今日は釧路市議会二月定例議会の最終日。
予算案や請願、陳情に対する裁決が行われた後で、人事案件の採決が行われ、新しい副市長人事が認められ、自動的に私は3月31日付で退任ということになりました。
議場での挨拶の機会をいただけたので、このような挨拶をいたしました。お世話になりました。
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【副市長退任挨拶全文】
敬愛する釧路市議会議員並びに市民の皆様、この度は提案の人事案をご承認いただきましたことに謹んで感謝申し上げます。
晴れて副市長を退任させていただくこととなり、併せて退任に当たりご挨拶の機会をいただきましたことに、重ねて心より感謝申し上げる次第です。
省みますと蝦名市長から辞令をいただき、その後に、まさにこの議場で就任のご挨拶をしたのは3年前の平成22年7月1日のことで、今でもそのときのことがまざまざと思い出されます。
その際は、釧路市の副市長としての職責、しかも初めての外部からの登用(とうよう)ということによる注目の大きさなど、責任の重さをひしひしと感じたのですが、そのわけは、釧路市が歴史、産業、観光などの各方面で名の通ったマチだからであります。
人口18万2千人で道内四位。水産、港湾、空港をもち、阿寒、釧路湿原という二つの国立公園を抱え、さらに、行政、ビジネス、医療、商業の中心的な役割をもつ道東随一都市としての釧路市の風格は第一級のものであります。
ここに縁とゆかりができ、知人が大勢いることを誇りにできるマチでありました。
しかしながら、実際に仕事をしてみますと、地方都市の行政には様々な課題が降りかかってまいりました。
私は以前、静岡県掛川市で三年間の助役経験がありましたが、釧路公立大学の小磯修二前学長にお会いした折に、「あなたは地方自治体勤務の経験がおありですが、掛川の経験は基礎問題。ここは単純な公式の当てはまらない応用問題ですからね」と言われたことを今でも思い出します。
在任中で最も印象の強い出来事は何といっても、3.11の津波被害でありました。
あの災害は、改めて釧路が長い歴史の目で見ると、日本有数の津波常襲地帯であることを想起させることとなりました。
そして地震だけではなく、津波への避難対策、そして津波に強いまちづくり計画の重要さを感じることとなりました。
また、地方財政を取り巻く環境も厳しいものがありました。
着任早々には財政健全化の荒波が待ち構えており、各部各課との間でいかに内部経費を削るかという厳しい議論を連日交わし、その一方で市役所を代表して地域に入り込み、市財政の苦しい現状を説明に走るという経験も致しました。
行財政が厳しさを増す中では、非効率な施設の統廃合なども俎上に上がりました。
今後はこうした行財政や施設の在り方をいかに効率的な形にしてゆくかが将来の課題となってまいります。
理事者側でも、公有資産マネジメントやコンパクトシティへなど、マチそのものの体質改善への取り組みを始めておりますが、こうした取り組みが成功するかどうかは、市民の理解と協力が得られて一体となって推進できるかどうかにかかっており、これからも継続した努力が必要でありましょう。
しかし辛く苦しい話ばかりではありません。在任中には釧路の名を良い意味で高らしめる多くの喜ばしい出来事もありました。
代表的なことは、タンチョウを台湾に贈ったことであります。台湾側からのたっての希望であったタンチョウを、ビッグとキカのペアで台北動物園に贈ることができたのは環境省を始めとする関係各位の協力の賜物でしたが、このことで結果として釧路は国際都市台北市と最も縁の深い都市の一つとなることができました。
またマリモの生息する阿寒湖を、改めて世界自然遺産として登録しようという取り組みも始まっております。
釧路はひとたび動けばその話題性は地域をはるかに飛び越えて、国際性豊かなものになる、そんな大きなポテンシャルを有しております。
こうした天から与えられた可能性をさらに活かしてゆくことで、釧路には内外から多くの人を引き寄せる魅力が増してゆくことでしょう。
現在日本中の地方都市が人口減少と経済低迷に苦しむ中にあって、釧路市だけはこうしたポテンシャルを活かし、そして今蝦名市長が提唱している政策プランを実践してゆくことで、乗り越えられる可能性があるのではないか、と思い始めています。
釧路の実力と可能性はもっとずっと大きいはずなのです。
さて、こうした市行政の体質改善や、持てる可能性の発揮のために、最も大切なことは、情報発信ということではないかと思っています。
いくら良い情報があっても、発せられない声は聞こえません。また、いくら伝えたつもりでも受け手の心がここになければ、耳に入れども聞こえず、ということになります。
悪い話も良い話も、それらを積極的に市民に伝え、市民の関心と共感を得て、進めるためには、そのことだけでもさまざまな情報発信の取り組みと工夫が必要になってきます。
世の中を動かすためには、意思と能力が必要です。
まちづくりのための本気のやる気と、それを進めるための能力の開拓は当然ですが、さらに一級の情報を作り、それを発信するための意思と能力も大いに磨いていただきたいと思う次第です。
さて、国の人事異動により、四月から私は再び国の職員に戻ります。
しかし、釧路で見聞した現場経験と、ここで得た多くの友人知人は一生の宝になるでしょう。
そしてここで受けた数多くのご厚情とご鞭撻に感謝しつつ、これからもいつまでも心の故郷釧路の応援団であり続けるつもりです。
離れている私にもいつまでも自慢ができるような釧路でいていただきたいと願うばかりです。
結びに当たり、議員並びに市民の皆様のご健勝とご多幸、そして釧路市のこれからの発展を、心から、心から、心から、お祈り申し上げ、退任にあたってのご挨拶と致します。
本当にお世話になりました。ありがとうございました。
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このわずか2100文字に釧路のすべての思いを込めました。
本当にありがとうございました。