国交省の外殻団体である(財)国土技術センター(通称JACI)が主催のシンポジウム「認知症高齢者とまちづくり」に参加してきました。
高齢者の増加に比例して認知症高齢者も増加し、在宅や各種施設で生活する軽度の認知症のお年寄りも増えています。
最近では認知症高齢者が認知症高齢者を介護する「認認介護」などという言葉もあるそうです。
認知症と言っても実はいくつかの種類もあり、またその程度によっても症状は様々。一見普通の生活が出来るので、そうとは気づかれない方もたくさんいるのです。
しかしそうした軽度の認知症の方が外出をする時にどのような実態になっているかを調べた調査というのはこれまでありませんでした。
今回JACIでは、実際の認知症の方と共に町を歩くことで認知症高齢者の日常にどのような危険があるのかを実地に調査し、その結果を踏まえて、認知症のお年寄りとともに暮らすまちづくりとはどのようなものか、というシンポジウムを開催したものです。
※ ※ ※ ※
【調査の背景】
既に述べたように、高齢者の増加と共に認知症のお年寄りの数も増えています。認知症高齢者は現在190万人と言われ、2025年には300万人を超え、後期高齢者の10人に一人は認知症になると言われています。
しかし症状が軽度ですんでいる人では症状が進むことを防止するためにも外出は必要とされています。認知症で困るのは「意欲・発動性の低下」で、何もしたくなくなってしまうと症状が進行しがちです。
しかし実際に外出をしてもらうとなると、付き添いのマンパワーにも限界がありますし、家族の負担も大きくなってきます。
以前にも書いたように、認知症であっても自立した生活が出来るうちは大いに自立してもらっているのがよいのですが、外出をしたりするとどのような危険があるかを知っておくことが極めて大切なことになってきます。
2008年から2009年にかけての調査では全部で11回のまち歩き調査を行いましたが、その際には被験者のお年寄りにアイマークレコーダーという目の動きを調べる装置をつけてもらい、歩いている時にどこを見ているのかも調べることが出来ました。
その結果、交通事故のリスクが高い行動として、
①赤信号の見落とし
②車道歩行
③交差点での左右確認なし
④交差点での車道踏み出し、などがみられたのだそうです。
またこれらの他に、興味あるものを見つけると集め出したりよく見るために勝手気ままに蛇行して歩いたりもしていました。
※ ※ ※ ※
【まちあるき調査から分かったこと】
これらの結果、『例えば赤信号を見落とす』という行動の裏側でも三つの視点が指摘されました。それは
(1)個人の属性によるもの
(2)認知症によるもの
(3)空間整備のあり方に課題があるもの、のみっつです。
認知症が進むと、行く時にはちゃんと見ていた歩行者用信号を帰りは全く見ていないなどということもあったり、また認知症の場合視点が下を向く傾向があって、遠くを見なくなると言うこともあるのだそうです。
ある被験者の男性は、線を見るとその上を歩くという行動が出るようになり、車道の脇の白線に沿って歩道ではなく車道を歩くのだそうで、これには実験に立ち会った医師達も驚いたと言っていました。
一見ちゃんとした人でも、突然どう行動するかが読めないのだそうです。
※ ※ ※ ※
別な方で、認知症介護研究・研修東京センターの永田さんからは、一人一人特有の支援マップを作るのがよい、という報告がありました。
本人が行きたいこと、本人が外出中苦手なこと、行きたくないところなど、希望や不自由を聞き取って、それを友人や地域と相談しながら、一人でも出かけられるような地図を作るのです。
あるお年寄りは外出した先でどこへ行こうとしたのかが分からなくなり、また戻る家も分からなくなりました。しかしその方の家族は案外鷹揚に構えていて、それは「外出して分からなくなった時には昔住んでいた家の回りにいることが多い」と分かっているからだそう。
その方は昔の記憶が蘇ると、その時代の地図が頭に浮かんでその頃住んでいた家に戻るので、そうした個人の特性をちゃんと把握していれば、いなくなったときでも家族もパニックにならずにすむというわけです。
また中には、スーパーマーケットの中の音楽がうるさくてかなわないと思っているとか、スーパーの中でレジがどこか分からなくなってしまうなどといったことも、聞き取る中で分かってきたりします。
そうした一人一人の事情をお店や地域が知ることで、対処出来るところから初めて認知症のお年寄りでも外出が苦にならないような地域社会をつくることに繋がれば、もっと暮らしやすくなるはずです。
キーワードは、「本人の声を聞こう」、「本人を抜きにまちづくりを進めない」です。
改めてこれから日本が向かう社会への準備は、心の準備と社会システムでの準備とがあるのだなと思いました。
今からできることを始めたいですね。
高齢者の増加に比例して認知症高齢者も増加し、在宅や各種施設で生活する軽度の認知症のお年寄りも増えています。
最近では認知症高齢者が認知症高齢者を介護する「認認介護」などという言葉もあるそうです。
認知症と言っても実はいくつかの種類もあり、またその程度によっても症状は様々。一見普通の生活が出来るので、そうとは気づかれない方もたくさんいるのです。
しかしそうした軽度の認知症の方が外出をする時にどのような実態になっているかを調べた調査というのはこれまでありませんでした。
今回JACIでは、実際の認知症の方と共に町を歩くことで認知症高齢者の日常にどのような危険があるのかを実地に調査し、その結果を踏まえて、認知症のお年寄りとともに暮らすまちづくりとはどのようなものか、というシンポジウムを開催したものです。
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【調査の背景】
既に述べたように、高齢者の増加と共に認知症のお年寄りの数も増えています。認知症高齢者は現在190万人と言われ、2025年には300万人を超え、後期高齢者の10人に一人は認知症になると言われています。
しかし症状が軽度ですんでいる人では症状が進むことを防止するためにも外出は必要とされています。認知症で困るのは「意欲・発動性の低下」で、何もしたくなくなってしまうと症状が進行しがちです。
しかし実際に外出をしてもらうとなると、付き添いのマンパワーにも限界がありますし、家族の負担も大きくなってきます。
以前にも書いたように、認知症であっても自立した生活が出来るうちは大いに自立してもらっているのがよいのですが、外出をしたりするとどのような危険があるかを知っておくことが極めて大切なことになってきます。
2008年から2009年にかけての調査では全部で11回のまち歩き調査を行いましたが、その際には被験者のお年寄りにアイマークレコーダーという目の動きを調べる装置をつけてもらい、歩いている時にどこを見ているのかも調べることが出来ました。
その結果、交通事故のリスクが高い行動として、
①赤信号の見落とし
②車道歩行
③交差点での左右確認なし
④交差点での車道踏み出し、などがみられたのだそうです。
またこれらの他に、興味あるものを見つけると集め出したりよく見るために勝手気ままに蛇行して歩いたりもしていました。
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【まちあるき調査から分かったこと】
これらの結果、『例えば赤信号を見落とす』という行動の裏側でも三つの視点が指摘されました。それは
(1)個人の属性によるもの
(2)認知症によるもの
(3)空間整備のあり方に課題があるもの、のみっつです。
認知症が進むと、行く時にはちゃんと見ていた歩行者用信号を帰りは全く見ていないなどということもあったり、また認知症の場合視点が下を向く傾向があって、遠くを見なくなると言うこともあるのだそうです。
ある被験者の男性は、線を見るとその上を歩くという行動が出るようになり、車道の脇の白線に沿って歩道ではなく車道を歩くのだそうで、これには実験に立ち会った医師達も驚いたと言っていました。
一見ちゃんとした人でも、突然どう行動するかが読めないのだそうです。
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別な方で、認知症介護研究・研修東京センターの永田さんからは、一人一人特有の支援マップを作るのがよい、という報告がありました。
本人が行きたいこと、本人が外出中苦手なこと、行きたくないところなど、希望や不自由を聞き取って、それを友人や地域と相談しながら、一人でも出かけられるような地図を作るのです。
あるお年寄りは外出した先でどこへ行こうとしたのかが分からなくなり、また戻る家も分からなくなりました。しかしその方の家族は案外鷹揚に構えていて、それは「外出して分からなくなった時には昔住んでいた家の回りにいることが多い」と分かっているからだそう。
その方は昔の記憶が蘇ると、その時代の地図が頭に浮かんでその頃住んでいた家に戻るので、そうした個人の特性をちゃんと把握していれば、いなくなったときでも家族もパニックにならずにすむというわけです。
また中には、スーパーマーケットの中の音楽がうるさくてかなわないと思っているとか、スーパーの中でレジがどこか分からなくなってしまうなどといったことも、聞き取る中で分かってきたりします。
そうした一人一人の事情をお店や地域が知ることで、対処出来るところから初めて認知症のお年寄りでも外出が苦にならないような地域社会をつくることに繋がれば、もっと暮らしやすくなるはずです。
キーワードは、「本人の声を聞こう」、「本人を抜きにまちづくりを進めない」です。
改めてこれから日本が向かう社会への準備は、心の準備と社会システムでの準備とがあるのだなと思いました。
今からできることを始めたいですね。