シャープが液晶パネルを現地企業と提携して中国で生産するという趣旨の報道が流れていました。ちょっとショックだったのですが実は・・・。
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ホットニュース [2月21日/日本経済新聞 朝刊]
http://markets.nikkei.co.jp/kokunai/hotnews.aspx?id=AS1D200CE%2020022009
シャープ、液晶パネルを中国で生産 現地企業と提携
シャープは中国大手電機メーカーの上海広電集団と提携、液晶テレビ用パネルを現地生産する方向で調整に入った。(1)亀山第1工場(三重県亀山市)の設備を売却して委託生産(2)合弁会社を設立して共同生産――の2案を軸に交渉している。先端製品のパネルは日本で集中生産して海外のテレビ工場に輸出してきたが、円高で採算が悪化しているため初の海外生産に踏み切る。
日本の電機業界ではソニーが韓国サムスン電子と液晶パネルを韓国で共同生産しているが、中国での大型パネル生産は業界で初めて。円高と価格下落で電機大手の業績は急速に悪化しており、世界規模で生産体制を見直す動きが加速しそうだ。
【毎日.jp】
シャープ:液晶パネルの中国生産に向け交渉
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090221k0000e020079000c.html
シャープが、液晶テレビ用パネルの中国での生産に向け、中国の大手電機メーカーと交渉していることが、21日分かった。円高などによる採算悪化を受けコスト競争力を高める。減産の一環で生産を停止している亀山第1工場(三重県亀山市)の設備を売却し、委託生産する案などが検討されているとみられる。
同社はこれまで、テレビ向けパネルを亀山工場で生産し海外のテレビ工場で組み立てていた。中国では南京に工場がある。
同社は、世界経済の急減速に伴う販売単価下落と円高で、09年3月期の連結業績は営業、最終(当期)損益とも1956年の東証上場以来初の赤字を見込む。パネルの余剰感もあり、昨年12月から国内の液晶パネル工場の再編に着手。亀山第1工場は旧式のパネル工場で、テレビ向けの生産から携帯電話向けなどの中小型の生産にラインを改造する計画だ。このため、設備の売却は資産の圧縮と現金収入が同時に見込めるとみられる。シャープ広報室は「パネルや太陽電池など現地生産を検討しているのは事実」としている。【新宮達】
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・・・というわけで「え~、ついにシャープまで製造コストのために魂を売るのか!」とちょっとショックだった私ですが、いつもの三橋さんのブログを読んでいてその意味するところが改めて分かりました。
* * 【以下引用】 * *
【新世紀のビッグブラザーへ blog】
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/24723482.html
うぉッ! シャープが亀山工場売却か! という印象しか残らないこの記事、実は旧世代の液晶パネル(第六世代)の話なのです。今やシャープ亀山工場の主力は第八世代で、来年春には第十世代(堺工場)の生産が始まります。旧世代で不要になった生産ラインを中国に売却しようというだけの話なのに、この記事はあまりにも酷いでしょう。
と言うか、わたしはまだシャープが第六世代の設備を稼動させていたことに吃驚したくらいなのですが。
日経は最近、「収益悪化 企業は変革を急ぐ」というタイトルで、「支えは内需組」「円高を超えて」などと非常に真っ当な特集をしているのですが、たまにこういう↑記事がポンッと一面に来ます。
シャープが旧世代の設備を中国に売り払う程度の話が、一面に来る時点で変でしょう。しかも、読んだ第一印象が「円高で、シャープが日本を捨てたんだ」となるように、明らかにミスリードを狙った記事です。
何か、「円高を受け入れた上で内需拡大派」と、「日本は円安&輸出企業中心でいくしかないんだよ派」の鍔迫り合いでも起こっているんですかね、日経は。韓国の状況を見れば、円安だろうが円高だろうが輸出の劇的な回復など望めないことは、誰でも分かると思うのですが。
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なあんだ、古い設備を売却するという話でしたか。そう思ってネットを探してみると、日経や毎日よりもうすこしちゃんと書いてある記事もありました。
* * 【以下引用】 * *
液晶パネル、中国で生産検討 シャープが交渉 2月21日12時14分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090221-00000515-san-bus_all
シャープが中国の大手電機メーカーと提携し、液晶テレビ用パネルを現地生産する方向で調整していることが21日、分かった。三重県亀山市にある亀山第一工場の設備を相手方に売却し、生産を委託する案も浮上している。
テレビ用の液晶パネルは国内だけで生産し、海外に輸出してきたが、不況に加え為替相場で円高傾向が強まり業績が悪化しているため、初の海外生産に踏み切る。電機メーカーの収益は軒並み悪化しており、世界的な生産体制の見直しが加速しそうだ。
交渉相手は「上海広電集団」で、今春までに基本合意を目指す。中国への生産移転で、価格競争力を高める考えだ。
亀山第1は「第6世代」と呼ばれる旧世代のパネル工場で、現在は生産を休止する一方、「第8世代」の第2工場が稼働している。旧世代のパネル生産は海外へ移す一方、最新鋭のパネルは今後も国内で生産する。
第1工場は現在、生産ラインを中小型パネル用に改造中だが、交渉がまとまれば改造を中止し、設備を中国に移す。そうなれば大きな費用負担もなく海外生産が可能となる。
ただ中国側にとって、設備買収は負担が大きいため、合弁会社設立による生産移転を希望しているもようだ。他の現地企業が交渉相手に浮上する可能性もあるという。
シャープは今後、中国だけでなく海外の他の地域でも、旧世代のパネルは地元の有力企業と組んで現地生産していく方針だ。
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・・・で、さらに検索して行くと昨年の12月に、「液晶パネル工場の再編」について、シャープ自身がニュースリリースを行っていました。
* * 【以下引用】 * *
【シャープ自身のニュースリリース】
堺市の新工場の稼動を見据え、大型・中小型液晶パネルともに、さらに高効率な生産体制へ
シャープ 液晶パネル工場の再編に着手 2008年12月12日
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/081212-a.html
シャープは、大阪府堺市に建設中の液晶パネル新工場の稼動を見据え、現在、テレビ用大型液晶パネルを生産している亀山工場(三重県亀山市)、中小型液晶パネルを生産している三重工場(三重県多気町)と天理工場(奈良県天理市)の再編に、2009年1月より着手します。
堺市に建設中の世界最大 第10世代マザーガラスを採用する液晶パネル新工場は、外観がほぼ完成し、現在、装置の搬入を開始しています。いよいよ、当初計画通り2010年3月までの稼動が視野に入ってきました。
一方、当社は液晶パネル工場の競争力を高めるために、減価償却をほぼ終えている天理や三重の各生産ライン、ならびに第6世代マザーガラスを採用した亀山第1工場の生産ラインの特長を活かした液晶パネル工場の再編を、かねてより検討していました。
こうした中、現在の市況環境は液晶パネルの余剰感もあり、当社は既存の液晶パネル工場の再編に着手する最適なタイミングと判断しました。
テレビ用大型液晶パネルについては、第8世代マザーガラスを採用した亀山第2工場で集中生産します。これにより、堺の新工場と合わせてテレビ用大型液晶パネルの競争力が一層強化されます。
中小型液晶パネルは、三重(第1・第2・第3)工場と天理工場で生産しています。これらの工場の一部液晶パネルの生産を、亀山第1工場に移管します。
亀山第1工場は第6世代マザーガラスを採用していることから、中小型液晶パネルの生産効率が飛躍的に高まり競争力が一層強化されます。
そして三重・天理の各工場については、順次、生産品目やパネルサイズの適正化を進めます。
なお、減価償却をほぼ終えた、三重第1工場・天理工場の一部の生産ラインを閉鎖します。
この再編により大型液晶・中小型液晶事業とも、さらに競争力を高めた高効率な生産体制の構築を図り、グローバルな競争優位性を高めて参ります。
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いろいろな指摘に気づいてここまで掘り下げないと本当のことにたどりつけないなんて疲れます。マスコミには本来そのあたりの複雑な事柄を分かりやすく書くということが使命のはずですが、新聞だと字数の制限を理由にして、書きたくないことはスルーするのかも知れません。
字数を気にせず、次々にリンクを貼れるネットの方が機動性に富んでいることがよく分かります。
これではやはり、一つ一つの記事に読者からのコメント欄をつける勇気は出ないでしょうね。