昨日の嵐で道路には木の葉が落ちて一面の絨毯です。やっと冬らしくなってきたようですよ。
さて今日は
■コンパクトシティの本質と戦略 の1本です。
【コンパクトシティの本質と戦略】
午後に北海道経産局主催の中心市街地活性化フォーラムに参加した。
会場は全日空ホテルでフォーラムの副題は「まちづくりに必要なものは何か?~いま求められる自立と戦略」である。
広い会場には約300人ほどの聴衆が集まっている。今日の講師は日本投資政策銀行参事役の藻谷浩介氏と、タウンマネージャーとしてご活躍中の村橋保春さんのお二人で、なかなかの人気ぶりだ。
私のお目当ては前半の藻谷浩介さんで、まだ40代前半という若さにもかかわらず日本中を股にかけて年間370件以上の講演会を行い、政府の各種委員も歴任しつつまちづくりの真実を説いて回っている、いま日本でも有数の元気ある講師である。
藻谷さんの自慢は、およそ日本中の自治体を自費で何回も回っているということである。だから講演の端々に自治体という自治体のちょっとした小ネタが挟まれていて、「良くそこまで知っているなあ」と感心するばかりである。
藻谷さんは私が掛川にいた間に一度講演に訪れてきてくださった事があって、その時にも講演会場までの短い時間を利用して市内や周辺を回られたと聞いた。
そういう地道な現場主義が彼の信条であり、それととともにデータから見た都市間比較によって、まちづくりのもっともらしい噂を排除して、「正しい見方をせよ!」と説いて歩く伝道師のようである。
会場は約300人ほどの聴衆が集まっている。歯切れの良いトークパフォーマンスが今日も楽しみだ。
* * * *
講演はたいてい質問を聴衆にするところから始まる。今日の質問は、「正しいのはどれとどれ?」と題して、聴衆に質問を出して正しいと思うかどうかを尋ねるやり方から始まる。
質問は例えば「少子化が進んで『失われた10年』と言われる90年代には毎年の出生者数が2割も減り、これが原因で年金の破綻が懸念される」というようなもので、一応巷(ちまた)で言われていそうな事柄になっている。
「これを正しいと思う人は挙手をしてください」「これが間違いだと思う人は挙手をお願いします」と壇上から質問をしたところ、「二択なのにどちらかに手を挙げた人は3割しかいません。そういう参加意識のないような事ではまちづくりはつとまりません!出張で来られた人は出張旅費をお返しなさい!」と厳しい言葉から始まった。
特に北海道に限った事でもないだろうが、我々は講演会などで人の話を聞くというときに、半分は興味を持っているがもう半分で馬鹿にしている部分があるようで、壇上からの質問にも真剣に答える人は案外少ないものだ。
しかしそういう参加意識が足りないようでは「一事が万事」であり、なにごとにおいても成功はおぼつかないだろう。藻谷さんはそのあたりの聴衆の心情をずばりと指摘してくれた。
事において真剣になれなければ聞かなければよいのだ。そのくらいの真剣さが、まちづくりの場面においても必要なのだ。
* * * *
今日の講演会はコンパクトシティの本質というタイトルであったが、いつもながら市の経済状況と町の現状は必ずしも一致しないという典型的な例として、景気の良い愛知県刈谷市と長崎県佐世保市の例が示された。
前者の刈谷市はトヨタ自動車関連の本社がいくつもある町で税収はものすごく多くて豊かな町なのに、中心商店街が廃れて死んでしまった町の代表である。
逆に佐世保市は造船などというやや時代から取り残された斜陽産業しかないのにもかかわらず、まちなかには1キロにわたる商店街がいまでも元気に残っているという点で面白いのだ。
藻谷さんによると、佐世保市でも商店街に歩いているのは周辺の商圏のわずか1/20だという。つまり5%の人に指示してさえもらえば、商店街は生き残れるのだという。
むやみにターゲットも分からず大衆を相手にしたような商売では郊外のショッピングセンターにかなわないのだが、まちづくりの形がそれを可能にするという。
それを藻谷さんは「シナジー効果」つまり、「相乗効果によるにぎわい効果」だと説明してくれる。すなわち、病院、学校、役場、デパートなど多様な施設
が狭い範囲にぎゅっと詰まっている事が相乗効果を生み出してにぎわいを生むのだという分析である。
日本の行政は縦割りになってしまって、それぞれの都合で傘下の施設を郊外へ郊外へとばらまいた結果、それらが互いに近くにある事で生じていたにぎわい効果を殺してしまったのだという。
日本はいよいよ人口減少社会に突入するのだから、これまでのような人口が増えるという前提によるまちづくりから早く脱却して、お金がかからず安心して投資出来るようなコンパクトシティづくりを目指さなくてはならないというのが藻谷さんの主張である。
まちづくりの一つの面は「富蓄の問題」で、財政的に豊かな内にしっかりといつまでも残るような財産となりうる施設にしっかりと投資をして置くべきなのだという。
小樽の運河や倉庫群はその代表事例で、そのお陰でいまの小樽観光があるし、逆に豊かだったときに安普請の炭住しか作りえなかった多くの炭坑町は悲しい惨状を呈している。
つまりコンパクトシティとは、投資家たちが「ここならば維持運営が確実で投資するに値する」と考える狭い範囲を決めて、そこだけはしっかりやり続けるということなのだ、と氏は言う。その安心感がまちづくりを促進するのだと。
* * * *
そして現在の中心市街地でその動きを一番邪魔する3文字があるという。
「なんだと思います?この三文字とは…、それは地権者なのです」というのが彼の答え。
つまり「郊外から戻って来たい人や事業者を受け入れられない、市街地の地権者の無知・無自覚・無能」こそが商店街の活性化を阻む最大の要因であり、これを行政も放置して責任も放棄しているのだという。
その悪循環から脱出する方法として藻谷さんは、「土地は買わずに、地権者に少ないけれどもメリットを発生し続けるように借りる」ということが良いと言い、またどうでも良いと思っている地権者は放っておいて、少しでも目先が利いて話の通じる地権者を相手にして、先にそういう人たちに対するメリットを見せつけてやるやり方を続ける事で、替わってもらうのを待つのが一番、なのだそうだ。
要は資格も能力もある人に志が足りないのが現在の中心市街地・中心商店街の問題だし、また客のニーズに応えようとする努力の不足もまたそれに拍車をかけている。
地域との関わりが薄れてしまった財産家はあるいみ質が悪いと言えるだろう。そのためにも、切れてしまった関わりを取り戻すところから始めなくてはなるまい。
結局冒頭の挙手をしない精神が蔓延している限り、まちづくりの成功などおぼつかないということだ。
目の前の一瞬に積極的に関わって行く精神とその継続こそがまちづくり成功のための秘訣のようだ。
久しぶりに藻谷節を腹一杯聞かされて、終わった後の質問タイムのための質問を考えそびれてしまった。
別の席に座っていた知人のSさんからは、「質問タイムに小松さんの手が上がらなかったので、『今日は来ていないんだな』と思いましたよ」と皮肉を言われてしまった。
しかし今日は久しぶりに余計な事を考えずにトークパフォーマンスを楽しんでしまったのだろう。
ははは、言い訳かな。でも本当に面白かった。今度はまた道内の別の町でもお願いします。また聴きに伺います。

さて今日は
■コンパクトシティの本質と戦略 の1本です。
【コンパクトシティの本質と戦略】
午後に北海道経産局主催の中心市街地活性化フォーラムに参加した。
会場は全日空ホテルでフォーラムの副題は「まちづくりに必要なものは何か?~いま求められる自立と戦略」である。
広い会場には約300人ほどの聴衆が集まっている。今日の講師は日本投資政策銀行参事役の藻谷浩介氏と、タウンマネージャーとしてご活躍中の村橋保春さんのお二人で、なかなかの人気ぶりだ。
私のお目当ては前半の藻谷浩介さんで、まだ40代前半という若さにもかかわらず日本中を股にかけて年間370件以上の講演会を行い、政府の各種委員も歴任しつつまちづくりの真実を説いて回っている、いま日本でも有数の元気ある講師である。
藻谷さんの自慢は、およそ日本中の自治体を自費で何回も回っているということである。だから講演の端々に自治体という自治体のちょっとした小ネタが挟まれていて、「良くそこまで知っているなあ」と感心するばかりである。
藻谷さんは私が掛川にいた間に一度講演に訪れてきてくださった事があって、その時にも講演会場までの短い時間を利用して市内や周辺を回られたと聞いた。
そういう地道な現場主義が彼の信条であり、それととともにデータから見た都市間比較によって、まちづくりのもっともらしい噂を排除して、「正しい見方をせよ!」と説いて歩く伝道師のようである。
会場は約300人ほどの聴衆が集まっている。歯切れの良いトークパフォーマンスが今日も楽しみだ。
* * * *
講演はたいてい質問を聴衆にするところから始まる。今日の質問は、「正しいのはどれとどれ?」と題して、聴衆に質問を出して正しいと思うかどうかを尋ねるやり方から始まる。
質問は例えば「少子化が進んで『失われた10年』と言われる90年代には毎年の出生者数が2割も減り、これが原因で年金の破綻が懸念される」というようなもので、一応巷(ちまた)で言われていそうな事柄になっている。
「これを正しいと思う人は挙手をしてください」「これが間違いだと思う人は挙手をお願いします」と壇上から質問をしたところ、「二択なのにどちらかに手を挙げた人は3割しかいません。そういう参加意識のないような事ではまちづくりはつとまりません!出張で来られた人は出張旅費をお返しなさい!」と厳しい言葉から始まった。
特に北海道に限った事でもないだろうが、我々は講演会などで人の話を聞くというときに、半分は興味を持っているがもう半分で馬鹿にしている部分があるようで、壇上からの質問にも真剣に答える人は案外少ないものだ。
しかしそういう参加意識が足りないようでは「一事が万事」であり、なにごとにおいても成功はおぼつかないだろう。藻谷さんはそのあたりの聴衆の心情をずばりと指摘してくれた。
事において真剣になれなければ聞かなければよいのだ。そのくらいの真剣さが、まちづくりの場面においても必要なのだ。
* * * *
今日の講演会はコンパクトシティの本質というタイトルであったが、いつもながら市の経済状況と町の現状は必ずしも一致しないという典型的な例として、景気の良い愛知県刈谷市と長崎県佐世保市の例が示された。
前者の刈谷市はトヨタ自動車関連の本社がいくつもある町で税収はものすごく多くて豊かな町なのに、中心商店街が廃れて死んでしまった町の代表である。
逆に佐世保市は造船などというやや時代から取り残された斜陽産業しかないのにもかかわらず、まちなかには1キロにわたる商店街がいまでも元気に残っているという点で面白いのだ。
藻谷さんによると、佐世保市でも商店街に歩いているのは周辺の商圏のわずか1/20だという。つまり5%の人に指示してさえもらえば、商店街は生き残れるのだという。
むやみにターゲットも分からず大衆を相手にしたような商売では郊外のショッピングセンターにかなわないのだが、まちづくりの形がそれを可能にするという。
それを藻谷さんは「シナジー効果」つまり、「相乗効果によるにぎわい効果」だと説明してくれる。すなわち、病院、学校、役場、デパートなど多様な施設
が狭い範囲にぎゅっと詰まっている事が相乗効果を生み出してにぎわいを生むのだという分析である。
日本の行政は縦割りになってしまって、それぞれの都合で傘下の施設を郊外へ郊外へとばらまいた結果、それらが互いに近くにある事で生じていたにぎわい効果を殺してしまったのだという。
日本はいよいよ人口減少社会に突入するのだから、これまでのような人口が増えるという前提によるまちづくりから早く脱却して、お金がかからず安心して投資出来るようなコンパクトシティづくりを目指さなくてはならないというのが藻谷さんの主張である。
まちづくりの一つの面は「富蓄の問題」で、財政的に豊かな内にしっかりといつまでも残るような財産となりうる施設にしっかりと投資をして置くべきなのだという。
小樽の運河や倉庫群はその代表事例で、そのお陰でいまの小樽観光があるし、逆に豊かだったときに安普請の炭住しか作りえなかった多くの炭坑町は悲しい惨状を呈している。
つまりコンパクトシティとは、投資家たちが「ここならば維持運営が確実で投資するに値する」と考える狭い範囲を決めて、そこだけはしっかりやり続けるということなのだ、と氏は言う。その安心感がまちづくりを促進するのだと。
* * * *
そして現在の中心市街地でその動きを一番邪魔する3文字があるという。
「なんだと思います?この三文字とは…、それは地権者なのです」というのが彼の答え。
つまり「郊外から戻って来たい人や事業者を受け入れられない、市街地の地権者の無知・無自覚・無能」こそが商店街の活性化を阻む最大の要因であり、これを行政も放置して責任も放棄しているのだという。
その悪循環から脱出する方法として藻谷さんは、「土地は買わずに、地権者に少ないけれどもメリットを発生し続けるように借りる」ということが良いと言い、またどうでも良いと思っている地権者は放っておいて、少しでも目先が利いて話の通じる地権者を相手にして、先にそういう人たちに対するメリットを見せつけてやるやり方を続ける事で、替わってもらうのを待つのが一番、なのだそうだ。
要は資格も能力もある人に志が足りないのが現在の中心市街地・中心商店街の問題だし、また客のニーズに応えようとする努力の不足もまたそれに拍車をかけている。
地域との関わりが薄れてしまった財産家はあるいみ質が悪いと言えるだろう。そのためにも、切れてしまった関わりを取り戻すところから始めなくてはなるまい。
結局冒頭の挙手をしない精神が蔓延している限り、まちづくりの成功などおぼつかないということだ。
目の前の一瞬に積極的に関わって行く精神とその継続こそがまちづくり成功のための秘訣のようだ。
久しぶりに藻谷節を腹一杯聞かされて、終わった後の質問タイムのための質問を考えそびれてしまった。
別の席に座っていた知人のSさんからは、「質問タイムに小松さんの手が上がらなかったので、『今日は来ていないんだな』と思いましたよ」と皮肉を言われてしまった。
しかし今日は久しぶりに余計な事を考えずにトークパフォーマンスを楽しんでしまったのだろう。
ははは、言い訳かな。でも本当に面白かった。今度はまた道内の別の町でもお願いします。また聴きに伺います。
