今日は昔の職場のOB会による現場見学会がありました。
バスを借りて札幌近郊の話題の現場を見学して見聞を広めようという企画です。
今回の視察場所は国道337号、通称道央圏連絡道路です。
こちらは国際的な交流拠点である新千歳空港や国際拠点港である苫小牧港、さらには重要港湾石狩湾新港への物流の効率化を目的とした道路です。
設計速度は80㎞/hで、高速道路クラスの走行性を供えます。
この道路全体は、西端の銭函ICから道央自動車道の江別東ICまでと新千歳空港から長沼南までの間は完成供用されていて、その真ん中で残っている江別東IC~長沼南の間で鋭意工事が進められています。
今回はこの現在工事中の現場の中でも枢要なポイントを3つほど視察して、発注元の開発局の担当者から現地の状況の説明を受けてきました。
今のところ既存の道路や水路をまたぐ橋や道路を囲むトンネルのような箱のコンクリート構造物を作ることを先行しているとのことで、動いている現場の高揚感が伝わってきました。
◆
そんななか、ある現場で特に紹介されたのが「定置式水平ジブクレーン」でした。
クレーンとはモノを釣り上げて移動させる建設機械ですが、一般的なのはタイヤやキャタピラでそれ自身移動ができて、必要なところに随時移動して釣り上げ作業をするものです。
ところが今回の定置式水平ジブクレーンは現場の中央に据え付けられてそれ自身は動かずにジブと呼ばれる横方向の腕を回転移動させながら釣り上げ作業を行います。
あまりお目にかかったことのない形のクレーンなので、「これは施工会社さんの所有物ですか?リースですか?」と質問をしたところ、「実は研究機関から貸与されて、実証実験中なのです」とのこと。
「何の実証実験ですか?」と追加質問をすると、「専用のオペレーターではなく、作業員が誰でも使えるクレーンなので、それで作業員の効率化につながるかどうかの実験です」というのです。
先ほど述べたタイヤの着いたような一般的なクレーン車では、クレーン操作は資格を有するオペレーターが行わなくてはなりません。
ところがこのタイプのクレーンは特別なクレーン資格が不要で、鉄筋工や大工など他の職種の人でも講習を受けて慣れれれば使った良いのだそう。
専用のオペレーターが要らない分、現場の人数を減らしてより効率的な工事ができるのではないかと言うのが目論見です。
「実際の現場の作業員さんたちの反応はどうですか?」と訊くと、「はじめは『なんで俺らがクレーン操作をしなくちゃいけないの?』という拒否反応がありました」とのこと。
今までやらなくてよいことをやらなくてはいけないというのにはやはり抵抗感があるのでしょう。
そして「しかし、実際に講習を受けて操作に慣れてもらえたら自分たちが使いたいときに人に頼まずやりたいことができるので『結構使えるな』という声が増えてきました」とも。
実際操作するリモコンも難しいレバー操作ではなく、まさにゲームセンターにあるクレーンゲームのようなレバーが二つの簡単な操作です。
釣り上げ装置は水平移動と垂直移動しかないので操作も簡単なのです。
「クレーンゲームが得意な子供でも扱えそうだね」というのが周りの反応ですが、子供たちに見せたりやらせたりすればきっと関心を寄せる子供たちって一定数はいそうな気がします。
建設業も担い手が不足してゆくなか、"多能工を養成する"ということに力を注ぎ始めてきたようです。
建設業に限らず、人口減少と人出不足には一人ひとりが多能工になることで社会を支えなくてはなるまい、と思っているので我が意を得たり、というところです。
一人ひとりがさらなる成長を求められる時代になりました。
新しいことに対していつまでも拒否と抵抗を示すのではなく、いかに自分の中に取り入れられるか、という積極的な生き方が必要になるでしょう。
生涯学習が必要な理由がまた一つ見つかりました。