北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

二宮尊徳「湯船の教え」

2012-03-31 21:56:28 | Weblog
 釧路は朝から雨かと思ったら昼過ぎから雪に変わりました。

 気候が春めいてくると西高東低の冬型気圧配置が狂ってきて、これからが釧路は雪の季節。まだまだ油断はできません。

 さて昨日は今年度最後の平日。市役所では永年勤続表彰や退職辞令の発令など、年度末ならではの光景が繰り広げられました。

 日常の仕事でお世話になった先輩職員の多くが庁舎を去って行かれました。長年にわたる奉職本当にご苦労様でした。

 これまでのご厚情に改めて感謝申し上げます。
 
 
    ※     ※     ※     ※     ※




 さて、報徳の教えで飢饉の村々を救った二宮尊徳は、「富み栄え平和な村をつくるには、よく分を守って(分度)、持っているものを進んで差し出せ(推譲せよ)」と教えます。

 儒教ではそうした正しい自らの生き方を「仁」と言いますが、尊徳先生は、学者が難しい説明をしても良くわからない、と言ってこれを『湯船の教え』として分かりやすく説明してくれています。

 『湯船の教え』とは、「湯船の湯を見れば世の中の道理が分かる」というもの。

 つまり、「湯船の湯を手で自分の方へかき寄せれば、湯はこっちの方へ来るようだけれど、みんな向こうの方へ流れ帰ってしまう。これを向こうの方へ押してみれば、湯は向こうの方へ行くようだけれども、やはりこっちの方へ流れて帰る」

「少し押せば少し帰り、強く押せば強く帰る。これが天理なのだ」

「仁と言ったり、義と言ったりするのは、向こうへ押すときの名前であって、手前にかき寄せれば不仁になり不義になるのだから気をつけなさい」というのです。

 また、「人の体の組み立てを見るがよい。人間の手は自分の方へ向いて、自分のために便利にもできているが、また向こうの方へも向いて、向こうへ押せるようにもできている。これが人道の元なのだ」

「鳥獣の手はこれと違って、ただ自分の方へ向いて、自分に便利なようにしかできていない。だからして、人とむ荒れたからには、他人のために押す道がある」

「それを、我が身の方に手を向けて、自分のために取ることばかり一生懸命で、先の方に手を向けて他人のために押すことを忘れていたのでは、人であって人ではない。つまり鳥獣と同じことだ。なんと恥ずかしいことではないか。恥ずかしいばかりではなく、天理にたがうものだからついには滅亡する」

「だから私は常々、奪うに益なく譲るに益あり、これが天理なのだと教えているのだ」
(二宮翁夜話 第172話)



    ※     ※     ※     ※     ※


 
 退職される多くの方はまだまだ体も元気で時間もできることでしょう。

 市役所を離れたこれからも、健康に留意されつつ、市政を熟知した市民として豊かな地域社会づくりに貢献をしていただきたいと思います。

 まずはゆっくり温泉などでこれまでの疲れを落として、「湯船の教え」を思い出していただきたいものです。 

 本当にお疲れ様でした。
 
 
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成功体験こそが邪魔

2012-03-30 22:11:23 | Weblog

 【平成24年3月30日付日経】


 今朝の日本経済新聞の「経済教室」の紙面は、東北大学の柴田友厚先生による「企業、新技術適応の条件~『既存』『新規』の管理統轄を」という記事でした。

 記事は、世界を変えた三つのイノベーションは、トーマス・エジソンの電球、グラハム・ベルの電話、そしてジョージ・イーストマンのフィルムと言われる、としたうえで、そのイーストマン・コダックが経営破綻をした、というところから始まります。

 コダック社の経営ミスは、フィルムカメラの成功体験がデジタルカメラへの転換を遅らせた、というもの。

「成功した企業が新技術の台頭に直面して、現行技術を継続するのか、あるいは新技術に移行するのかという経営判断を迫られるのは、同社に限った話ではない」

 成功体験が大きく、その基幹技術で他を凌駕していればいるほど、自信を持っていればいるほど、新しい技術へ飛び込むことを躊躇しがちです。

 危険なことは、経営判断に大きな影響力があるトップリーダー自らが成功体験による自信をもっていること。

 ここでのミスは致命的なものになりがちです。
 

    ※     ※     ※     ※     ※


 渡部昇一著「日本の歴史」シリーズの第三巻目は、「戦乱と文化の興隆」というタイトルで戦国時代の応仁の乱から豊臣政権末期までを扱ったもの。


 【渡部昇一著「日本の歴史③」】



 豊臣秀吉が大陸へ進出して明の国を目標に挑戦へ侵攻した理由は後世の史家たちが様々な説を唱えていますが、著者の渡部先生は、「秀吉は若い時から明の国を取りに行く気持ちがあった」と言います。

 そのうえで、「注目すべきなのは、秀吉に(他の武将と異なり)シナに対する崇拝の気持ちが全くなかったこと」であり、その理由は「秀吉の情報源が、どうやら倭寇だったらしく、『シナなど恐るるに足りない」とすっかり思い込んだらしいのです。


 評論家の小林秀雄は、結果としては失敗だった秀吉の明侵攻という判断の誤りを、「秀吉が計算を誤ったのは、これが新しい事態だったからで、この新しい事態にあたっては彼の豊富な経験は何の役にも立たなかった。役に立たなかっただけではなく、事態を判断するのに大きな障碍となった。つまり判断を誤らせたのは、彼の豊富な経験から割り出した正確な知識そのものだった」と言っています。

 明侵攻での事態の新しさとは海軍というセンスで、秀吉にはこれが全く欠けていました。

 せいぜい輸送船という発想くらいはあったものの、水軍の船は性能で劣り、おまけに指揮官も不在でバラバラな戦いに終始しました。

 陸上では破竹の勢いで進む武将たちの一方で、水軍で戦うということを考えなかったために、後々十分な食料を運ぶことができず陸の武将たちも大変な戦いを強いられました。

 結果として戦いは秀吉の死によって収束してゆきますが、晩年の秀吉はもはやかつての輝きを失った老害でしかなく、トップリーダーでいることの自覚を客観視できる状態ではありませんでした。


    ※     ※     ※     ※     ※


 冒頭の柴田先生の日経紙上での論文には、こうした新技術への対応として、「既存事業と新規事業の双方を管理して、柔軟な資源配分をせよ」と主張します。

 訪れる社会変化を「新しい事態」を捕え、技術転換を果たせば、それを補完する技術は新しいビジネスを生み出す可能性が十分にあります。

 成功体験にこだわらずに自分自身を客観視し、戦略的な視点を持ち続けたいものです。

 やはり変わる勇気でしょうか。
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【おまけ】【超レアもの】アイスホッケーまりもっこり

2012-03-29 23:48:16 | Weblog
 阿寒湖のマリモにひっかけたユニークなご当地ゆるキャラの「まりもっこり」

 顔はマリモのように緑色で、しかも股間がもっこりしているという、一部にはひんしゅくを買いそうなキャラですが、実は隠れた人気があるのも事実。

 かつては女子フィギュアスケートの安藤美姫選手が気に入って取材の際に見せびらかしてくれたので、話題にもなりました。

 さて写真は、現在釧路市内で開催されている、全日本少年アイスホッケー大会〈中学生・男子の部〉に関連して作られたオリジナルのアイスホッケーまりもっこり。




 限定2000個の製造で、アイスホッケー会場となっている釧路アリーナで販売中です。

 毎回大人気で完売が続いていますが、今年も一般販売は明日限りで、残りはもう250個になったとか。どうぞお求めになりたい方はお急ぎください。

 さてこの中学生アイスホッケー大会ですが、昨年は東日本大震災の影響で中止になったもの。

 今年は東北三県の代表チームも参加してくれて本当にうれしいです。

 そんな東北を応援する意味も込められて、まりもっこりの背中には「KUSHIRO」と「絆」という文字が刻まれています。




 釧路での思い出を明日の糧にしていただきたいものです。

 頑張れ東北!ガンバレアイスホッケー少年たち!
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釧路市のホームページリニューアル大作戦

2012-03-29 23:45:37 | 釧路市ホームページ
 釧路市役所ではこの度、市のホームページを全面的にリニューアルすることにしました。

 既に先日、プロポーザル方式による業者さんの選定も終えており、具体の作業は新年度からとなります。

 まずはホームページに関するイメージについて業者さんと市側で共有するところから始めようと思いますが、私の問題意識はレイアウトや見かけのデザインだけの話ではありません。

 せっかくのホームページ大改造の機会なので、この際職員の情報発信意識の改革というところを大切にしたいと思っています。

 いくら業者さんの力を借りて綺麗なデザインのホームページでスタートできたとしても、その後のリニューアル意識や情報発信意識が形成されていなくては、やがて陳腐化してしまうのは火を見るより明らかです。

 まずは情報を発信することは市民に対しての責務であり、同時に釧路市を売り込む大きな役割を担う重要な行為なのだ、という価値観を様々な形で醸成したいと思います。

 そのためには、庁議や担当課長会議、担当者会議など各層に亘る会合に、私自身も積極的に関わって行くことでモチベーションの向上と維持を果たすつもり。こちらも逃げられません。


 次には目標を持とうと思います。

 目標は例えば、『全国一、全道一の自治体ホームページを目指す』といった具体的なものが良いでしょう。

 いろいろなランキングがあることでしょうが、全道一の自治体ホームページってどこなのでしょう?

 そしてそこのホームページが評価されている評価項目が何かを分析して、各項目の点数を上げる方策を具体的に積み上げてゆくというのはどうでしょう。

 まずは敵を知り己を知ることで、目標に追いつきたいものです。


  【情報発信とはなにか?】


    ※     ※     ※     ※     ※


 ホームページのコンテンツについては、約半年をかけて、現在のホームページのうち使えるコンテンツは移行し、不足あるいは内容が不備なものは新しく作り直すこととします。

 コンテンツの移行にあたっては、①情報を正確に伝えなくてはならない項目、②市民目線で分かりやすい情報提供を行うべき項目、③釧路に感情移入しても良い項目、などを峻別しながら、適切な情報発信を行いましょう。

 私の説く『生涯学習的』に言えば、『釧路というまちの【…とはなにか】を追及して、住もうが旅行に来ようが、釧路で過ごす時間を幸せな体験にするような情報提供』ということになるでしょうか。

 さながらプロジェクトマネージャーとして、こういう思いをどこまで実現できるか挑戦する意欲が俄然高まってきました。


    ※     ※     ※     ※     ※


 こんな話を市長としていたところ、先日地元アイスホッケーチームの日本製紙クレインズが今年の成績報告に来てくださった時に、『そうだ、市のホームページでもっとクレインズの露出を増やすようなことを考えてくれないか』という指示をいただきました。

 なるほど、日本中にはプロ野球やJリーグなど地元にプロチームがある自治体も多い中で、どうやって地元チームの応援をしているのでしょう。

 これまた新しいテーマをいただきました。

 こんなことを少しずつ共有しながらのホームページリニューアル大作戦、改めて作業は新年度にスタートです。

 担当するであろう職員は気を引き締めて来てくださいね。


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お金は喜んで払ってもらえ

2012-03-28 23:45:01 | Weblog
 市内の優良アスレチッククラブを訪ねて、最近の健康産業の動向を聞かせていただきました。

 こちらの経営者の方は、最近は高齢者の利用者が多いのですが、この高齢者を重要な顧客としていかに取り込むかは重要なポイントだと言います。

 経済が停滞している原因はお年寄りが将来に不安を抱いてあまりお金を使わなくなっていることも原因の一つと言われている以上、健康のためにお金を使ってもらえるような工夫が大切です。

 私は掛川で当時の市長さんから教わったことを思い出しました。



 
「相手がお年寄りだろうとそうでなくても、喜ばれてかつお金を支払っていただけるかということに関して、掛川でお世話になった元市長さんから面白いことを教えてもらったことを思い出しました。それは、お金の出し方五段階ということです」

「お金の出し方の五段階…ですか?」
「はい、それはお金の払うときの感情で、『いそいそ払う』、『ほのぼの払う』、『しみじみ払う』、『渋々払う』、『ぷりぷり払う』という五段階でした。『いそいそ』というのは早く払いたくて仕方がないという状況のことです。ディズニーランドの入り口でチケットを買うための列に並んでいる人は皆早く払って中に入りたくてたまらないことでしょう」

「なるほど」
「続いて、『ほのぼの払う』というのは、祖父母が孫にプレゼントをするようなものです。そのことが幸せだなあという感情が良く表れているでしょう。『しみじみ払う』のは美味しい料理の代金を払う感じでしょうか。お金に見合った対価が得られたようなものです」

「面白いですね、その段階が」
「『渋々払う』となると、そろそろ嫌な感情が出てきます。払わなくてはいけないと分かっているけれどどこかに不満がある、という状況です。そして最後の『ぷりぷり払う』になると、お金を出すのが嫌で取られるのが悔しくてたまらないというもの。最初の『いそいそ払う』とはいかにも対極にありますよね」

「なるほど、同じお金でもずいぶん払う時の感情が違いますね」
「そのとおりです。そしてこれを理解したうえで、いかに『ほのぼの』払ってくれるお客さんを『いそいそ』払ってくれるようにするか、あるいは『ぷりぷり』の方をどうやってせめて『しみじみ』までもっていけるか、というようなことを工夫したいものです」


 お金って払う時の感情ひとつで、幸せにも不幸にもなるものです。

 健康産業であれば、健康はお金で買えるということに上手なプレゼンテーションができれば、お金と得られる対価の関係は大きく変わります。

 お金で得られる幸せってなんでしょうね?

  
 
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「僕等がいた」の主演二人の凱旋舞台挨拶

2012-03-27 22:42:03 | Weblog
 釧路を舞台にした映画「僕等がいた」ですが、好調な出足に関係者一同ほっと胸をなでおろしています。

 観客動員数では、どうも「ドラえもん」を抜けないのですが、若い人たちの共感を得て邦画での二位をキープしているようです。

 そんな「僕等がいた」のメインキャストである生田斗真と吉高由里子による凱旋舞台挨拶が、今日釧路の映画館ワーナーマイカル釧路で行われました。

 ワーナーマイカル釧路では、現在「僕等がいた」を二つのスクリーンで上映していますが、今日は主演の二人が舞台挨拶をするというので予約で満席。受付では入場を待ちかねたファンが長蛇の列を作っていました。

 私と市長は、宣伝を担当する企画会社の口利きで、地元釧路に来ていただいたことを歓迎するという名目で、お二人にお土産を差し上げるということになり、映画館へと向かったもの。これは実にラッキーです。

 最初は裏方のバックヤードで待機していたのですが、「舞台挨拶を見ることはできますか?」と訊いてみたところ、「いいですよ」という何ともあっさりと交渉成立。

 会場へ行ってみると、もう400人はいる会場は満席で、本日二本目となる舞台挨拶を最前列のシートで見ることができました。


  【映画館は大混雑】


    ※     ※     ※     ※     ※


 MCの事前の盛り上げで会場が最高潮に達したところで、主演の二人が登場、会場は歓声に包まれました。




 生田斗真さんは全身黒のウェアで、また吉高由里子さんは気に呂のジャケットに黒のタイトスカートという大人びた服で映画とはまた違った雰囲気を醸し出していました。

 普段は写真撮影はダメなのですが、今日はファンサービスということで、二人の舞台挨拶が終わるまでは写真撮影がOKという破格の許可が出ました。

 釧路ロケの感想を訊ねられて吉高さんは、「釧路は空気が違うというか、心穏やかで優しい気持ちで一か月半のロケを終えることができました。今日は会場の席が空いていなくてホッとしています。舞台挨拶だからとかじゃなくて、いつもこんな風だったらいいな、と思います…要望です」と会場を笑わせました。

 またエキストラの皆さんへの感想を求められて、やはり吉高さんが、「学校生活での文化祭などは200~300人の皆さんに囲まれて、とても寒い中、誰も文句ひとつ言わずに『釧路の人は器が大きい』と思いました」とお礼の一言。

 併せて、ロケ在住期間中のエピソードとして、「エキストラの皆さんとハンカチ落としをしました(吉高さん)」とか、「ここのポスフールにも買い物に来ましたよ(生田さん)」という話を披露していました。



    ※     ※     ※     ※     ※


 最後に映画の注目点を訊ねられて吉高さんは、「釧路の町を原作に忠実に写したので、知っている背景もあると思います。冬ソナみたいに、釧路が観光ブームになるとイイナ」と答えて、会場からは「カワイイ!」という大歓声。

 また生田さんは、「映画館は人と作品とのコミュニケーションの場所だと思うので、映画を見ている間は恥ずかしがって、胸をキュンキュンさせて、このスクリーンに向きあってほしいと思います」と答えて会場からの大拍手を受けていました。

 さすがにどちらもスターですね。


    ※     ※     ※     ※     ※


 さて、市長と私は舞台挨拶が終わる寸前に会場を離れて楽屋前で待機。

 挨拶を終えた二人が到着するのを待ち構えて、地元名産のお菓子と、アイスホッケーをしている「マリモっこり」をプレゼントをして私もお二人と握手をすることができました。

 たまにはこういう余禄も良いですね。

 映画「僕等がいた」 釧路を前面に出しているこの映画を封切りで見るという幸せな時間を、少しでも多くの人と共有したいものです。 
 
 さて、今週末は映画館へ行きましょう!
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人の行動は変わるのか

2012-03-26 23:45:39 | Weblog
「小松さん、人間の欲にはいろいろありますよね」
「食欲、睡眠欲、性欲とかですか?」

「はい、その他にもいろいろありますが、歳を取っても最後まで衰えず逆にますます強くなる欲って何か知ってますか?」
「え~、なんでしょう?」

「それは説教欲なんだそうですよ。人間は歳を取るとどんどん説教をしたくなるんですって。自分の経験を伝えて同じ過ちを犯すなよ、という親心もあるのでしょうね」
「へ~、なるほど、ある意味分かりますね」



  【説教で人は変わるのか?】


    ※     ※     ※     ※     ※

 
 心理学の世界に、「行動変容」という単語があります。

 最近では交通計画の中にも行動変容で問題を解決しようという試みが増えています。

 例えば交通量が増加する予測があれば、これまでは道路を拡幅する都市計画を作って道路を整備するという形で交通渋滞を少なくするという問題解決策を取ってきました。

 ところが道路を拡幅するための費用があまりに高くなるようだと、もうそうした解決方法は現実的ではなくなります。

 もしも車で移動する人がある程度減らせれば交通渋滞は回避されるわけですから、車の増加に対応するのではなく人が電車や地下鉄に乗ることを誘導することが考えられます。

 料金設定や優遇策、あるいは自らの行動の追求が全体としては社会にとっての迷惑になるということを教えたりすることで、望ましい行動を取ってくれる人を増やそうというのです。

 つまり行動変容とは、習慣化された行動パターンを変えることを指すもので、トレーニングにおいては、自らの行動のパターンや傾向について自覚を高め、目標達成や能力開発に向けて行動を変えていくことを意味します。

 社会全体の最適を確保しようと思うときに、大衆に行動変容を起こしてもらうことが鍵になるのですが、それを果たす方法は決して単純なことではありません。


    ※     ※     ※     ※     ※


「小松さんは何のためにブログを書き続けているのですか?」とある人に訊かれました。

「面と向かってそう訊かれると答えにくいですが、読んでくれる人に何かが伝わって、やる気になったり実際の実践に踏み出してくれる人が現れることを心のどこかで期待しているのかもしれませんし、ただ単に生涯学習という視点で釧路という町の現実を記録し続けているということかもしれません」

 そう答えて気が付きました。なるほど、私がブログにも説教欲に通じる思いや願いが混ざっているのかもしれません。

 しかし、誰に何がどのように伝わるかはわかりませんが、まずは一隅を照らす作業を続けてみたいと思います。半分は生きている証として。

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「眼力」は経験のたまもの

2012-03-25 23:45:23 | Weblog



 まだ雪がちらつく釧路ですが、早朝から郊外の川へフライフィッシングに行ってきました。

 まだ水位は低いとあって、ウェイダーを着て川の中へ立ちこんで対岸を狙います。

 用意したラインは水に沈むシンキングラインで、緑色したマラブーというフライでチャレンジです。

 できるだけ対岸近くへ放り込もうと思いますが、シンキングラインではすぐに下流へ流れるのでなかなか意図したところにとどまってもらうわけにはいきません。

 師匠のHさんも、前半はシンキングラインを使っていました。しかしやはり魚がかからないので思うところあってシステムをルースニングという弛ませながら浮きでアタリを取る方法に変更。

 すると見事に第一投からヒットして、50cmオーバーのきれいなアメマスに出会うことができました。さすがは師匠です。


  【50オーバーのアメマスが!】


「魚がいないかと思いましたが、いるんですねえ」

 ちょっとしたシステムの違いで釣れなければ、魚はいないと思うところですが、いるなら顔を見せてもらいましょう。


「ルースニングのセットは持ってきていないんですか?」
「ええ、まだシンキングラインの季節かと思ったもので…、失敗ですね」

 まだまだ見えている範囲が狭いことを思い知りました。


    ※     ※     ※     ※     ※



 場面に応じた多様な対応の引き出しを揃えるには、ひとえに経験を重ねるしかありません。

 広い川の中でどのあたりになら魚がいそうかを見抜く目も直感に近い力。

 より細かな情報から的確に状況を把握する力を私は「眼力」と呼んでいますが、この眼力こそ経験が若さに勝る点です。

 私はこれを性能の良い天体望遠鏡に例えます。

 性能が悪いと一つの星にしか見えない天体も、性能の良い望遠鏡で見ると二つに分かれて見えるようになるものです。

 このように違いが分からないものの違いが見えるようになるのが「眼力」に外なりません。

 眼力は、もちろん時間をかけた経験によって培われますが、ただ見ることに時間をかけるだけではいけません。

 『見る』と同時に、常にその本質を見極めようと『考える』訓練を重ねること、この両輪をバランスよく働かせてこそ眼力が育ちます。

 いろいろな分野でより高い眼力を持てるかどうか。

 今生を心豊かに過ごすためのテーマではないでしょうか。  


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JAXA川口先生講演会~はやぶさの奇跡

2012-03-24 23:29:41 | Weblog



 小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーであるJAXA(宇宙航空研究開発機構)の川口淳一郎教授をお迎えしての講演会が生涯学習センターまなぼっとの大ホールで開催されました。

 お題は「小惑星探査機『はやぶさ』の奇跡」で、800人収容の大ホールはほぼ満席で、はやぶさと川口先生の人気の程が伺えます。

 実はJAXAと釧路は縁が深いのです。というのも、釧路市こども遊学館が2005年の開館以来JAXAと連携して取り組んでいる宇宙教育活動に対して当のJAXAから感謝状を受け取ったばかり。

 これは特に、北海道教育大学や釧路高専の教官たちと小中学校の理科教員が協力し合って、「道東科学教育支援ネットワーク(DoToねっと)」という組織を立ち上げて、JAXAの協力を得ながらこども遊学館を拠点として宇宙教育活動に熱心に取り組んでいることが評価されたものです。

 今回の講演会も、全国から講演要請を受けている川口先生に釧路を選んでいただけたのは、こうした地道な活動を評価されたものと、改めて釧路遊学館を中心とした地域教育活動に敬意を表したいと思います。


    ※     ※     ※     ※     ※


 さて、川口先生の講演は、冒頭にはやぶさが地球に帰還するというプロジェクトの成功を受けて、映画製作の企画が八本も来たというエピソードから始まりました。

 (そのうち減るだろう)と高をくくっていたのですが結局は3本も企画が残って、三本の映画が相次いで公開されました。

 もちろん、どの映画もはやぶさプロジェクトを取り巻く物語をそれぞれ独自の切り口で表現しています。

 事前の昼食会で川口先生に、「どの映画が一番お好みですか」と訊ねたところ、「それは私の口からは言わないことにしています(笑)」というお答え。

 なるほど、それを言っちゃあおしまい、かもしれませんね。


    ※     ※     ※     ※     ※

 
 小惑星へ行ってその構成物質を持ち帰るというプロジェクトの意味は、地球という星の構成を知る手掛かりになるということに外なりません。

 地球の内部は重力で熱くなりマントルという物質が液状になって対流をしています。液状の状態では総体的に重い物質が重力の中心に沈んで行き相対的に軽い物質が上に浮いてくるという状態を呼ぶことから、地球の表面では我々はごく軽い物質を見ていると言えます。

 では中心に何があるのか、ということになるとこれは直接見ることができないことから、地球外で組成が太陽系誕生のころと変わらないようなところから物質を持ち帰ってその組成を調べるのが有効で、はやぶさに期待された使命はまさにそこにあったのです。

 実は「はやぶさ」と名付けられた小惑星探査機ですが、もともとは「MUSES-C」という味気ないミッション名。

 それに愛称をつける段になって、「はやぶさ」ともう一つ対抗となる有力な候補があってそれは「ATOM」というものでした。

 言わずと知れた「鉄腕アトム」のアトムを思い起こさせますが、もう一つのこじつけは、「Asteroid Take-Out Misson」の頭文字で、この意味は「小惑星お持ち帰り計画」と呼べるような意味。

 しかし川口先生としては、惑星に着陸するや否や試料を確保してすぐに飛び立つその様子が、猛禽類のハヤブサがタッチ&ゴーで狩りをする様子に似ている点や、少し力強い名前にしたかったという思いなどからこちらの名前にしたかったのだそうです。

 
    ※     ※     ※     ※     ※


 この小惑星探査プロジェクトの意義は、地球上のどの国も挑戦したことのないチャレンジングなものに挑戦し、それを数多くのノウハウを詰め込んで果たした初めての例になったということだ、と川口先生は語ります。

 故障があっても直してあげることのできない遥か遠くにいる装置には、ターゲットとなる小惑星イトカワに照準を合わせて自力でタッチ&ゴーをする能力、そして何よりも、そこから地球めがけて帰還するということが求められました。

 途中で3つある姿勢制御装置のうち2つまでが故障したり、エンジンからの燃料漏れで姿勢が大きく崩れ、太陽電池による蓄電が難しくなりしばらく行方不明になったりと、そのたびに「もうだめか」という場面が繰り返されましたが、技術者の意地が工夫を呼び、それらを一つ一つクリアすることでミッションの成功に導きました。

 最終結果として帰還カプセルには小惑星イトカワの岩石の粉粒を取り込むこともできましたが、これは望外の余禄だとおっしゃいます。なによりも往復6億kmを旅して再び地球へ戻ってくることができたということが世界初という快挙になったのです。


    ※     ※     ※     ※     ※


 このプロジェクトから得られた教訓を川口先生は、「真似ではないこれまでにない独創的な創造性を発揮できたこと」と言い、そのためには単にちょっと調べればわかるような知識だけを詰め込むような教育は考え直して、創造性あふれる人間を育てるようなものに切り替えてほしい、と熱く語られました。

 「教科書には過去のことしか書かれていない」

 「我々に必要なことはこれからの未来を切り開く挑戦だ」

 
 「二番じゃなぜいけないのですか」という発言は、一番であろうとするチャレンジング精神、パイオニア精神を踏みにじる恥ずかしい言葉です。

 「我々は常に国境を超えた現代社会に貢献するためにチャレンジングでなくてはならない」、という川口先生の熱い思いがひしひしと伝わり、かつところどころのユーモアで会場を沸かせる素晴らしい講演でした。


 奇しくも新年度の予算案では、「はやぶさ2」の予算も要求されていますが、財務省ではこれを要求の半分に査定して今国会に臨んでいます。

 世界で初の称号を維持できる分野でそれを果たそうとする国家意思のないことを、国民を上げて恥ずかしいことだと思う気概が欲しいものです。

 夜空に散ったはやぶさへの涙を踏み台にして、日本人として未来に挑戦的な生き方を貫きたいものですね。
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市民後見人養成講座修了式 ~ フロントランナーで行こう

2012-03-23 23:45:30 | Weblog
 成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、判断能力の不十分な人を保護するために、一定の場合に本人の行為能力を制限するとともに、本人のために法律行為をおこない、または本人による法律行為を助ける者を選任する制度のこと。

 この成年後見人にはこれまで、弁護士や司法書士など「士」のつく職業による専門職後見人か、あるいは本人の子供など親族による親族後見人が多く選任されています。

 成年後見の主な役割としては、本人に代わっての財産管理と身上相談を受けて適切な判断を下すということが期待されています。 

 認知症や独居のお年寄り、さらに障害を持つ方が増えてゆく中で、成年後見人としてのスキルを持つ方の需要やこの制度の重要性は日増しに高まっています。

 厚生労働省ではこれらの諸課題に対応するために、専門職後見人以外の市民を含めた後見人を『市民後見人』と呼び、その支援体制を構築する必要があるという考えから市民後見推進事業を昨年ほ補正予算で措置して、全国37市町村でモデル事業を始めました。

 わが釧路市でもこの制度に手を挙げて採択となり、昨年10月から東京大学の宮内先生、斉藤先生の全面的支援を受けながら市民後見人育成のためのカリキュラムの作成するとともに、市民後見人としての活動を希望する市民を募集し、研修に参加していただきました。

 今日は、全部で7回にわたる講座を受講し終えた皆さん44名ひとり一人に修了証書を手渡し、これまでのご努力に敬意を表するとともに今後の活動と活躍に期待を込めたご挨拶をさせていただきました。




    ※     ※     ※     ※     ※


 市民後見人となる講座は、ご指導くださる宮内先生のキャラクターもありますが、かなり厳しいもので、たった半年で、市民後見制度の概要と意義に始まり、地域の社会資源の学習などの座学に加え、チーム学習で実際に申立書を作成してみたり、チーム学習の成果発表などかなりハードなものでした。

 一方この研修講座をサポートする市役所側も大車輪で動き回り、家庭裁判所へ飛び込んでこの事業への理解と協力を求めたり、実際に後見人を必要とする市民を募集するなど、市を上げてのサポートに努め、この半年の間に今現在で4事案で6人の市民後見人の誕生にまでこぎつけました。

 たった半年でここまでの成果を上げた釧路市の実績については宮内先生からも高い評価をいただき、「僕はあちこちで釧路を見習え、と言って回っていますよ」とのお言葉をいただきました。

 実際、同じようにこの市民後見推進モデル事業を受けている自治体の多くでも、カリキュラム整備を社会福祉協議会に丸投げしたり、せいぜい今年はカリキュラムの検討程度を目標にしている事例が多いと聞きます。

 それに対して、カリキュラム整備と同時に市民後見人養成と後見が必要な市民とのマッチングまで果たして家庭裁判所から市民後見人の認定を受けるまでに至っているというのは、誇るべき成果と言えるでしょう。

 担当者の一人は、「今回の受講修了者の皆さん全てがそのまま後見人として活動するのはまだまだスキルの面で難しいかもしれませんが、この経験を地域の中で紹介してくださるだけでも、関心を寄せることができると期待しています」と語ります。

 社会からこぼれ落ちる人を少しでも少なくしようという「社会的包摂」という言葉がまだまだ人口に膾炙しない中、実践活動として市民後見人を要請して、事案を増やすこうした活動をこれからもますます展開してゆかなくてはなりません。

 このモデル事業は新年度にも予定されていて釧路市では引き続き応募してゆく予定ですが、新年度も採択されてこのモデル事業のフロントランナーとして悩み・苦しみを後に続く自治体に伝える役回りを努めたいと思っています。

 生活保護率や高齢化率が高い、というのは地方都市にとって大きな悩みですが、そうした課題が大きいからこそ解決への必要性へのモチベーションも高まるというもの。

 課題先進都市は課題解決先進都市になれる、という見本を見せてあげたいものです。

 釧路の福祉は結構頑張っています。


 【全員で記念写真をパチリ】
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