北海道開発局の機械職による技術検討発表会が行われました。
この技術検討発表会は昭和37年から行われているとのことで、半世紀にわたる伝統ある催しです。
発表内容は、それぞれが仕事をしている職場での最前線の話題で、調査した結果と検討などちょっとした研究レベルのものもあれば、トピック的な話題紹介のようなものなど内容は様々。
約60人ほどの同僚や先輩を前にして、パワーポイントを使ってプレゼンを行い質疑応答をするというのは案外勇気のいることで、実際にやってみれば、発表の仕方や時間コントロールなど良い経験になることでしょう。
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さて、今回の発表の中で面白かったのは、雪に埋まった車の車内では排気ガスなどはどのように充満してくるか、ということを調べた研究でした。
去る3月1~3日に道東・オホーツク方面を襲った暴風雪被害でも吹き溜まりで動けなくなった車が続出しましたが、そんな雪に埋もれた車ではついエンジンを回して暖を取りたくなるものです。
しかしそれで大丈夫なのか、吹雪に見舞われることの少なくない道民にとっては切実でありかつ実用的な内容でした。
調査では、対象となる車として、小型のセダンタイプ乗用車と、古くてフレームが腐食し排気ガスが漏れる軽自動車の二台を用意。
『雪で埋まる』という状況を、①マフラーまで埋まる、②フロントグリルまで埋まる、③ワイパー下の吸気口まで埋まる、という三段階で考えました。
また、空調設定を①外気を取り入れる外気導入と、②車の中だけで回す内気循環とし、それぞれエンジンをかけっぱなしにした状態で室内の一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)の濃度にどのような変化があるかを実験しました。
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調査した気体の内では、よく『一酸化炭素中毒で死亡』という事故の報道を見ると、COが一番恐ろしいと思われます。
COは、一般の労働中の許容濃度が50ppmと定められていて、最小致死濃度は650ppmで45分とされており、濃い濃度のCOならば短時間で死に至る恐ろしい無色無臭の気体なのです。
さて、調査の結果は、マフラーまでの閉塞の場合、軽自動車の内気循環が400ppmに達するという結果が出ました。
内気循環なら外からガスは入らないように思いがちですが、車というのは案外隙間の多いもので、車の下部から隙間を通って案外ガスが流入するものです。
ただ、ワイパー下の吸気口が空いていれば外気導入をすることで新鮮な空気が入ってきてかなり空気は清浄に保たれると言うことも分かりました。
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フロントグリルが埋まった場合では、やはり軽自動車のCO濃度上昇が顕著で、内気循環で15分、外気導入で30分で400ppmに達しています。
次にワイパー下部の吸気口までもが埋まってしまって閉塞状況になった場合ですが、こちらは軽の内気循環ならば15分で400ppm、同じく軽の外気導入でも30分で400ppmに達することになりました。
この場合外気導入の方がCOが濃い結果となりましたが、これはこの車種の場合、ワイパー下部の吸気口がふさがれるとエンジンルームの空気を取り入れる構造になっていたためで、一気に濃度が上がったようです。
また小型の自動車の場合は、エンジンを動かすのに車内の酸素を使うことにより人体に危険なほど酸素不足になるというデータも取れました。
また追加調査で、「窓を開けたらどうか」という調査も行われたのですが、5センチ位開けた状態では風の影響で室内から空気が出され、結果的に車の下の悪いガスを吸い上げるという結果も出たとのこと。
いずれにせよ、やはり雪に埋まった場合に、寒さに耐えかねてエンジンを回しっぱなしにすることへの危険性が、一酸化炭素濃度の上昇という調査結果から明らかになりました。
こうしたことの成果を踏まえて、調査を行った(独)寒地土木研究所では『雪に埋もれた車の中は危険です』というパンフレットを作って、ダウンロードできるようにネットに掲載し注意を喚起しています。
雪に閉じ込められたらエンジンは切りましょう。
ただ寒さに耐えられなくてエンジンをかける時は吸排気をしっかりと意識して吸排気口のメンテナンスをしっかりすること。
そして何より冬期のドライブには動かなくなった時の対策グッズを常備するということが必須です。
そろそろ冬が間近。今年の冬も安全なドライブをお願いします。
【雪に埋もれた車の中は危険です】
http://kikai.ceri.go.jp/10_download/download.html
【上記の詳細な研究発表はこちら】
http://thesis.ceri.go.jp/center/doc/geppou/kikai/00160810301.pdf
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