旭川から南下して札幌へと戻ってきました
途中で建設会社やら役場やらを訪ねながらの行程は、営業活動でもあるし情報収集でもあるし、情報提供でもあります。
大半は世間話ですが、世間話をするにもネタを町の中から拾うには種となるネタが必要です。
以前ある研修で、ある事務職の方が、「今までは書類ばかり相手にしていたが、突然地域の自治体を相手にするポジションに異動となり戸惑っています」と悩んでいました。
「まずは世間話からするのじゃないですか」と言ったところ、「そういう人たちと世間話をしたことがないんです」という答えが帰ってきました。
そうか、世間話をするのも経験や練習やスキルということになるのか、と目からうろこでした。
まさか世間話の練習をするわけにもいかないだろう、と思いつつ、もしかしたら研修で受講生を隣同士で世間話をさせる、ということだってあるのかもしれません。
◆
そういえば、ある自治体の市役所の副市長を訪ねたときにこんな話を聞きました。
それは、その自治体の市長さんが、「いやあ若者の考えていることが全然わからない、世代間ギャップを感じるなあ」と言うので、では、と副市長さんが、今年採用の新卒職員全員に対して対面で面談をしたというのです。
そこで、「市役所で働いてみて今何か悩みはありますか」と訊いてみたところ、「電話が怖いです」という若者が思いのほか多かったのだそう。
「大卒の子ならまだそれほどでもないのですが、高卒で入ってきた子たちはほとんどが『電話が怖い』と言う」のだと。
「その世代の若者は電話をしたことがないとか?」
「まさにそれです。友達とのコミュニケーションはほとんどがメールやLineで、文字で打つことでやりとりするので、彼らは『顔の見えない人とどうやって会話したらよいかわからない』と言うんです。電話をする機会って、せいぜい家族に『迎えに来て』というくらいなんだそうで。
しかも市役所に外からくる電話ってともするとクレームとお叱りの電話じゃないですか。他人に怒られるという経験もないのですよね」
「でもいつまでも怖いと言われていても困りますよね」
「ええまあそこで、二人一組にして電話に出てやり取りをする練習をさせたりもしてみていますがね。やはり我々の世代には考えられないような未熟さ、というか、それもまた世代間ギャップでくくられるということでしょうかねえ」
◆
違う役場へ行ったところ、今度は職場を辞めてすぐ転職をしてしまう若者の話になりました。
「最近はうちでも卒業直後ではなく、転職者を対象とした中途採用を増やして職員募集をかけています。ところがなかには、履歴書にものすごい数の職歴をずらっと書いてくる人がいるんです」
「それって、転職を繰り返しているという意味ですか?」
「そうです、そういう人には、希望をもって就職してみたもののそれは自分が意図した職場とは違うという思いが募って、『もっと自分に合う職場があるはずだ』と新たな希望を抱いて転職を繰り返すというわけです。できるだけそういう人ではない人を採用したいと思いますが、最初に夢破れる職場がうちでは困りますね。
ある人はそういう人たちを称して、『夢を追い続ける若者たち』と呼んでいました。ここではないどこかに自分の理想とする場所があるはずだという夢を追い続けてしまって、そこに自分を合わせようとは思わないんですね。
でもどうやっても、そういう人が一定の割合でいるんだ、ということに最近気が付いてきました。願わくば採用した人がそうでないことを祈るばかりです」
どれも私が生きてきた社会の常識の範囲を超えていて、"世代間ギャップ"でくくられてしまいそうですが、ある程度は社会とはそういうものだ、という風に自分を現実に寄せていってほしいものです。
こういうことが一日や二日の研修で心変わりしてもらえるものでしょうか。
普段からのOJTと職場のコミュニケーションの問題かもしれませんが、さてさて、答えはどこにあるでしょう。