都市計画学会北海道支部で、今年度の第一回都市地域セミナーを開催しました。
かでる2・7で開催したセミナーは、100名弱の参加者を迎えて盛況に開催されました。
テーマは、「空き家のリノベーションで地域活性化」というもので、人口減少と縮退する都市の中で、先人が作ってきたインフラを重荷にするか資産にできるかは大きな分かれ目なのだと思います。
そこで今日は空き家をリノベーションしてゲストハウスなどとして宿泊場所や地域拠点を提供する事業をしている、林匡宏さんと柴田涼平さんのお二人をお招きして、その思いや苦労談などを伺うこととしました。
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まず副支部長の木本さんから、今の地域を取り巻く現状の話題提供があって、①元気な人が集まる仕掛けをどうやって作るか、②住み続けられる仕組みをどうやって作るか、ということがポイントになるだろう、という問題提起がありました。
そこでまず林さんからは、「まちのストックをエリアの価値に変える」ということを面白くやっているということ、また「立場や領域を超えて繋がり、チャレンジする『しくみ』をつくりたい」という思いがあるということ。
特に林さんはそのときに、語り合い議論をしながらそれを絵にしてゆく"ライブドローイング"という方法を編み出しました。
(これが即興の絵なのか?)と思うような驚くべき出来ですが、「具体的な風景にしてゆくことで意見の方向が共有できる」と笑います。
林さんは社会人になってから大学の博士課程でデザインを学び、その過程で調査研究対象のフィールドが江別市の銀座商店街でしたが、そこでの出会いを面白いと感じ、商店街の人たちを味方につけながら空き家を地域の拠点にすべく奮闘中です。
活動理念は「共創の場づくり」。
林さん自身は、この商店街のみならず、札幌の真駒内地区や江別市の緑道の有効利用などさまざまな提案とイベントの実践活動を通じて、この理念を実現したいと考えています。
「都市公園などももっと活用できるんですよ」と、つい先日も聞いたような方向性に手ごたえを感じている様子。公園の社会貢献も新しい流れが来ていることを感じます。
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続いての柴田さんは「日本にいたら日本の価値観に染まる。外国人も来てくれるようなゲストハウスにいるとその価値観の枠を外してくれる。それは生き方図鑑じゃないだろうか」と言い、柴田さん自身が学生時代に外国を旅した時に出会った本当の旅人などの思い出も印象が強かったのだと。
ゲストハウスでの出会いは、「本当にいろいろな人に出会えるので、こういう生き方をしてもいいんだ!」と自分のタガが外れる機会になるのだといいます。
そして「熱量がすごい子が良く来るがそういう子は化ける。スーパーな人ってまちだったり活動だったりに熱量がある人で、そういう人はちゃんと残ってゆくでしょう」と言います。
柴田さんの行動理念を聞いていると、それは「社会や地域の課題や問題を見つけ」て、それを「解決する方法を考え」て、それを「情熱のある熱い人と一緒になって面白がって活動する」ことで未来を切り開いてゆく、というスタイルに見えます。
「成功の秘訣は何ですか」と訊かれた柴田さんは、「新しいところでゲストハウスを運営しようと思うと、まずは地域に入り込んで地域が解決したい課題を入念に調査します。そのうえで提案を送り込むんです」と答えています。
最近は、一軒のゲストハウスで学童保育も始めたのだそう。
学童保育を開所するための法律的な条件を調べてゆくと、宿泊所としての基準が満たせていればあとは教員免許を持つ人がいればよい、ということが分かり、子供たちの教育にかかわりたいが学校の先生になるのではない道を探していた若者と一緒にやっているそう。
利用する頻度は様々ですが、今は学校に行かない不登校の子供たちも含めて30名くらいの子供たちが入れ替わりやってきてそこで宿泊する人たちとの交流も楽しんでいるそうです。
「子供の時から身近に外国の人がいて、"こんにちは"では通じないけれど"ハロー"って言ったら"ハロー"と笑顔が返ってくるという経験ってすごくないですか?」
柴田さんは思いついたらすぐに行動してしまいます。
「ゲストハウスサミット2019をやってみたら全国から120人のゲストハウスオーナーが集まってくれて新しいつながりが生まれました」
「ゲストハウス基金を始めてみました。昨年の胆振東部地震の際に、外国人の人たちが身を寄せるところ、情報を得られるところが少なくて、うちのゲストハウスを開放しました。そういうときに、少しでも負担が少なくなるような基金をつくって賛同者からお金が集まっているのではないかと思ったのです」
「移住ドラフト会議をやりました。野球のドラフト制度のパロディですが、移住したい人が自分自身をプレゼンして、方や地方自治体の方も『わが町の良いところはこういうところです』とプレゼンして、最後は自治体が応募者を指名して複数氏名の場合は抽選をして一年間の独占交渉権を得る、というシステムです。これで『初めて津別町という町があることを知り、何かやろうという気になりました』と言ってくれた人がいたのはうれしかったです。
お二人の話を聞いていて、まずは熱量のある人を探して共通の体験で思いを共有することが大事なのだと感じました。
柴田さんは「ゲストハウスは、作るときからコミュニティづくりが始まります。地域の人に壁塗りなど建築の作業を手伝ってもらう。そういうDIYは起爆剤になります。関係性を『ゼロから1にする』ことができるんです」とそのコツを紹介してくれました。
その後の対談の中でも柴田さんは、「地方都市の行政の方には、そんなチャレンジをしたい若者はたくさんいるので、そこに500万円ほどでよいから支援の手を差し伸べてあげてほしい。そして法律や決まりごとをクリアするサポートをしてあげてほしい。それだけで地域に根差した活動が始まるなら安いんじゃないでしょうか」と行政にもできることはたくさんあると強調していました。
我々は若手と話をしたり意見交換をしながら、彼らの自覚が育ち行動を起こすことを期待するばかりです。
勇気と希望が感じられた、とっても楽しいセミナーになりました。
すごい若者ってたくさんいるんだなあ。懇親会でも少々飲みすぎました。