建設のための機械関係の人たちと意見交換をする機会がありました。
道路を除雪するための機械の中心は「除雪トラック」という車両ですが、これを運転するオペレーターの将来的な不足が心配だ、という声がありました。
除雪車両は、トラックの前に雪を斜め左に跳ねのける"プラウ"という雪はね板を取り付けているほか、路面を整正するために胴体の真下にブレードと呼ばれる路面の雪を削る刃を取り付けているものです。
これを運転するのには非常に高度な運転技術が必要なのですが、そうした高度な技術を持つオペレーターが高齢化してだんだんに少なくなることが心配です。
そのためには若手のオペレーターに参入してもらわなくてはいけないのですが、並行して進められているのが省人化の動きです。
今までは除雪トラックにはオペレーターのほかに安全確認要員としてもう一人が乗り込む二人体制で除雪業務を行っていたのですが、これに要する人員が少なくて済むように除雪トラックの一人乗りでもできるような車が作られようとしています。
人数が少なくなることへの対応とすれば仕方がないのですが、人材育成の観点からは次世代のオペレーターを安全要因として横に乗せて、ベテランオペレーターが作業と同時にOJTで指導を行うという技術の伝承が行われていました。
一人乗りとなるとこの伝承の機会が奪われることにもなり、今までのような形とは異なるオペレーター育成がなされなくてはなりません。
新たな技能講習の実施により育成を進めようという取り組みが始まっているとのことで、高齢化を迎えるにあたっての後継者の育成は待ったなしです。
またこのことと同時に、乗車しているオペレーターが行うべき作業をできるだけ省力化するという試みもなされているのだそう。
例えば、現行の2名で乗車しているときは「車両運転」のほかに、「作業装置操作」「自社位置の把握」「(他車両や前方障害物の)安全確認」などを2名で行っています。
これを1名で行うときは、準天頂衛星「みちびき」によるガイドを得て精度の高い位置情報を与えられるほか、位置によって例えば雪を吹き飛ばす方向を自動化するようなことも考えられています。
またホワイトアウトで前が見えないというときも映像鮮明化技術によってモニターには前にあるものが見えるような技術とかAIを用いた物体検知技術も日進月歩。
こうした技術の総動員で省力化と省人化を進めて、生活レベルの安定化を図ろうとしています。
【北海道開発局提供 「除雪現場の効率化に向けたi-Snowの実証実験 ~ 令和3年度」
https://www.youtube.com/watch?v=E4B01gSqngY
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ところが併せて、そうした除雪機械の高騰や納品の遅れなどについてメーカーから悲鳴にも近い声が上がりました。
曰く「ウクライナ戦争による半導体の不足やコロナによる作業進捗の遅れがあり、予算が確定してから注文を受けても、一年以内には納車できない状況が常態化している」と言う声です。
これについて発注者側では「複数年度にまたがる国債の制度を活用して2か年にわたる契約を準備中」ということでした。
しかしさらには「ロータリー車のエンジンは海外のものを使用せざるを得ないのですが、上記の理由に加えてさらにコンテナ不足という要素が加わって、海外メーカーから『この種のエンジンは注文してから納品まで2年かかる』と言われておりこれはもう縮まらない」という状況や「原価が跳ね上がり、当初見積もりで出した値段では作れない」という声も紹介されました。
納品の時期や価格高騰など、厳しい条件が公共事業も襲っています。
聞くところによるとある自治体では「雪が降ると苦情の電話で用意している20回線が埋まり、職員はその対応に追われる」そうで、苦情を受けてもどうにもならない状況に頭を抱えているそうです。
利用者からはこうした現実を乗り越えて社会を維持しているエッセンシャルワーカーの人たちに精神的な応援をしてほしいものです。