を訪ねました。
(前野哲朗)




町の玄関口・菱浦港の近くの丘に立つ県立隠岐島前(どうぜん)高校。隠岐諸島・島前地域の3町村で唯一の高校です。山内道雄町長は3月の卒業式を振り返ります。
「生徒、家族、教職員、スタッフ、来賓の皆さんで体育館がいっぱいになり、よくここまできたなって、祝辞を述べながら涙がでたよ」



島根県海士町長・山内道雄さん=4月29日、海士町役場

島留学で魅力化
10年ほど前に同高校は、少子化の影響もあって入学者が激減し、廃校の危機に直面しました。2009年から同高校の「魅力化」にたずさわる豊田庄吾さん(43)は「廃校となれば人口減少はさらに加速します。島の未来に直結する問題でした」と話します。
島前3町村で、教職員、行政、住民らが議論を重ねて同高校「魅力化構想」を策定(08年)します。生徒を支援する公立塾を設置。
「島留学」として全国から生徒を募集し、住民は家族のようにサボートする「島親」となって協力しました。地域の魅力や課題を探求する授業も行っています。それから同高校への進学希望者は増加し、14年度から全学年で学級増。廃校の危機は脱しました。
3月の卒業式後、進学のために島を離れる多くの子どもたちは、山内町長にこう言いました。「いつか島に戻って恩返しがしたい」
海士町は2000年代前半、国から合併を迫られましたが「島は自ら守り、島の未来は自ら築く」と決め、合併せずに「自立の道」を選択。これが海士町の「自治の原点」と山内町長は強調します。



隠岐島前高校=4月28日、島根県海士町

産業再生に挑戦
行政と住民の知恵と工夫で地域資源を活用し、持続可能な島をつくるために第1次産業の再生に挑戦してきました。漁業は、不便な離島のために鮮度が落ちる問題を克服するため、町として凍結技術を導入して支援。農業では、ワイン産業化支援や、ミカン栽培を再生させる10年計画をたてて、町職員と農業者が相談しながら進めています。
都会などから移住するIターンの若者は04~15年で356世帯521人(定着率5割) となり、今や町人口の1割にのぼり、人口減少に歯止めをかけつつあります。さらにまちづくりの力となって活躍しています。
なぜひかれるのか―。大手自動車メーカーを辞めて9年前に海士町に移住した阿部裕志さん(38)。「みんなが幸せになる絵が描きにくい」社会に疑問を感じていたと言います。海士町と出会い「大量生産大量消費の社会から転換していくという町のビジョンに共感しました」と語ります。
島前高校「魅力化」に取り組む豊田さんもーターンです。「公立塾」の責任者を務める豊田さんは「良い教育をつくっていきたい。そして、人やお金が東京に一極集中する流れを変え、地方で暮らすことを選べる社会にしたい」と話しました。

住民が主体となって 島根大学名誉教授 保母武彦さん
海士町の地域づくりは全国のトップクラスです。その基礎にあるのは、「島は自分たちで守る」という「自治・自立」の精神に満ちた行政と住民の連携です。「地域づくりは人づくりから」と言われますが、海士町では「人づくり」で、住民が地域づくりの主体になってきています。この結果、人もカネも情報も集まってくる魅力の島がつくられてきたのです。海士町には大企業も先端産業もなく、あるのは海と農地と森林だけですが、Iターン者が押し寄せる魅力の島となったのです。
島の環境と資源を子や孫の世代に受け継ぐ、維持可能な水産業や隠岐牛の牧畜の発展も、行政と住民の連帯の結晶です。伝統的な農漁村の助け合い社会の中で、Iターンの若者たちも、人間性豊かな暮らしを始めています。そのカギは、「自治・自立」であり、温かい椙互扶助です。
安倍政権は、地方の財源も政策も国が「選択と集中」の権限を握り、副市長、副町長などに国家公務員を送り込むまでになっています。これは、アベノミクスへの利用からさらに進んで、戦争法と一体になった「銃後を固める地方創生」の危険が濃厚です。そのような政策方向は、憲法に基礎を置く地方自治をつぶすことにほかなりません。
海士町のIターン者のように、人間らしい生き方を求めて農山村への移住を望む若者が増えています。海士町の取り組みは、日本の将来のあるべき姿を問うていると思います。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月9日付掲載


「島留学」って発想いいですね。産業を呼び込むのではなく、元々ある産業を魅力化。Iターンが押し寄せる町。

校閲の目 朕惟(ちんおも)ふに

2017-05-08 10:14:39 | 政治・社会問題について
校閲の目 朕惟(ちんおも)ふに



森友学園問題で話題となった「教育勅語」。園児たちが唱和する異様な映像にショックを受けました。その冒頭、「朕(ちん)惟(おも)ふに…」の「朕」とは?もともとは秦の始皇帝が「天子の自称」と定めて使ったもので、日本では天皇しか使わない言葉です。



この「朕」という漢字は、驚くことに常用漢字表に入っています。前身の当用漢字が採用されたときからありました。戦前の天皇ならいざ知らず、戦後の天皇は「朕」と言わなくなりました。誰一人使わない漢字が常用漢字表に入っているのだから不思議です。
この漢字が採用されたのは、日本国憲法に使われている漢字だからといわれています。当用漢字制定の直前に憲法が公布されました。新憲法は誰でも読めなければならないとして、そこで使われている「嚇、濫、遵、虞」など難しい漢字が入りました。「朕」や「璽」は、憲法前文の前にある、天皇が公布を許可する「上諭」の中にあります。
さすがに新聞では、常用漢字ですが「使わない漢字」にしています。本紙でもめったに見ません。
天皇の退位が議論され、その呼称も問題になっている昨今です。そろそろ常用漢字から削除してもよさそうですが、またぞろお役人は「忖度(そんたく)」してしまうのでしょうか。
(河邑哲也)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月5日付掲載


「朕」という字は憲法にあるって言っても、本文(前文を含む)にではなくって、「上論」の中って事なのだから、常用漢字からはずしてもいいのでは。

憲法施行70年 先駆性を考える 第2部 基本的人権掲げて⑮ 学問の自由とは 戦争協力への反省が前提

2017-05-07 11:43:43 | 平和・憲法・歴史問題について
憲法施行70年 先駆性を考える 第2部 基本的人権掲げて⑮ 学問の自由とは
戦争協力への反省が前提


研究機関動員へ予算110億円計上
安倍政権は、大学や公的研究機関などに軍事研究を委託する「安全保障技術研思究推進制度」を創り、2017年度予算に前年度予算の18倍の110億円を計上しました。「戦争をする国」づくりに大学などの研究機関を動員しようとする動きです。
これに対し、日本学術会議は3月、「軍事研究を行わない」とした1950年、67年の声明を継承する新しい声明を決定。研究推進制度について「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と指摘しました。
永山茂樹東海大学教授(憲法学)は、20世紀前半までにつくられた諸外国の憲法には「学問の自由」の規定が置かれることが少なかったと指摘するとともに、日本国憲法に「学問の自由」(第23条)が書き込まれた理由を次のように言います。「戦前は天皇機関説事件や滝川事件のように、国家権力が学問の内容に介入し自由を抑圧した。
さらに、学問が戦争に協力し、動員された。そういう国家と学問のあり方への反省を含めた、学問の自由の規定です」
明治以降、国家が富国強兵のために学問を発展させてきました。軍学共同反対連絡会の事務局の小寺隆幸・元京都橘女子大学教授は「日本の学問は歴史的に国家に従属する弱さをもっていました。それが学問の戦争協力につながっていきます。憲法23条の学問の自由は、学問は政治や権威に従属しないと決めているのです」と語ります。



軍事研究に反対する意見が多数をしめた日本学術会議の新声明に関する学術フォーラム=2月4日、東京

文化と福祉への貢献の下でこそ
理論物理学を専門とする松田正久元愛知教育大学学長は「“自由なのだから、人を殺すことを研究していい”というのは学問の自由ではありません。あくまで人類の文化と福祉に貢献するという前提の下での学問の自由です。だから、憲法を逸脱するような学問の自由は認めていません」と主張します。
特に学問の自由は平和主義と関係があると永山氏は指摘します。
「日本国憲法全体が『平和』を重視したつくりになっています。学問の自由も、戦争をしないという国家のあり方と無関係ではありえません。憲法の9条2項は戦力を持たないとはっきり書いています。戦力を持たないはずの国が、大学や研究者にお金を出して、軍事研究をさせるのは理屈に合いません」
学術会議の声明を前後して、各地の国公私立大学が研究推進制度に応募すべきではないという指針を定めています。
軍事的価値を否定した9条2項のもとで、学問分野でも軍事との結びつきを否定し、学問の独立の保障を求める動きが広がっています。日本国憲法の「学問の自由」が力を発揮しています。(おわり)(この連載は秋山豊、中祖寅一、行沢寛史、若林明が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月5日付掲載


“自由なのだから、人を殺すことを研究していい”というのは危険な思想です。
日本学術会議は3月、「軍事研究を行わない」とした1950年、67年の声明を継承する新しい声明を決定。健全です。