欧州サッカーのジンクス

これまで、サッカーファンになって10数年ですが、欧州サッカーにはジンクスがあるようです。この間、組織サッカーが世界中に広まり、組織の欧州と個人技の南米と言われていた、トヨタ杯の決まり文句が通用しなくなりました。

また、ドイツW杯を見る限りでは、アフリカのW杯初出場の国にも組織力はあります。皮肉にも、そのチームはアフリカの売り物と言われていたFWに人材を欠き1次リーグで敗退しますが、今やサハラ砂漠以南のブラックアフリカは戦術も規律もなかったという時代は過ぎ去りました。

それは、かつてのトルシエ監督のように、欧州の若手監督が次々とアフリカに渡り、組織力を使えば勝てるという事実を示したからです。トルシエ監督の当時はまだアフリカのサッカー関係者は組織的なサッカーをすると驚いた時代なので、トルシエ監督には「白い呪術師」というあだ名もついていました。

そして、サッカー最後の未開の地と思われていた東南アジアにも、2007年のアジア杯を見る限りでは、組織力がついてきています。今や、監督は世界中を巡り、戦術的なサッカーは世界中の人が知っている時代になりました。

しかし、こんなグローバル時代に、何故か欧州に残る不思議なジンクスがあります。それは、南米で成功した監督は、欧州のビッグクラブでは成功できないというものです。

例を挙げれば、1997年にACミランを途中解任されたタバレス監督(ウルグアイ人)やトヨタ杯優勝の実績がありながらローマでは成功できなかったビアンチ監督(アルゼンチン人)、ブラジル代表監督の経験もRマドリードでは生かせなかったルシェンブルゴ監督などがいます。

言葉の壁も大きいと思います。しかも、欧州のビッグクラブの選手は、監督より高い給料をもらっているプライドの高い選手です。南米と同じやり方では通用しなかったのでしょう。

このジンクスを破っているのは、私の記憶にある限りでは、一人です。それは、ブラジル代表でW杯を優勝した後にポルトガル代表を率いてW杯ベスト4の実績を残したルイス・フェリペ監督です。代表監督なので、「ビッグクラブ」ではないですが、欧州と南米の両方で成功した珍しい例です。

ルイス・フェリペ監督の場合はブラジルとポルトガルの言葉が同じという有利な要素もあります。サッカーの世界の「大西洋の壁」は後に続く監督が出ない限り、破られたとは言えないでしょう。