豊洲市場の問題がますます炎上しております。
「盛り土をする」と言ったはずなのに、そのとおりにせず専門家会議の了承も取らずに、建物の下に"地下空間"を作ったのがけしからん、という論調ですし、そこから派生して、その地下空間にたまった水から有害物質が検出されたとか、そもそも当初の目論見よりも大幅に工事費がかかったのは利権問題なのではないか、とか問題点もどんどん広がってい(るように見え)ます。
私個人としては、敷地全体を盛り土した方が下からの有害物質が上がってこないだろう、という有識者会議の意見は分かりますが、それはあくまでも有識者としてのアドバイスなので、最終責任は当局側にあり、最終判断と責任は都庁がとるべきだと思っています。
普通こういう場合に意見を仰ぐ専門家会議と言うのは、あくまでも外部の視点でアドバイスをするけれど最終的に責任のない存在であって、時間のない中で細かい修正点などを逐一報告して『了承してもらう』という立場にはないわけです。
最終的には『外部からの意見を踏まえて当局が判断し、それを議会がチェックする』ということしか意思決定の流れはないわけで、その前段に当局側としてできるだけ情報を公開したりより適切なやり方を模索する努力は欠かせないのですが、一方で判断を下すためには予算や時間、職員の労働力など様々な資源の制限があるわけで、そうした総合的な手続きが行われたものと思います。
まあ、「最終責任者が誰かわからなかったことが問題だ」ということが新しい問題探しの矛先になることも考えられますが、冷静に考えるとこれくらいの建物の地下に空間があることはほぼ常識で、誰が決めようが特に悩んだ末の決断などではなかったのではないか、とも考えられます。
実際、「豊洲地下空間、『作ったのは英知』 都の有識者会合で委員が絶賛に」という記事もあるくらい(http://news.livedoor.com/article/detail/12082352/)です。
ここはひとつ、説明責任の巧拙やいつだれが何を言ったかといった検証は二の次にして、地下空間の存在が本当に悪さをするものなのかということや、土の下からの汚染物質の滲み出しに対してそれを防げないような諸悪の根源なのかを検証してほしいと思います。
どうもその前段の事実確認や議会対応に時間を取られ過ぎて、本質的な問いと答えになかなか達しないのが残念に思います。マスコミの皆さんもぜひそこを検証してほしいものですね。
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さて、今日私が面白いと思ったのは、上記の「豊洲地下空間、『作ったのは英知』 都の有識者会合で委員が絶賛に」というネット記事の中の表現です。この中にこういうくだりがあります。
『…そもそも盛り土が1リューベ(立法メートル)当たり1万円だとして、盛り土をすれば100万リューベ分の100億円のほか、さらに掘って地下ピットを作るのに75万リューベ75億円かかる計算になり、総額で175億円もの出費になってしまうとした。』
この記者は(記事をチェックされる方も含めて)、"リューベ"という単位を知らなかったんだ、という驚きです。
この"リューベ"とは、体積の単位で「立方メートル」を「立米(りゅうべい)」と言っているものをそのまま聞き書きをしたのだと思いますし、「立方メートル」を「立法メートル」と書いているあたりにも、勘違いをしているということを十分に伺わせる書き方になっています。
知識って、言葉を正しく使うということは勿論ですが、その先には勉強した者だけがわかる、「語られないけれど常識になっている暗黙知の世界」があるものです。
懐かしい民主党政権下での事業仕分けの際に、素人の委員が「あなたの説明が私にわからないのは、あなたの説明が悪いから」という論理を振りかざしていましたが、それに違和感を持ったのは私だけではないでしょう。
その説明内容の是非は前提としたうえで高度な行政判断をしているのが各省庁の担当者の立場だったはずですが、前提まで含めて短時間で理解させたうえで判断の是非を問うというのは、説明者にとっては酷だなあ、と思ったのでした。
記者会見の場で「リューベってなんですか?」と基本的なことを質問する記者がいたとしたら、それも何も知らない国民の代表としての質問なのでしょうか。
この記事に怒ったり馬鹿にするつもりはありませんが、間違えるにしても面白い間違え方だなあと思ったので、自戒を込めて書き留めておこうと思います。何事によらず勉強って大切ですね。