「ドボジョ」という言葉があります。これは土木系の仕事をする女性のことで、元々は松本小夢さんという方が描いた少女漫画のタイトルです。
主人公は五人兄妹の末っ子である女性で、とあるきっかけで土木の現場に飛び込んでゆく物語り。
このタイトルが「ドボジョ」だったことと、折しも建設現場でもっと女性にも活躍してもらわないと建設技術者が足りないという建設業の問題意識、さらに安倍政権が女性の社会進出を促す政策をとろうとしていることなどが相乗的にあいまって、女性土木技術者をドボジョという愛称で呼び、女性にもっと建設業の世界に入ってもらおうという活動が活発になっています。
こうしたある種の女性の集団に愛称をつけることは割と好まれていて、山登りが好きな女性を「山ガール」、森林浴が好きな女性を「森ガール」と呼ぶように、女性のトラック運転手を「トラガール」と呼んだりします。
9月には、トラガールとドボジョが安倍総理と面会を果たし、女性の建設現場への進出をアピールするような話題も振りまきました。
女性には慣例にとらわれずに大いにこの世界でも活躍してくれる期待が高まっています。
◆
先日、職場のエレベーターで土木技術者の若い女性と一緒になった時に、「これからはあなたたちの時代だよ。ドボジョ、いいね!」と声をかけました。
すると、その女性は苦笑いしながら、「分かりますけど、その"ドボジョ"って言い方はなんとかならないでしょうか。どうもアニメの"ドロンジョ"に似ていたり、濁音が多いので清々しいイメージにならないような気がしてなんだか好きになれないんです」とややネガティブな反応。
なるほど、流行かもしれないけれど当の女性たちは「ドボジョ」と呼ばれることをポジティブに受け止めていないのかもしれないなあ、と感じたのでした。
そんなところへ昨日、日本建設連合会(日建連)が、建設現場で働く女性の愛称を「けんせつ小町」に決めたという記事が掲載されていました。
【yomiuri online】『建設現場で働く女性は「けんせつ小町』
日本建設業連合会は22日、建設現場で働く女性の愛称を「けんせつ小町」に決めたと発表した。
親しみやすい愛称でPRし、人手不足が続く建設現場に女性の働き手を呼び込みたい考えだ。
土木系の仕事や研究に携わる女性の愛称としては、すでに「ドボジョ」(土木系女子)が使われている。日建連は土木だけでなく、建築・設備工事などを含め広く建設現場で働く女性を表す愛称を先月から募集していた。
2900件を超える応募の中から、会員企業で働く17人の女性が選考した。美しく聡明(そうめい)な女性のイメージに加え、「建設」をひらがなで表記して親しみやすさも表現したという。
国土交通省と日建連など建設業5団体は、建設現場で働く女性を今後5年間で20万人に倍増させるために、職場環境の改善や企業の意識改革にも取り組もうとしている。
http://www.yomiuri.co.jp/job/news/20141023-OYT8T50056.html
◆
なるほど、"ドボジョ"改め"けんせつ小町"ときましたか。ドボジョにみられる濁音が一つもなく清々しい発音です。
でもちょっと長いかな。それにトトトンとくるようなリズム感に欠けるような気もします。
さて女性がこの言葉をどう受け止めて、言葉の流行り廃りを越えてこの世界に注目して飛び込んできてくれるでしょうか。
けんせつ小町。試されているのは言葉の力だけではなく、実際に女性を受け入れるための、障碍の除去だったり男性社会に残る偏見のように思います。
言葉はどうあれ、建設業では女性たちの活躍が大いに期待されています。