器用な一芸持ち(平川忠亮)

平川と言えば、2002年に大量に入団したユニバ金メダル組の一人です。下積みなしでいきなりポジションを手中にした、坪井ほど順調ではありませんでしたが、平川も「大卒は即戦力になることが必要」というプロの条件をきっちり守りました。

当時はオフト監督の時代でしたが、平川の得意な右サイドは山田の定位置です。サテライトの右アウトサイドというポジションが続くのかなと思っていた頃、オフト監督の起用は路木に代わる左アウトサイドでの起用でした。当然、利き足は右ですから、路木のように左足でのクロスは上げられません。必然的に右足に持ち替えることになります。

そんなときに、平川の売り物になったのは、その足の速さでした。新人時代はまだ守備技術が未熟で、後ろからファウルしてイエローカードを受けた場面も記憶に残っていますが、それでもその俊足で守備に帰ってくれる能力は貴重でした。岡野が、「チーム一番の身体能力がある」と評していた通りです。

しかし、平川の左サイドは、安定しているが魅力に欠ける感はありました。クロスは上がってもアーリークロスがほとんどで、深くえぐっての低いクロスや、ドリブル突破からのシュートなどはあまり見られなかったからです。そのため、2004年に三都主を補強されてしまいました。

本人にとってはショッキングだったでしょう。しかし、平川は単に左右がこなせる器用さ以外のものを身に付けました。それは味方のスルーパスを追い掛け、チャンスに結びつける縦への突破でした。追い付けば、決定的チャンスになるようなマイナスのクロスまで送れるかもしれないというのは、間違いなくギドの心を動かしたはずです。

また、平川の隠れた長所として、夏場の連戦でもコンディションが落ちないという長所もあります。中には動きが落ちる選手もいますが、平川だけは常に元気に、縦への突破を繰り返すことができます。そんな理由で、今ポジションを確保しているのでしょう。ここだけは動かないだろうと思われた、山田の壁を今、破ろうとしています。実現すれば歴史的な世代交代かもしれません。