【WOTAのホームページより】
先日ある会合で、水道の仕事に従事していたと言う方と話す機会がありました。
地震津波で被災した能登地方もそうですが、水道は上流の浄水施設から給水管を延々と整備してようやく末端で利用できるというインフラでありサービスです。
その整備と維持管理には大きな費用がかかり、その費用を賄うために水道料を利用者が払うというサービス提供と対価の関係が成立しています。
そうなると、利用者が減る、つまり人口減少下では利用料金が少なくなり施設を維持して水質の保たれた水を安定的に供給することがどんどん難しくなるでしょう。
そしてそれはもう、実際の過疎の村では現実になっていると、冒頭の水道担当者はおっしゃいます。
本州のある県の、川の上流のある村では、高齢化と過疎に伴って水道施設の維持が非常に困難になっているそうです。
そこでは浄水場の周辺で倒木があって水の供給が危うくなると、65歳~70歳と言う比較的若い高齢者が山道を登って浄水場の倒木を処理します。
それでも一部はもう水道の供給ができず、「湧き水に塩素を垂らして消毒して飲み水に使っています」というところすらあるそうです。
利用者減、管理する担当者も少なくなり経営も危ぶまれるという三重苦、四重苦の結果、自治体では水道事業を行政から切り離して民間に委ねるという取り組みがどんどん増えています。
それも一つの自治体だけではなく周辺の自治体がまとまって水道事業を手放すという事例が増えているのです。
政府(国土交通省)もこれを「ウォーターPPP」と名付けて、官民連携の「管理・更新一体マネジメント方式」として導入拡大を推し進めています。
それは上水道だけではなく、工業用水や下水道などの管で繋がるインフラに共通のことなのでこれらを一体化して管理することもできるような仕組みになっています。
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これが現実に増えているという実態を聞いて、「それと同じようなことが水道ではできて、道路管理ではなかなか進みません、どうお考えですか」と訊ねてみました。
すると答えは、「水道の民営化には、それまで行政が携わっていて実際にかかっていて管理に要する人件費は、民間事業に移行してもしっかりと積算で計上するという文化、あるいはコンセンサスができているんです。道路の利用はもともと無料ということから、維持管理にかかる人件費というものが認識されていないのではないでしょうか」というものでした。
水道の管理は人件費や機械経費、電気、修繕費などかかる費用を利用者が負担するので、もともと支出と収入という考え方が理解されやすいのですが、道路となると収入(あるいはそれに相当する便益効果)が理解しにくいところがあります。
どれくらい費用をかけたらどれくらいの利便や経済効果が得られるのかも判然としないところがあります。
インフラの民間管理化ということでいうと、道路管理よりも水道事業の方がより早く進みそうです。
ところで、上水道でも下水道のような管で繋ぐ「線形インフラ」は、整備計画があってその区域の末端まで整備をして供給をすることを目標とします。
しかし今日、一定の延長線の先にはもう利用者が少なくてこの先は管で繋いでも費用対効果が成立しないというところが増えています。
そんなところも管理者として責任をもって整備すべきかどうかということには議論があるでしょう。
利用者全員の負担が増えても責任を持つべきで切り捨てるな、という議論もある一方で、線と切り離してもサービスが提供できれば良いと割り切るという手もあります。
下水道でも、公共下水道として下水道管を繋げれば利用者が多い人口が密集しているところでは効率的ですが、遠方の「ポツンと一軒家」では経費倒れになるでしょう。
家庭の汚水をきれいにして環境に悪影響を与えないための技術・施設としては、合併浄化槽という単独あるいは数軒もまとめて設置すれば、そこで水をきれいにして外部に排水するという技術があります。
電気も、電線を延々とひかなくても太陽光や自然エネルギー利用でスタンドアロンで需給を賄うことがどんどん可能になりつつあります。
さすがに生活のための上水は無理だろう、と思ったら、冒頭の水道に詳しいその方は、「実は水もその場できれいにして再利用する技術が出始めているんです」と言います。
循環水システムの会社はWOTAというところだそうです。 https://wota.co.jp
これを使えば、なんと住宅単位で水の再生利用ができるといいます。
「ポツンと一軒家」には最適かもしれませんね。
人口減少や少子高齢化などのどうしようもない社会変化は、野心的な新しい技術と住民の連帯・協力で乗り越えてゆきましょう。
地域がまとまれるかどうか、自治体トップのリーダー力が問われてゆきそうです。