映画や演劇で遅い日が続いたけど、イラン情勢の続きをもう少し。何回かイランの歴史をたどってみたが、今回は核問題の初歩的な一般論を。まず、イランは「核の平和利用を進めるのは権利である」と主張している。この問題をどう考えればいいのか。
原子力発電は必然的に危険な核廃棄物を生み出す、それは10万年もの間人類が管理しなくてはならない。万一大事故が起こった時は、チェルノブイリや福島が示したように国境を越えた被害をもたらす。そのような原子力発電を行う権利は、本来どの国にもないのではないだろうか。
例えばそう言いたい気持ちもあるわけだけど、それは今現在の段階では国際的な通念とはなっていない。核拡散防止条約(NPT=Nuclear Non-Proliferation Treaty)に加盟している国は、国連安保理常任理事国の5か国には核兵器保有を認め、それ以外の加盟国には核兵器は認めないが、「原子力の平和利用」を認めている。この条約に入っていないのは、インド、パキスタン、イスラエルであり、脱退を表明したのが北朝鮮である。イランは加盟国。だから確かにイランが原子力発電を行うというだけなら、イランはその権利を持っている。ただし、それは国際原子力機関(IAEA)の査察をきちんと受けるということが条件となる。日本は査察をきちんと受けてきた。そして現在のIAEA事務局長は日本人の天野之弥(あまの・ゆきや)である。
最新の状況では、イランはその査察を拒否したままである。
「イランの核開発計画を検証するために現地入りしている国際原子力機関(IAEA)の高官級調査団は21日、核関連施設のパルチン軍事基地への立ち入りが認められないまま2日間の日程を終えた。IAEAの天野之弥事務局長は22日の声明で、「われわれは建設的な協議を進めようと努めてきたが、合意には至らなかった」とし、「核関連施設への立ち入り要請が認められず失望している」と述べた。」
これが数日前の最新ニュース。これではやはり「疑惑がある」と言われても仕方ない。
一方、NPT自体に未加盟のインド、パキスタン、イスラエルは核兵器保有国である。イスラエルは保有、非保有を明言しない政策を取っているが、核兵器保有国であることは公然の事実と言われている。条約自体に入っていないのだから、条約上の問題はない。でも、何だ、イスラエルの方が未加盟なのかと思うのもやむを得ないだろう。イスラエルは自分の方が持っていて、周辺の国が持つのは武力で阻止するのか。それが許されるのか?そういう問いを立てれば、もちろん答えは「許されない」なんだけど、イスラエルに対して国際的な制裁をするようなことはアメリカが拒否権を使うからできないことが判り切っている。イスラエルが武力行使すれば、(アメリカも含めて)非難はするだろうけど、実効性の期待できる対応は取れない。まあ、そういうことである。
一方、核兵器を持つこと自体、どの国に権利があるのか。アメリカやロシアには原爆や水爆を持つ権利があるのか。あるということは被爆国として言いたくないわけですけど。しかし、とりあえず5か国にだけ核兵器がある段階で「核拡散」はそこで止めようということになり、条約もできた。国内でも議論もあったが、日本も加盟した。だから日本としては、アメリカやロシアやイギリス、フランス、中国の核保有は(政治的な立場としては)認めていることになる。では、インドやパキスタンが核兵器を持っていいのか。それはダメだという非難が当初はあったけど、インドは経済発展してだんだん黙認されるようになり、その隣国であるパキスタンも何となくなあなあになりつつある。
では、北朝鮮だって、イランだって、核兵器を持ってもいいのではないか。それを非難する権利はどの国にあるのか。まあ、日本にはあるかもしれないが、イスラエルにはあるのか。リクツで考えるなら、そういうことになってくるし、頭が痛い。結局、はっきり言ってしまえば、北朝鮮とイランだからダメなんだよ。それは差別だ、イジメだと本人は言い張るかもしれないけど、これまで危ない暴力沙汰をいろいろしてきた経過があるから、この二人だけが校門で持ち物検査をされても差別だとは言えないというわけだ。第一、イランとパキスタンと北朝鮮は、核の「闇市場」で関係があるという説もある。自分で持ってるだけなら、「自衛」で通るかもしれない。でも、北朝鮮やイランは「独自の政治体制」から開発した核兵器を他に流しかねないと思われているわけだ。特に、イランはシリアを通じてレバノンのシーア組織ヒズボラに影響力も持っているのは否定できないから、イスラエルはそれを心配するのは無理もない事情がある。いや、それはないとは誰も否定できないし、そもそも核兵器を開発してないと言っても査察を拒否している以上疑われるわけである。(まあ、IAEAの成り立ち自体がアメリカの世界政策によるものではあるけど、現在の状況でIAEAの査察という制度を否定することはできない。)
じゃあ、どうするの?と言っても、ここでいくら僕が考えても名案は出てこない。そんなんで解決するならとっくに解決しているわけである。ただ、世界にはいくら大変な事態になっていても大きな問題にはなっていない地域紛争はいくらもある。ソマリアなんか最初は大問題になっていたが、中央政府がなくなってしまってもう20年近いが、忘れられたような状態が続いている。(最近ちょっと和解への動きがある。)イランとイスラエルの問題が世界にとって重大なのは、イランが原油の大生産国であるとともに、「ホルムズ海峡を封鎖する」などと脅しによる「瀬戸際外交」をしていることによる。その問題をどう考えるかは次の機会に。
原子力発電は必然的に危険な核廃棄物を生み出す、それは10万年もの間人類が管理しなくてはならない。万一大事故が起こった時は、チェルノブイリや福島が示したように国境を越えた被害をもたらす。そのような原子力発電を行う権利は、本来どの国にもないのではないだろうか。
例えばそう言いたい気持ちもあるわけだけど、それは今現在の段階では国際的な通念とはなっていない。核拡散防止条約(NPT=Nuclear Non-Proliferation Treaty)に加盟している国は、国連安保理常任理事国の5か国には核兵器保有を認め、それ以外の加盟国には核兵器は認めないが、「原子力の平和利用」を認めている。この条約に入っていないのは、インド、パキスタン、イスラエルであり、脱退を表明したのが北朝鮮である。イランは加盟国。だから確かにイランが原子力発電を行うというだけなら、イランはその権利を持っている。ただし、それは国際原子力機関(IAEA)の査察をきちんと受けるということが条件となる。日本は査察をきちんと受けてきた。そして現在のIAEA事務局長は日本人の天野之弥(あまの・ゆきや)である。
最新の状況では、イランはその査察を拒否したままである。
「イランの核開発計画を検証するために現地入りしている国際原子力機関(IAEA)の高官級調査団は21日、核関連施設のパルチン軍事基地への立ち入りが認められないまま2日間の日程を終えた。IAEAの天野之弥事務局長は22日の声明で、「われわれは建設的な協議を進めようと努めてきたが、合意には至らなかった」とし、「核関連施設への立ち入り要請が認められず失望している」と述べた。」
これが数日前の最新ニュース。これではやはり「疑惑がある」と言われても仕方ない。
一方、NPT自体に未加盟のインド、パキスタン、イスラエルは核兵器保有国である。イスラエルは保有、非保有を明言しない政策を取っているが、核兵器保有国であることは公然の事実と言われている。条約自体に入っていないのだから、条約上の問題はない。でも、何だ、イスラエルの方が未加盟なのかと思うのもやむを得ないだろう。イスラエルは自分の方が持っていて、周辺の国が持つのは武力で阻止するのか。それが許されるのか?そういう問いを立てれば、もちろん答えは「許されない」なんだけど、イスラエルに対して国際的な制裁をするようなことはアメリカが拒否権を使うからできないことが判り切っている。イスラエルが武力行使すれば、(アメリカも含めて)非難はするだろうけど、実効性の期待できる対応は取れない。まあ、そういうことである。
一方、核兵器を持つこと自体、どの国に権利があるのか。アメリカやロシアには原爆や水爆を持つ権利があるのか。あるということは被爆国として言いたくないわけですけど。しかし、とりあえず5か国にだけ核兵器がある段階で「核拡散」はそこで止めようということになり、条約もできた。国内でも議論もあったが、日本も加盟した。だから日本としては、アメリカやロシアやイギリス、フランス、中国の核保有は(政治的な立場としては)認めていることになる。では、インドやパキスタンが核兵器を持っていいのか。それはダメだという非難が当初はあったけど、インドは経済発展してだんだん黙認されるようになり、その隣国であるパキスタンも何となくなあなあになりつつある。
では、北朝鮮だって、イランだって、核兵器を持ってもいいのではないか。それを非難する権利はどの国にあるのか。まあ、日本にはあるかもしれないが、イスラエルにはあるのか。リクツで考えるなら、そういうことになってくるし、頭が痛い。結局、はっきり言ってしまえば、北朝鮮とイランだからダメなんだよ。それは差別だ、イジメだと本人は言い張るかもしれないけど、これまで危ない暴力沙汰をいろいろしてきた経過があるから、この二人だけが校門で持ち物検査をされても差別だとは言えないというわけだ。第一、イランとパキスタンと北朝鮮は、核の「闇市場」で関係があるという説もある。自分で持ってるだけなら、「自衛」で通るかもしれない。でも、北朝鮮やイランは「独自の政治体制」から開発した核兵器を他に流しかねないと思われているわけだ。特に、イランはシリアを通じてレバノンのシーア組織ヒズボラに影響力も持っているのは否定できないから、イスラエルはそれを心配するのは無理もない事情がある。いや、それはないとは誰も否定できないし、そもそも核兵器を開発してないと言っても査察を拒否している以上疑われるわけである。(まあ、IAEAの成り立ち自体がアメリカの世界政策によるものではあるけど、現在の状況でIAEAの査察という制度を否定することはできない。)
じゃあ、どうするの?と言っても、ここでいくら僕が考えても名案は出てこない。そんなんで解決するならとっくに解決しているわけである。ただ、世界にはいくら大変な事態になっていても大きな問題にはなっていない地域紛争はいくらもある。ソマリアなんか最初は大問題になっていたが、中央政府がなくなってしまってもう20年近いが、忘れられたような状態が続いている。(最近ちょっと和解への動きがある。)イランとイスラエルの問題が世界にとって重大なのは、イランが原油の大生産国であるとともに、「ホルムズ海峡を封鎖する」などと脅しによる「瀬戸際外交」をしていることによる。その問題をどう考えるかは次の機会に。