都市計画学会北海道支部の研究発表会が終わりました。
コロナ禍のなかでの研究発表会は、基調講演の講師も聴視者も論文発表者もがネットの向こうからの参加という、新しい時代を予感させる仕立てでした。
はじめにユニリーバ社岡本美紀子さんからの講演は、もう4年前から始めているユニリーバ社の働き方改革のお話。
その後にコロナウィルスが広がって、会社は今年の3月11日から在宅勤務になり今も続いています。
コロナ対策はいろいろな会社がそれなりに対応していますが、ユニ社の基本は、世界基準に照らした「社員を大切にする精神」であり、同時に「オフィスがなくても働ける仕組み、考え方」を導入してきていたもの。
そのためコロナ禍のなかでも働き方の改革がスムースに移行できているとのことでした。
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働き方改革は、なぜやるのか ということを自社がきちんと定義できているかどうかがまずはカギになります。
しばしば『残業時間を減らす』といった目標が立てられますが、これは手段であって、手段が目的化しやすいことには注意が必要。
ユニリーバは、働き方改革の目的として社員一人一人が『生き方を決めること』としました。そしてそのために会社でどのように働くのかを決めたというのです。
ユニ社の働き方改革は「WAA(わあ=Work from Anywhere and Anytime)」と呼ばれ、場所や時間を自由に決められる制度です。
具体的には、工場は24時間体制ですが工場を除いた社員が対象で、5~22時で自由に勤務時間・休憩時間を決められるというもの。
ユニ社はこの改革が成功したと考えています。
指標で言うと、始めは生産性向上を狙ったのですが、次第に生産性ではなく社員の主観で測った幸福度を上げることの方が本質に近いのではないかという考えに至りました。
生産性は「あげる」ものではなくて「あがる」ものではないかと気が付いたのだと。
そのキーワードは、「"生産性"よりも"幸性(しあわせい)"」です。言葉遊びのようですが面白い。
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この活動の延長で、2019年から、地方都市における「Waaケーション」の推進が始まりました。
社員を地方都市に関わらせて、そこで地域貢献を果たし自ら考える機会を作ろうというのです。
そんなユニ社が包括連携協定を結んでいるいくつかの地方都市の中の一つになんと静岡県掛川市がありました!
2019年7月にwaaケーションを地域でスタートさせた
驚いて講師の岡本さんに「掛川とのゆかりはなんですか?」と訊いたところ、「森町にリプトンの工場があることと、地元市役所の方の熱意です。私も何回も掛川には行っていますよ」との答えが返ってきました。
また「ワーケーションといいながらバケーションとはあまり考えていません。役員も実際に行って鍵となるのは、自治体のトップが相当な危機感やビジョンがあるところが大前提です」とも。
最終的には、働き方改革とは生き方の改革である、とか、社員が自分で決めるという自主性が鍵ではないか、ということでしたが、そんな社風に耐えられる人でなければ残れないのかもしれません。
今度掛川に行くことがあれば、ユニリーバ社との関係を聞いてみようと思います。
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後半は論文発表会。
今回は論文発表も、事前にA4一枚の概要を届けてもらい、あとはネット参加の口頭発表と質疑応答を聞く形です。
ネットでの発表と質疑応答も、Zoomにはチャット機能があって、発表を聞きながら参加者からの質問チャットが寄せられ活発なやりとりが行われました。
終わった後で皆から、「こういうやり方が活発な意見交換に繋がり、来年もこういう形で十分やれますね」という前向きな感想が多く寄せられました。
仕方なくリモートではなく、意見を活発に出させるためのリモートになるならばピンチはチャンスになると言えそうです。
刺激的で面白い一日でした。
たまには脳をフルに使うこんな日があっても良いですね。
参加された皆様、お疲れさまでした。