情報通信大手のNECさんが主催するソリューションフォーラムに参加して、北海道を席巻するコンビニストアであるセイコーマートの丸谷智保社長の特別講演を聞きました。
講演のタイトルは、「北海道の資源を生かす~セイコーマートの経営戦略」
日本のコンビニ大手4社とは、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、サークルKの四社で、全体の約75%を占めるとのこと。
そして日本中の都府県で上記4社のどれかが一番店舗数が多いというなかで、北海道だけはセイコーマートが最大店舗数を誇っています。
この道内企業セイコーマートの経営戦略を丸谷社長から直々に聞くことができました。
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丸谷さんは、「小売業を見るときに、川上が製造業で、卸を通って川下の小売りで売られていると一般には認識しているだろうが、よく考えると、小売り店から発注データーが出て、その情報が登って行って、メーカーはその注文に従って原材料の手当てをする、という側面もあるだろう。つまり川上と言われながら、最前線の小売りが起点になっているとも言える」
「セイコーマートは千店あるが、そこからの売上や発注データを得て製造は調達や製造を行う。意外にモノの流れは下から上に流れている。セイコーマートは生産物流、小売りというサプライチェーンのかなりをグループ内で確立した。そして北海道の資源を十分に活用していることの意味を話したい」というのが今日の講演の趣旨です。
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セイコーマートは年間売上1846億円、店舗は1157店、来店者数2億3千万人、年間取扱数量は9億個。
179市町村のうち170自治体で出店している。カバー率95%で、人口カバーでは99%で、広い北海道だから物流が大変だ。
グループ会社は30社、(製造12社、物流・卸3社、小売り4社、農業3社、その他8社)で、従業員数は2万人。意外と多いがほとんどはお店のパートだ。
製造業は、道内に15工場。豊富に牛乳公社、羽幌町にダイマル乳品などほとんどがPBだ
ダイマルは豊富の牛乳でアイスを作っていて、ロッテの製品も作っている。雪印パーラーのアイスも作っている。雪印がつぶれた時にロッテが経営をして、その製品はダイマルが作っているというわけ。
農業法人は、87ヘクタールで年内に100ヘクタールを超える。ただ一年に使う野菜は8千トン、そのうち農業法人が作っているのは使ううちの20%しか供給できず、55は農協・契約農場だ。
野菜その他は市場を通すと価格が乱高下するので、その山切りをすることに意味がある。
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経営の中では、物流基盤が問題だ。この広い北海道で、効率性などを求めながら製品を運ぶのだが、物流コストは大手より4%低くなっている。
大手は都会だから効率が良いはずだが、我々の方が良いというのは特長になっている。
その一端は、札幌にある大きな配送センターを中心に、道内五か所に地方ネットをつくり、そこでまた個別に個配するという仕組みだ。
また全道各地に分散している製造工場を配送の帰りに回って、できるだけ空便で帰ってこないようにして効率化を図っている。
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さて、北海道の資源を生かすということだが、例えば農業法人からキュウリを仕入れるときは、規格内品は店舗で野菜として売る。
そして曲がってしまった規格外品は捨てるか自家消費するしかないのだが、これを惣菜やサラダ、弁当の副惣菜漬物にする。
農業の一番の問題は、製品の80%しか市場に出せないという歩留まり悪さだ。
農業法人は、こうしたハネ品を惣菜にできて、歩留まりを98%、99%にすることができるのが強みだと思う。
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一例として、赤肉メロンは北海道の特産品だが、割れたようなメロンやマスクの出来が悪い、つるがない、などといったメロンのハネ品が出る。
これも、今までは捨てていたのだが何とか利用しようと、農家から買って、搾汁をして果汁を取りこれで商品を作った。
すると、全道各所から買ってくれと動きが広がり、一方商品の宣伝もして売れるようにしたところ、某有名飲料メーカーからも引き合いが来るようになった。
お金をかけて産廃として捨てていたものが、お金がもらえる産品になったのです。
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海外からも独自の調達をかけている。
また、世界各国からも品質の良い素材を自分たちで集めて商品にしているが、商社を挟まないことでコストを下げる努力をしている。
人気の100円パスタは、トルコのアンカラパスタ、オーストラリアの塩、アメリカのベーコン、イタリアのチーズ、クラッシュトマト、オリーブオイルなどを使うことで安く仕上げられている。
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また大人気の500円ワインの秘密をお話しよう。
昨年セイコーマートでは年間にワインを400万本売ったが、これは道内の21%のシェアだ。
なぜ売れるかと言えば、安いからに外ならない。
ワインが失敗したな、と思うのは、「ワインとはくるくる回して何か薀蓄を語らないと飲んではいけない」というような、高級感漂うマーケットにして、高くてちょっと売りというやり方にしたことだと思う。
それを普通に大衆の嗜好品として飲むようなワインの市場にすれば、買いたい人は潜在的にとてつもなく多いことに気が付く。
そしてそのためには気軽に買える料金として、ワンコイン500円とした。
よく、「500円で打って儲けが出ているのですか?」と訊かれるが、ご心配なく。500円で売っても一本でその半分くらいは利益が出ている。
なぜか。
ワインの仕入れは、海外の大きなワイン商談会で直接やり取りして商社や仲卸はいらない。
たくさんあるワインの原価は、一本1.5ユーロ=200円くらいなもので、こういうワインを試飲して選んでくるのだが、実は中身が同じでも瓶が高いとこれまた値段が高くなる。
同じワインを高い瓶に入れて1800円で売っているメーカーもあるが、実は瓶しか違わない、なんてことになっているのだ。
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大まかに言って、ブドウ1kgからワイン一本が作れて、1kgのブドウの値段の10倍がワインの値段と言われる。
そしてその1kgのブドウは フランスで25円、チリなら15円で、日本ならば300円はしてしまうところだ。
その価格差は、圧倒的なブドウ畑のスケールによる。チリなどはブドウ畑が1800ヘクタールもある農場があって、圧倒的なコストパフォーマンスが出るのだ。
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さて、なぜセイコーマートは北海道にしがみついているのか、ともよく訊かれる。
人口は減るし、高齢化は進む。高齢化がすすむと、胃袋が小さくなって消費しなくなる。
しかしそれでもなぜ北海道にいるのか?
それは、生産量ナンバーワンのものばかりで大きなシェアも持っているからだ。
北海道はそれ自体大きなブランド力があるので、関西のスーパーには豊富牛乳を出荷している。他の地域の物よりも20円高いがそれでも売れている。
つまり、セイコーマートとして進出しなくても、他の店に売りつける生産会社としての価値もあるのだ。
もちろん、道内の来店者数がもっと伸びれば、良いことだが、来店者数とは、人口×何回来てくれたか、の計算で出る。
人口が減っても、来てくれる回数が増えるような経営をすれば、衰退してゆくことはない。
北海道の魅力をもっと生かすことができると思う。
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丸谷社長の講演は初めて聞きましたが、素晴らしい経営戦略でした。
改めて道産子なら、どうせ何か買うならセイコーマートだなあ、と思わせる共感の力も十分です。
明日もセイコーマートでお買い物と行きましょう。