【内臓までは意志で動かせない】
「今の国会議員さんたちって、官僚になりたくてなれなかった人が多いようなイメージがあるんです」
これは人づてに聞いたある高級官僚の感想。その意味するところは、「本来政治家と官僚の間にはそれぞれの持ち場と期待される役回りがあるはずです。政治家の役回りは、大きな方針を立ててたとえ国民やマスコミが反対したとしても将来のためにはこれをやるべきだ、という決断をすること。そしてその対極的な判断がなされれば、それに向かって法律や制度を作り予算を勝ち取って政策を実施するのが官僚の役目」というもの。
「それが、会議の場で『法律や制度はこうあるべきだ』というこまごましたところまで口を挟んでくることが多いのです。政治家さんたちにとって時間が無限にあるのだったらいくらでもそうした議論にお付き合いもできますが、お互いに時間は有限なのです」
「限られた時間の中で世の中を動かしてゆくためには、もっと大きな判断を責任を持って次々に下してほしい。そうすればそれを制度化するのは官僚の仕事です」
「提案をしろと言うなら提案もします。その裏付けとなる資料もつくります。しかしその提案に納得して一たび採用したならそこから先は採用した政治の責任です」
「政治主導が提案段階から政治家が行うべきものだ、となればものすごく大量の情報を短時間で処理しなくてはならず、それはいちいち考えていられる動作ではありません。とっさに体が先に動くような反射神経による動作が必要で、それはスポーツと同じで日頃の練習で鍛えられる体術なのです」
現実には、霞が関の官僚の皆さんたちは、組織単位で各自が良かれと思って勝手な動きをすることをきつく戒められているらしいので、指示待ちになりかけているのですが、その指示がなかなか降りてこないので動けなくなっているのだとも聞きます。
そういえばバルク港の指定の話なども目途が立たなくなってしまいました。決めるべきことはどんどん決めてほしいものですが。
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そういえば、以前にも動かせる筋肉と動かせない筋肉について書いたことを思い出しました。
「政治主導」ということの意味が「すべて脳が判断すること」と思ったとしたら大間違いで、脳は大きな判断のために活動すればよく、体の動きのほとんどはそれぞれの臓器や各細胞が良かれという方向に向かって自動的に働いているものなのです。
心臓の一拍一拍を「はい今!はい次!」と脳が考えていられるわけがないでしょ。
任せるところは任せる。そして任されることを意気に感じる。強い組織とはそういうものなのです。
【随意筋と不随意筋について】「知らないところでコツコツと」2011-11-04
http://bit.ly/lqeIjI