北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

釧路が国際バルク戦略港に選定されました

2011-05-31 23:45:45 | Weblog
 釧路にとって久々に明るいニュースが飛び込んできました。釧路港が国際バルク戦略港湾に選定されたのです。

 バルクとは、コンテナで運べないような石油や穀物、石炭などのような液体や粉もの、粒状の荷物のことで、釧路港はトウモロコシを中心とした穀物を荷揚げする穀物バルク港としての応募に当選したのです。

 穀物バルク港として選ばれたのは釧路のほかに茨城県の鹿島港、鹿児島県の志布志港、名古屋港、水島港の四つで、全部で五つの港が選ばれました。

 国土交通省に造られた選定委員会ではそれぞれの港を政策の目的や政策実現のための方策、政策の効果、政策実現のための体制などで評価してそれぞれを点数化して順位をつけました。

 これによると釧路は応募6港中の5番目でした。特に評価の上では、今現在の取り扱い荷物の量が高得点を得るという形になり、今はまだ二の取り扱いが低い釧路港にとっては厳しい面もありましたが、民間との連携などが良くできている点で評価が高く、点数的には上位グループにとどまることができました。

【国土交通省発表資料~各港の評価結果】 http://bit.ly/jrVhp3

 このニュースは昨夜9時ごろから時事通信や共同通信ではすでに配信が始まっていたようで、今朝の道新や釧路新聞の朝刊にも既に「バルク港選定へ今日正式発表」という見出しで大きく取り上げられていました。

 まあ何はともあれ、日本に数多ある港に対して、現政権が『ばらまき的な整備はしない、選択と集中で行う』という姿勢を明確にしたところから始まった応募活動。

 釧路は、トウモロコシを運び出すアメリカのニューオーリンズ港などがパナマ運河を通って太平洋に出てきたときには日本の中で一番近い港なわけで、少しでも船賃を安く荷を受け取ることができる戦略性があるというメリットを前面に押し出してきました。

 地元でも商工会議所を中心に、多方面の団体による署名活動が展開されて、集まった署名は全部で72,783名となり、地元からの後押しも非常に心強いものがありました。もっともその数は逆にプレッシャーにもなり、(もし落選したら…)と弱気になった時には苦しいものがありました。

    ※     ※     ※     ※     ※


   【記者会見の様子】


 今日のお昼12時からは、蝦名市長と商工会議所の山本会頭の二人による記者会見が開かれ、市長からは「まずは結果として責任を果たせたので安堵しています」という喜びの声が聞かれました。

 また山本会頭からは「少しは地元負担があるかもしれないけれど、将来は収益になって帰ってくるのだから大いに頑張るべし」という力強いコメントをいただきました。

 穀物の取引港となることで、ここからさらに北東北や日本海の各港へ運ぶこともできれば、ここ東北海道を酪農だけではなく畜産の一大産業化という夢も膨らみます。

 これまでこの招致活動にご協力いただいた国会議員、道会議員の皆様をはじめ、各団体、そして応援してくださった市民の皆さんに心から感謝申し上げます。

 ありがとうございました。


【市役所のお礼ホームページ】 http://bit.ly/lNZrER  
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夕日も良いけど、実は夕焼けはもっと良い

2011-05-30 23:45:27 | Weblog
 以前ツイッター上で、『夕焼けハイボールが美味しい』と書いている人がいたので、『老婆心ながら、夕焼けじゃなくて夕日ハイボールですよ』と教えてあげたことがありました。

 するとそのときは、『いいえ、夕日もありますが、夕焼けハイボールもあるんです』と帰ってきて、(そうか、そういう飲み物もあるんだな、いつか飲まなくては)と思っていたのですが、その方から再び先週末に、「今度、釧路夕焼け倶楽部という会が発足するのですが、参加されませんか」というお誘いがきました。

 いろいろ周辺に訊いてみると、夕焼けを中心に釧路の動画情報を発信しようという純粋な会だ、ということが分かり急きょ参加してきたのですが、かなり目からウロコが落ちる思いをしました。



    ※     ※     ※     ※     ※



   【設立総会の様子です】


 こちらの会では、世界三大夕日と言われる「釧路港の夕焼け」をライブカメラによる動画配信やtwitcastingによる生実況中継などのほか、youtubeには10倍速にスピードを速めて夕日が落ちてからの夕焼けの変化を短くまとめた映像などを配信するという活動を昨年の6月から始めています。

 基本的な活動は、iphoneを固定して映像を配信してブログなどによる夕焼け情報の発信なのですが、今後はどこかのビルに固定カメラを据えたりして、安定的な映像を配信したいと思っているのだそう。それもなにより、もっと地域の企業や市民を巻き込んで夕焼けの魅力をもっと多くの人に伝えたいという思いの延長です。

 私が疑問だったのは、釧路は世界三大『夕日』であって、『夕焼け』じゃないのか、ということ。そしてそれなのになぜ、「釧路夕焼け倶楽部」として夕焼けの動画を配信するのか、ということで、それを訊ねてみました。

 するとその答えは、「夕焼けの方が夕日よりももっとダイナミックで美しい映像だからです」というものでした。

「釧路の夕日がきれい、とだけ言っていると、観光客の人たちも日没を過ぎると見終わった気になって帰ってしまいます。しかし実は、その日没後から長く続く得も言われぬ色の組み合わせの変化こそ、他ではまず見られない姿なんですよ。他のところの夕焼けは日が落ちるとすぐに暗くなるのですが、釧路ではそこから色の変化の時間がとても長く続くんです。もっとも、多くの釧路市民もそのことを知らないのが残念なんですが」

「では、今までで一番美しかった夕焼けはいつですか?」と訊いてみたところ、「それなら去年の11月23日の夕焼けですよ」と即答が。

「この日は日没まで曇りがちで、もうだめだね、と言っていたんです。ところがそこから日没後にかけて、オレンジから赤、そして紫と素晴らしい色の変化が見られました。そうだ、まずは見てくださいよ」と会の代表のHさんは早速カバンからipadを取り出してその映像を私に見せてくれました。 


【釧路の夕焼けの奇跡 10/11/23】
 以前ツイッター上で、『夕焼けハイボールが美味しい』と書いている人がいたので、『老婆心ながら、夕焼けじゃなくて夕日ハイボールですよ』と教えてあげたことがありました。

 するとそのときは、『いいえ、夕日もありますが、夕焼けハイボールもあるんです』と帰ってきて、(そうか、そういう飲み物もあるんだな、いつか飲まなくては)と思っていたのですが、その方から再び先週末に、「今度、釧路夕焼け倶楽部という会が発足するのですが、参加されませんか」というお誘いがきました。

 いろいろ周辺に訊いてみると、夕焼けを中心に釧路の動画情報を発信しようという純粋な会だ、ということが分かり急きょ参加してきたのですが、かなり目からウロコが落ちる思いをしました。


    ※     ※     ※     ※     ※


 こちらの会では、世界三大夕日と言われる「釧路港の夕焼け」をライブカメラによる動画配信やtwitcastingによる生実況中継などのほか、youtubeには10倍速にスピードを速めて夕日が落ちてからの夕焼けの変化を短くまとめた映像などを配信するという活動を昨年の6月から始めています。

 基本的な活動は、iphoneを固定して映像を配信してブログなどによる夕焼け情報の発信なのですが、今後はどこかのビルに固定カメラを据えたりして、安定的な映像を配信したいと思っているのだそう。それもなにより、もっと地域の企業や市民を巻き込んで夕焼けの魅力をもっと多くの人に伝えたいという思いの延長です。

 私が疑問だったのは、釧路は世界三大『夕日』であって、『夕焼け』じゃないのか、ということ。そしてそれなのになぜ、「釧路夕焼け倶楽部」として夕焼けの動画を配信するのか、ということで、それを訊ねてみました。

 するとその答えは、「夕焼けの方が夕日よりももっとダイナミックで美しい映像だからです」というものでした。

「釧路の夕日がきれい、とだけ言っていると、観光客の人たちも日没を過ぎると見終わった気になって帰ってしまいます。しかし実は、その日没後から長く続く得も言われぬ色の組み合わせの変化こそ、他ではまず見られない姿なんですよ。他のところの夕焼けは日が落ちるとすぐに暗くなるのですが、釧路ではそこから色の変化の時間がとても長く続くんです。もっとも、多くの釧路市民もそのことを知らないのが残念なんですが」

「では、今までで一番美しかった夕焼けはいつですか?」と訊いてみたところ、「それなら去年の11月23日の夕焼けですよ」と即答が。

「この日は日没まで曇りがちで、もうだめだね、と言っていたんです。ところがそこから日没後にかけて、オレンジから赤、そして紫と素晴らしい色の変化が見られました。そうだ、まずは見てくださいよ」と会の代表のHさんは早速カバンからipadを取り出してその映像を私に見せてくれました。 


【釧路の夕焼けの奇跡 10/11/23】


  http://bit.ly/luKp1K

 なるほど、これは素晴らしい!夕焼けがこれほどすごいとは思いませんでした。しかもどの映像もyoutubeでライブラリ化されているので、過去の映像も見ることができます。

 
    ※     ※     ※     ※     ※


「さらに、最初は気付かなかったのですが、夕焼けが進んだ段階で赤と空の青の間に緑が買ったベルトがでることがあって、これがまた美しい。そこでその緑が出た夕焼けのイメージをお酒にしてほしい、とここ『ゆらり』のマスターに作ってもらったのが夕焼けハイボールというわけなんです」

「じゃ、一杯いただきましょう」ということで頼んで出てきたのは、夕日ハイボールのジョッキで底にグレナデンシロップが入れられたものですが、夕日ハイボールがサントリートリス・エクストラであるのに対して、こちらは日本酒の福司がベース。

 そして緑色のベルトを印象付けるためにグリーンアップルのリキュールを加えてあり、これがさわやかな青リンゴ風味となっていて結構いける飲み物になっています。

 サントリーさんには申し訳ありませんが、これも釧路の名物にならないかな。


   【これが噂の夕焼けハイボール。うっすらと緑色がわかりますか?】


    ※     ※     ※     ※     ※

 
 釧路の夕焼けの資源性をさらに高める市民活動としての「釧路夕焼け倶楽部」の活動にこれからも期待したいところです。私も応援してゆこうと思います。

 今度は夕方に時間をたっぷりとって、夕焼け色の変化をじっくり眺めてみようっと。 


【釧路夕焼け倶楽部のブログ】
   http://blog.livedoor.jp/uyake946/



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とにかく何かを変えましょう

2011-05-29 23:45:45 | Weblog
 今日はやっとまとまって時間の取れる週末の一日となりました。

 しかしながら午前中は雨ということで出かけることもなく家の中の片づけやら洗濯、掃除であっという間に一日が終わってしまいました。晴れてくれないと折角持ってきた自転車も出せないなあ。


    ※     ※     ※     ※     ※
 

 昨日は釧路という町が最初に発達したころの中心地だった橋南地区のまちづくり団体「橋南西ゆめこい倶楽部」に招かれて、1時間の講話に加えて蕎麦打ちを披露。

 道具は知人から借りましたが、ホテルで蕎麦を打ったのは掛川以来久しぶり。いや、疲れました(笑)


    ※     ※     ※     ※     ※


 こちらの「ゆめこい倶楽部」も活動を始めてから6年が経過して7年目に突入。どこかマンネリ感が漂う中で、活動にカツを入れる工夫について話を聞きたい、という依頼でした。

 私がお話したかったのは三つのこと。

 一つ目は、『とにかく何かを変えましょう』ということ。昨年と何かが違う今年にしよう、昨年のものに加えて何か新しいことを今年は導入しましょう。

 昨日と何かが違う今日にしよう、本を読むでもよし映画を見るでもよし、機能とは違う今日の自分は何かを意識しましょう、と。

 何かを変えるという意識を自分の行動様式に組み込んでおかないと、たちまち年月ばかりは過ぎても、結果として何も変わらない事になってしまいます。

 今般の大震災では意図しないままに自ら変わらなくてはいけない事態に追い込まれている方も多いのですが、だまっていて自分に都合の良いような変革に身をおけるなどということはまずありません。

 常に何かを変えてやれ、という気持ちはちょっと練習すればだれでも持てるようになるはずです。これは訓練で身につけられるスキルです。

 だから「同じだったら拒否する」くらいの強い気持ちで物事に当たって欲しいと思うのです。


   【引っ越しでもいいのかも】



    ※     ※     ※     ※     ※


 お話の二つ目は、誰かがやってくれるのを待つのではなく、一人一人が自分でできる範囲のことを自分でやるという強い生き方を選ぶこと。

 私が考える「生涯学習像」とは、文化や芸術にとどまらずに、まさにそうした強い生き方のことです。

 自分たちのまちのことをもっとよく知り、その価値を再認識して自分たちがやっていることを仲間内に留めずに外へ向かって発信し続けてみましょう。いくら良いことをしていても、発せられない声は聞くことができないのです。


    ※     ※     ※     ※     ※


 三つ目は、良い教師やリーダーとは、それを率先垂範して実践して、周りの心に火をつけることができる人だ、ということ。

 自らやって見せなくては人の心を打つことはできません。言うは易く行うのは難しいのですが、ね。


    ※     ※     ※     ※     ※


 「言志四録」にはこうありました。

   士気振るわざれば、すなわち防御固からず。
   防御固からざれば、すなわち民心もまた固きこと能わず。

   然れどもその士気を振起するは、人主の自ら奮いて
    以て率先をなすに在り。また別法の設くべき無し。
 
 (訳文)
 (国民の)士気が振るわなければ国の防備を堅固にすることはできない。防備が堅固でなければ、国民の団結心も堅固になることはできない。
 その士気を奮い起こさせるには、人の上に立つ君たる人が、自ら奮い立って衆人の先頭に立って手本を示すにある。この外に別に設けるべき良い方法はない。


 
 戦争の時に、前線で一番死ぬ確率が高いのは一般の兵士ではなく将校クラスです。それは戦況を見定めるために一番前に出なくてはならないため。そしてそれゆえに兵士も奮い立つことができるのです。

 さて、昨日の自分と何かを変えるために今日もブログ記事を書きました。

 これはこれで自分自身の成長の年輪のつもりなのです。 



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大震災後に何が変わるか~釧信フォーラムより

2011-05-28 23:45:36 | Weblog



今日は地元釧路信用金庫が主催する釧信フォーラムが開催されました。

 今回のテーマは「東日本大震災への対応~地域にできること、なすべきことは」というもので、さすがに今は最もホットなテーマであるために人気もホット。プリンスホテルの広い会場がほぼ満員です。


 まずは基調報告として四人の方がそれぞれの立場で震災について語ってくださいます。メンバーは、釧路信用金庫の森村理事、ほくとう総研の石森顧問、釧路市の蝦名市長、そして鶴賀グループの大西社長の皆さんでしたが、印象的だったのは大西社長のお話でした。


    ※     ※     ※     ※     ※

 
 まずは、3月11日の大震災以降の宿泊観光への影響としては、262千人の予約キャンセルがあり、海外客は100%キャンセル。JTB発表では先行予約は東北海道で、対前年60%以下に落ち込んだのだそう。以下は大西さんの発言です。

 大震災以降は、旅行も予約の形態もいろいろなものが変化してきました。四月の初めはどうなるかと思いましたが、不思議なことにGW直前の四月末から予約が急に盛り返してきて、ゴールデンウィークの結果としては対前年95~120%となりました。是非この先も何とか乗りきりたいという希望を抱いています。

 長く北海道を引っ張ってきた団体ツアー観光や台湾からなどの外国団体からは、福島県を含めて『東北以北』と捉えられているようで、北日本全体で放射能の影響が心配だと思われています。東北も北海道もひとくくりにされる風評被害が起きているのです。

 その原因は、「福島の上を飛行機で飛びたくない」という原発を避けたい心理が働いているようで、やはり早く原発事故は収束させていただきたいものです。

 一方、個人旅行では道外へ行けないためか、道民による道内旅行が盛り返してきているのですが、これもまた地域や業態の格差が著しく、団体大型旅館やドライブイン、バス会社などは相変わらず厳しいようです。

 こうした業態はこれまでも少しずつ厳しくなるという変化でしたが、大震災以降はその変化が断層的に大きく変わった感じがします。


    ※     ※     ※     ※     ※


 残念な話ばかりではなく、少しは目線の上がるような希望の持てる良い話もご紹介いたしましょう。

①道央圏の中学生が大挙して東北海道方面へ修学旅行の行く先を変えてくれました。修学旅行は行く先変更を決めてから三年先くらいにようやく実現するくらいのゆっくりした動きだったのですが、今回の事態の中で急遽事情が変わりました。
 道教委にはこれからも、「中学校までは北海道の地元意識を醸成するために郷土文化、アイヌ文化などを学んで欲しい」と訴えていきたいと思っています。


②海外からのお客様の中でも、5月28日には台湾立法院の王院長が来釧してくださいました。おかげで台湾からのお客様が4月は1600人程度でしたが、5月には数千人になりそうです。
 中国へは高橋知事も自ら中国へ行き安全性を自らアピールしてくれてありがたいことです。

③またその一環として、宿泊業界も1000万円を出した総額1億円で、6月1日から『暑い内地を離れて涼しい北海道へきてください』という『北海道クールキャンペーン』を行うこととしています。

 長年の懸案だった道東道の夕張~占冠間はこの秋に開通を果たすことから、道央圏と道東へ向かう大きな流れができるのではないかと思っています。
 これに向けた大キャンペーンを行うつもりですが、残念なのは高速道路無料化の社会実験が取りやめられることです。

 社会実験の廃止は、震災復興財源の捻出が目的ということですが、我々北海道も被災地なのであって、二次被害が大きいことを忘れて欲しくありません。北海道は東北、関東についで被災額が大きいのですから、こういうダメージから地方が立ち上がるためには、地方の疲弊度を救うような、きめ細かな地域対応が社会実験としては相応しいのではないでしょうか。

④ミシュランのグリーンガイドに、8箇所新しく三つ星認定を受け、それに知床、摩周湖、阿寒湖が含まれました。三つ星クラスの自然の宝庫なのだということを欧米やアジアに伝えられる大きなチャンスだと考えて作戦を考えたいと思います。


    ※     ※     ※     ※     ※

 
 私たちは長い間自国の歴史を『戦前・前後』と分ける歴史教育を受けてきましたが、後の歴史家は、『震災前・震災後』という時代区分を用いて社会を説明するようになるのではないでしょうか、つまりパラダイムの大きな転換を迎えたということです。

 観光面で言うと、長期休暇を取ろう、分散休暇を取ろう、サマータイムを取ろう、という風に都会のライフスタイルは変わるでしょうしレジャー形態も断層的に変わるに違いありません。

 これだけ社会の環境やライフスタイルが変わる中で、我々の観光という業種自身も根底から変わらなくては行けないのではないでしょうか。実は今までずっとやりたいと思っていながらやれなかったこと、平時ではできなかったであろう改革に手をつけられるのではないか、と思うのです。

 例えば、宿泊で言うと、お客様と業者との間にミスマッチができていました。例:一泊二食でお仕着せ料理、子供料金は大人の七割、ひとりのお客は嫌われている…、ペットはお断り…、などなど時代のニーズを捉えられずに見ないふりをして対応せずに来たのではないか、と思われる事柄は多いです。

 我々観光業者の側からお客様の方に飛び込めるチャンスが来たと思う。

 最近聞いた中で心に残ったのは、阿寒湖温泉のアイヌの長老の話でした。アイヌは常に天の神を恐れ敬ってきたが多くは畏れであったこと。
 そしてそれをいましめとして子々孫々に伝えてきたこと。昔のアイヌの知恵は地名や伝承で残っていたはずだが、人間がある種のおごりの中で、自然の力を「想定内」と「想定外」に勝手に押し込めてしまったのではないか。

 津波の高さ、原子力を人間が制御出来ると考えてしまったのであって、人類は初心に返らなくてはならないのではないだろうか、というのです。



 また先日、湿原塾の月尾先生の講演を聴きましたが、そのお話のなかで、ほとんどの神社仏閣など、時間によって長く洗礼を受けたものはことごとく大丈夫だったのだそうで、アイヌは初心、月尾先生は謙虚という言葉で表現されたことは同じようなことだと思いました。

 多くの国民も同じようなことを考えたのではないでしょうか。大震災はそれを考えるきっかけだったわけで、アイヌの人たちの教えの中にはそうした事への道しるべがあると思います。

「北の大地でもう一度人生を考えてみませんか」というメッセージをこれからなお一層発して行きたいと思っています。


    ※     ※     ※     ※     ※


 この大震災直後という時期は、変えたいと思っていたけれど日常に流され、着手するきっかけをつかめずにいた事柄に真剣に手を付ける絶好の機会なのかもしれません。

 やれることをコツコツと、それでいて素早く続けることで新しい時代の観光の姿を見極めてゆきたいですね。

 北の大地で世界を深く考える「北の哲学ツアー」などが売れるようになればまた北海道に人気が集まってくることでしょう。

 これもまたコツコツの一つです。
 
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少年の時、老成の時

2011-05-27 23:45:46 | Weblog

   【人生はこれから】


 五月の後半は、様々な団体が定期総会を行う季節。

 市の幹部となると、当然のように挨拶や出席、さらには懇親会への出席案内がくるのですが、日にちのコマ数以上に会合があるものだから、どうしても日程が重なって、会合のハシゴをすることも多くなります。

 市内の会合であればまだしも、首長ともなると近隣の首長が役員となっている会合も数多く、これらの総会のために忙しい首長が五月雨式に集まってはいられません。

 そこで、「一連総会」という名称で、一日だけ地域の首長さんに釧路に集まっていただき、各種の総会をひとつ20分程度でことごとくこなしてしまおうという日程が組まれます。

 来週の月曜日がその「一連総会」なのですが、市長が出席する総会は一日で16件もありました。社会はどんどん複雑化してゆきますが、よくもまあこれだけ特定の課題に関連して協議団体ができたものです。

 それぞれには誕生した経緯があるのでしょうが、似たような複数の課題を一つの団体に発展的に統合するといった形で整理・合理化できると良いのですが。こういうことも案外見逃している効率化できそうな分野かもしれません。


    ※     ※     ※     ※     ※


 かくいう私、今日は市内の老人クラブ連合会の定期総会に参加してご挨拶を述べる機会をいただきました。

 お年寄りというのは、単に世話をする必要がある人ではなく、時間があり健康があり、小金もあり経験もある存在と言えなくもありません。

 高齢者の皆さんが少しでも地域の役に立とうという志を示していただければ、かなり地域が元気になるに違いありません。

 掛川で当時の市長さんが言っていた「一世紀一週間人生」という言葉を紹介して、「その意味は百歳まで生きて、具合が悪くなれば一週間でこの世とお別れする人生です」と説明すると、何人かは一瞬怪訝そうな顔をされました。

 (一週間で死ねということか)と思われた方もいたかもしれませんが、そうではありません。この言葉の真意は、「一週間でこの世とお別れをしろということではなく、一世紀、つまり百歳まで真剣に生きるということにこそ主眼が置いているのです」

「今の日本の医療水準や食料事情からすれば、80歳くらいまではごく当たり前に生きられますが、ここから90歳を目指すには85歳に大きな壁があり、90歳になってさらに100歳を目指そうとすれば、健康や運動、さらには脳を十分に使うなどと言った高度な実践が必要になります。そしてそれこそ、自分自身の生涯学習ということなのです」と説明すると、納得された方も多かったよう。

 衝撃的な表現の方が印象的に心に染みるという意味で、当時の榛村市長さんは、コピーライターとしての才能に溢れていたと改めて思います。



    ※     ※     ※     ※     ※


 最後に佐藤一斎先生の「言志録」より一節をお借りします。


  少年の時は当(まさ)に老成の工夫を著すべし
      老成の時は当に少年の志気を存すべし


【その意味は】
  若い時は経験を積んだ人のように十分に考えて、手落ちのないようにすべきであり、歳をとってからは、若者の意気と気力を失わないようにするがよい。

 自分の今はこの中間でしょうか。老成の工夫と少年の志気を併せ持って前進したいものです。
 
   
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風景がお金になるという話

2011-05-26 23:45:00 | Weblog




 もう旧聞に属するのですが、北海道コカ・コーラボトリング(株)さんが四月末から、同社の商品の一つである「ジョージア サントスプレミアム」という缶コーヒーに北海道限定デザイン缶をつくり、販売を始めました。

 そしてこのオリジナルデザインに北海道の風景が二つ選ばれていて、その一つが釧路湿原なのです。ちなみにもう一つは函館近くの大沼の風景。この二つを北海道の代表挂冠として選んでくれたというわけです。

 このオリジナル間の売り上げの一部は、道内で環境保護活動をしている(財)北海道環境財団に寄付されて、道内の自然保護に役立ててもらおうということにもなっているのだそう。釧路への寄付がないのはちょっと残念…(笑)



   【湿原バージョンはこちら】


    ※     ※     ※     ※     ※


 さて今日は、北海道コカ社の会長さんと社長さんが釧路駅でこのオリジナルデザイン缶のキャンペーンをされたとのことで、その足で市役所を訪ねてきてくださいました。

 「どうしてサントスプレミアムなのですか」とお訪ねしてみたところ、「このブランドは全国で売り出したのですが、とにかく道東での人気が根強くて、今では北海道だけでしか売らなくなりました」とのこと。

 その人気に恩返しするつもりで道東の風景ということでは釧路湿原以外にない、のだそうです。

 同社では、大沼缶と釧路湿原缶の二種類をセットにして化粧箱に入れたものも売り出していて、空港などでは北海道限定お土産として人気があるのだとか。

 ただしこのオリジナル缶は両方とも全道で売っているために、自動販売機などではデザインを選べなくて、どちらが出るかは運しだい、とのこと。釧路湿原缶がどうしても欲しければ、お店で直接お買い求めいただくのが良いですね。

 ちなみにこのデザインはもうすぐペットボトルバージョンも出るのだそうです。街で見かけたら是非とも釧路湿原缶の方をお買い求めください。

「風景は銭になるか」といつも自問自答するのですが、くしろ夕日ハイボールと言い、このサントスプレミアムのオリジナルデザイン缶といい、少しずつビジネスにも使ってもらえる存在になりつつあるというのはうれしいことです。

 釧路っ子は応援必須ですぞ!
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事は苦なれど、意は快なり

2011-05-25 23:45:01 | Weblog
 先日ある仕事の担当者と話をしていると、「いやあ、先日仕事の相手から散々に怒られました」という話題になりました。

「何をそんなに怒られたのですか」
「いや、いろいろと普段から思うところがあったようです。しかし、私を散々に攻め立てるのですが、実は同じ席にいた同僚への不満もあったようですけど」

「それが分かっていて怒られ続けたわけ?私じゃないでしょ、と言えば良かったのに」
「いえ、話をしていて、『ああ、これは自分じゃなくて、彼に対する不満なんだな』と分かってきました。でも誰かが発散する感情を受け止めないと収まらないものですからね。案の定、何日か後にその方と会った時には『先日はちょっと言い過ぎてすみませんでした』と言っていただきましたよ(笑)」


    ※     ※     ※     ※     ※


 
 江戸時代の儒学者、佐藤一斎が晩年に表した四冊の書物である言志四録のうち、言志晩録にはこうありました。


  人とことを共にするには、彼は快事を担い、
   我は苦事に任ぜば、事は苦なりと雖(いえど)も、
    意はすなわち快なり。

  我は快事を担い、
   彼は苦時に任ぜば、事は快なりと雖も、
    意はすなわち苦なり。

(訳文)
 人と仕事を共にする場合、彼が愉快な仕事をして自分が苦しい仕事を引き受けるならば、仕事そのものは苦しいけれど心は愉快である。
 逆に、自分が愉快な仕事をして彼が苦しい仕事を引き受けたならば、仕事は愉快だが心は苦しいものだ。 






    ※     ※     ※     ※     ※


 ある本に、今回の大震災が発生した際に、ある方が四トントラックにたくさん食料を積んで被災地に向かった時のエピソードが載っていました。

 その方はどこの避難所が困っているかを調べてから届けに行ったのですが、到着すると被災者の方が「うちよりもこの先の避難所の方が困っているからそっちに行ってほしい」と言われたのだそう。

 それで次の避難所へ行くと、やはりそこでも「さらに奥の方がもっと困っているからそちらへ」と言われる。
 
 そんなことを十一回繰り返して、十二カ所目の避難所は本当に困っていてそこでは涙で感謝されて炊き出しをして帰ってきたのだと。

 ところがその方が帰ってきてからテレビを見ていたら、そう断られた避難所が映っていて、「いまこの避難所は物資が欠乏していて、一日一個のおむすびしか食べていない」と紹介されていたのだそう。

 今自分のところには一日一個のおむすびしかないけれど、その一個のおむすびすらないところがあるからそちらへ行ってほしいということだったのだと分かったのです。


 なんだろう、これは日本人の美徳なのか、東北人の美徳なのか。

 人間は苦しい時に本性が現れます。自己を常に磨き続けなくては。  
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人の気持ちには火がつくのだろうか

2011-05-24 23:45:11 | Weblog
 昨年釧路市では外部委員会から「釧路市の都市経営の在り方に関する提言書」というレポートを策定していただきました。(http://bit.ly/mdVWCV)。

 これを受けて、市では釧路市都市経営戦略プランを策定しつつあるのですが、この中には厳しい財政を効率的に運用するための「公有資産マネジメント」について述べられているほかに、「仕事を分かりやすくする」、「組織を活かす」などといったことも目標とされています。

 私自身、すでに釧路へ来てから11か月が経過しようとしていますが、まだまだ会っていない人も多く、なかでも市役所の中でこれからの釧路市を背負って立つであろう若手職員との対話が少ないことを危惧していました。

 そこで何人かの課長クラスに、「若手の皆さんとともに勉強会などできないだろうか」と相談を持ちかけていたのですが、「それなら若手を何人か集めますから、意見交換をしてみましょう」というセッティングをしてくれました。

 私の問題意識は、
 ①仕事で縁のできた人なら知り合えるが、縦割りの仕事が多くなると、横同士の知り合いネットワークも連携が不足しがち。

 ②一人一人が「自分は何だ」、「お互いは何だ」と切磋琢磨しながら自己研鑽を普段の中で気軽に行える機会がある方が良い。

 ③一人一人の情報発信能力やプレゼンテーション能力を高めるような機会があるべき。(市役所のパソコンにはパワーポイントというプレゼンソフトが限られた人にしか入れられていない)

 
 私としては、細かなスキルアップを図るよりも、日々を前向きに明るく創造的に過ごすことができるような「人間力」とは何か、を考えるきっかけができるとよい、くらいに思っていて、若手の皆さんとの間で意見交換ができました。

 なんでも上司から「おい、やるぞ!」と引っ張るやり方もありますが、若手が自ら何事かを考えて企画するのも勉強だと思い、まずはちょっと考えてみてもらうことにしました。

 どういう考えが出てくるか、楽しみです。


    ※     ※     ※     ※     ※


 昨日に続いて二宮尊徳先生は、よく「芋こじ」ということを奨励しました。芋こじとは、サトイモなどを桶の中で辛抱強く回していると芋同士がこすられて皮がむけてゆくことから、誰かがやるのではなく、互いに切磋琢磨し合って磨き合う精神を言ったものです。

 学ぶということはひとえに自分の内発的なものであるべきです。自らの心に火がつくことが肝心なのです。


    ※     ※     ※     ※     ※


 門下生の心に火をつけたといえばなんと言っても、幕末の志士としての気概を植え付けた松下村塾の吉田松陰でしょう。

 東京の世田谷には区役所の近くに松陰神社があって吉田松陰が祀られていますし、赤坂の乃木神社にも松陰ゆかりの正松神社があります。あやかりたい人がさぞ多かったのでしょうね。


   【吉田松陰を祀る松陰神社(世田谷区)】




 以前吉田松陰の遺書である「留魂録」について読んだ時の記事を思い出しました。読んだ本はレビューを書いておくと後で思い出すのに便利です。


【吉田松陰「留魂録」を読む】(開拓記)20070627
  http://bit.ly/jyro0T


【世田谷松陰神社へ行く】(開拓記)20070623
  http://bit.ly/lHvY1P


(それと参考)松下村塾門下生について

 (…前略)
 松陰が塾生達の指導に当たったのは僅か2年余りにしかすぎなかったが、松陰の指導・薫陶を受けた松下村塾門下生達は尊王攘夷を掲げて京都で活動した者や、明治維新で新政府に関わる者など幕末・明治において大きな活躍を果たす。

 久坂玄瑞や高杉晋作、吉田稔麿など倒幕運動の中で重要な役割を果たしながらも、それ故に明治維新を前にして道半ばで斃れた者も多いが、生き残った者は、伊藤博文、山県有朋の内閣総理大臣を筆頭に、多数の国務大臣、大学の創業者など近代日本に繋がる大きな役割を果たした。

 塾生名簿は現存しないが、著名な門下生には久坂玄瑞、高杉晋作、吉田稔麿、入江九一、伊藤博文、山県有朋、前原一誠、品川弥二郎、山田顕義、野村靖、飯田俊徳、渡辺蒿蔵(天野清三郎)、松浦松洞、増野徳民、有吉熊次郎などがいる。 (…以下略)

 引用:「吉田松陰.com」より

 
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肥桶に盛った飯

2011-05-23 23:45:37 | Weblog
 朝一番に札幌での打ち合わせが突然必要になったのですが、今週の中で札幌往復の時間を取れるのは今日の午後だけ。

 相手のアポを確認しつつ、既に今日予定されていた事項を全て先送りかキャンセルして、午後一番のHACで丘珠空港へ飛んできました。いざというときに飛行機のような高速移動手段は実に頼りになります。

 願わくば、HACの経営が早期に安定して新しい機体を増やして便の融通をさらに利かせて欲しいものです。


      ※     ※     ※     ※     ※


 それにしても、これだけネットや通信技術が発達したとしても、最後は直接会って、細かいニュアンスまでを会話の中で伝えなくてはならないというのは、情報というものの質を考えさせられます。

 言葉は文字にできるけれど、文字だけや声だけでは伝わらない全体の価値みたいなものは、どんな時代にも残ることでしょう。

 情報が、「人が考えていることを人に伝える」という事である限り、発するのも人間であり受け取るのも人間だということは普遍です。そしてだからこそ発する人間の人間性と受け取る人間の人間性が交差するところでもあるということ。

 そしてもう一つは、互いの人間同士の関係性の問題。

「ほかの人に言われても聞く気にならなかったけれど、あなたに言われては仕方がありませんね」

 そう言ってもらえるためにどれだけの努力と時間をかけた「信頼」が必要なことか。一度信頼を失った人の言葉はもう聴衆には伝わらないのです。


   【伝えると伝わるは別のこと】



      ※     ※     ※     ※     ※


 私が敬愛する二宮尊徳のお話の中に、尊徳のところに居候として転がり込んできた儒者のお話があります。

 その者は、自分が学んだ儒教の教えを人々に説いて回っていたのですが、そのもの自身は大酒飲みで放蕩無頼が目に余るようになっていました。

 そして次第に人々の心は離れていき、誰もその者の教えを受けようとはしなくなりました。 

 その様子に当の儒者某は怒り出し、尊徳先生に対して「先達の教えは尊いものだ。誰が述べたとしてもその価値に変わりはないのに、皆私の話を聞こうとはしない」と不満をぶちまけました。

 すると尊徳先生は、「そこに肥桶があるだろう。いくら洗ったところで、それに盛られた飯を食べる奴はいまい。飯は飯で食べられるものだ。しかしそれが何に盛られているかで食べたくなることもあれば、食べたくはないと思うこともあるものだ。そうではないか」と諭したとのこと。

 翌日、その者は恥ずかしさのあまり尊徳先生の下を離れていったそうです。

 言葉を発する自分が肥桶であるか、漆の碗となりうるか。

 普段の自分の姿は多くの人に見られています。 もって自戒すべし。
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月尾嘉男先生の釧路湿原塾

2011-05-22 23:46:36 | Weblog

   【先生、お久しぶりです】


 東京大学名誉教授の月尾嘉男先生を迎えて、地域を考える「釧路湿原塾」が開かれました。

 月尾嘉男先生からの講演タイトルは「足元の宝物で地域再生」。文字通り、全国各地で行われているさまざまな地元素材による地域再生の事例を紹介していただきました。

 上勝町の葉っぱビジネスは、刺身のつまである葉っぱをお年寄りが集めて売りさばくことで、町のビジネスになりつつお年寄りがどんどん元気になるという効果を生んでいます。

 高地の馬路村では町特産の無農薬ゆずを前面に押し出しつつ、既存の流通システムを使わずに直接販売をめざし成功しました。

 山形県鶴岡市の加茂水族館は、見せるものに困って前の海で獲れるクラゲに注目。世界一のクラゲ水族館を目指したところこれが人気になりました。そんなころ下村教授がオワンクラゲの発光の謎でノーベル賞を受賞されたことから俄然注目され、来場者が大幅に伸びたのだそうです。

 金や銀、レアメタルに至っても、もはや日本では携帯電話や家電の中に使われていて、今や都市鉱山と呼ばれるくらい、上手に回収すれば元々の鉱山よりもずっと効率的に回収ができるようになりました。

 要は、あまり遠くに解決策を求めずにまずは身近なものに光を当ててみて、あとはちょっとした知恵をもって実践してみることが大切だ、ということですね。


     ※     ※     ※     ※     ※


 また、経済成長がそのまま国民の幸せに結び付いてきたのだろうか、という素朴な疑問が出始めていると言います。

 ブータンでは1972年に、当時のブータン国王ジグミ・シンゲ・ワンチュク氏が「国民全体の幸福度」を示す“尺度”としてGNH(=Gross National Happiness)という指標を提唱しました。

 日本ももはや人口減少局面に入ると、経済の大きさのGDPなどで順位を争っているようでは必ずじり貧になります。

 そのことをもって、中国やインドなどに追い抜かれてゆくのをただ「情けない」と嘆くのではなく、別な指標を目標にしてそれに向かう国づくりをすべきではないか、とおっしゃいます。

 そんな新しい指標として、GNC(=Gross National Cool:
国民総カッコよさ)など、日本が進んでいるアニメ文化や食文化、歴史と伝統などを指標化して日本の良さを前面に出した指標で国同士の対決をすれば、まだまだ日本は世界に冠たるクールな国として生きていけることでしょう。

 そんなCoolさやHappinessを国レベルで競うのも良ければ、自治体同士で競うという話も出始めているそう。

 荒川区ではGAHという指標を打ち出しました。GAHとはGross Arakawa Happinessといって、荒川区民の幸せの総量を上げてゆこうというのです。

 こういうことを自治体単位で考え始めて競い合うというのも面白いかもしれません。

 でもそうなると幸せを定義する必要がありますね。

 幸せって何なのか、ちゃんと考えてみることが必要です。
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