イランの核開発をめぐる緊張が高まっている。15日には、原子炉への国産燃料の装填が、アフマディネジャド大統領が出席して行われた。国連安保理常任理事国にドイツが加わった6か国による外交的解決をさぐる調停があるが、外交的解決の道はうまくいっていない。欧米による経済制裁が決まり、国際的圧力が高まっているが、それで解決につながるか、どうか。
イランは核兵器開発を目指していると見るイスラエルは、単独攻撃も辞さずとの姿勢を鮮明にしている。それに対して、攻撃に対しては、イランはホルムズ海峡を封鎖すると言っている。
これは大変な事態だけど、日本の関心は薄いのではないか。震災対応に追われる日本は、国内問題にとらわれ国際問題に対する危機意識を失っているのではないか。イラン危機は今年最大の問題であって、日本で今議論している問題は、イラン情勢の推移によりすべてが変わってしまう可能性がある。ホルムズ海峡封鎖が仮に起きれば、原油の大半をペルシア湾岸諸国に負っている日本経済は、決定的な悪影響を受ける。原油価格の暴騰が起きれば、原子力発電所の再稼働を避けられない。消費税増税ができる環境でもなくなり、沖縄の米軍基地返還どころではなくなる。つまり、国会や論壇で今議論されてる問題の前提がすべて崩れてしまうのだ。それどころか、ホルムズ海峡確保のための国際的行動に米国から参加を求められ、「集団的自衛権」の問題へ一挙に踏み込む事態さえ考えられる。
「社会保障の税の一体改革」を掲げる野田内閣も、解散・政権奪還を目指す自民党も、国の形を変えると豪語する「維新の会」も、そんなことを言ってる場合じゃない事態が迫っている可能性を自覚しているのか。また、反原発や普天間基地返還を主張する人々も、イラン情勢によってはすべてが変わるということを自覚しているだろうか。
ということで、イラン情勢の問題を数回にわたり考えることにする。
まず、イランが成功した「ウラン濃縮」について。天然ウランには、核分裂を起こすウラン235は0.7%しか含まれていない。だからこれを遠心分離機などを使い濃縮する。ウラン235の割合が、20パーセント以下を「低濃度」、20%以上を「高濃度」という。日本が保有する原子力発電所は、軽水炉型で「濃度2~5%程度の低濃縮ウラン」を用いる。(だから言うまでもないけど、原発と原爆は全く違う技術である。だけど、低濃縮ウランでも核分裂反応後に、原爆の原料であるプルトニウムができるということはある。)
イランは「核の平和利用」を主張するが、原発を作りたいだけなら「低濃縮ウラン」だけでいいわけである。ところが、今回の発表によれば、高性能の遠心分離器の開発に成功して、「20%の高濃縮ウラン」の国産化に成功した。原爆には、90%の濃縮ウランが必要だというからまだまだ核兵器自体は作れないわけだけど、後は遠心分離器の性能を高めて行けば濃縮度は高まっていく。まだ核兵器には直結しないけど、「高濃縮技術の国産化」を実現してしまったことは、「核兵器開発を目指しているのでは」と疑われても仕方ない。それは間違いない。イランの核は、インド・パキスタンや「北朝鮮」よりもはるかに危険であることも間違いない。
イスラエルは、1981年6月7日、当時イラクのフセイン政権が進めていたとされる核開発をつぶすために、イラクの原子炉を空爆した。ヨルダン、サウジアラビアの領空を侵犯して、他国の非軍事施設を攻撃する事態は、当然国連安保理で非難された。しかし、その後フセイン政権は核開発ができなくなった(ことが、大量破壊兵器を理由にした米英のイラク攻撃後に証明された)。だから、イスラエルにとっては、成功体験である。2007年のシリア空爆でも、シリアの原子炉を狙ったとされている。イスラエルの政治構造(比例代表制による自由選挙の民主主義)では、イランに強い姿勢を見せないと選挙で不利になる。
現在、イスラエルは右派のリクードのネタニヤフ首相が労働党などと連立を組むが不安定。労働党首のバラク国防相が先ごろ来日して、野田首相も自重を要請したが、NHKのインタビューでもバラク国防相は「あらゆる選択肢を排除しない」と明言していた。アメリカのパネッタ国防長官が、イスラエルの攻撃が近いという分析をしているという記事が2日のワシントンポストが報じた。それ以来、世界的にイスラエルのイラン攻撃をどうするかが大問題になっている。
今までにイラン国内で核物理学者が襲われるなどの事件が起こっているという。これはイスラエルの秘密機関モサドの犯行とされている。一方、13日にインドのニューデリー、15日にタイのバンコクで、イラン人によるイスラエル外交官をねらったと思われる爆発事件が起きている。まさに水面下で大変なことが起きている。イランの核兵器開発意欲は認められるし、イスラエルのイラン核施設への攻撃意思も確実だと僕は判断している。
イランは核兵器開発を目指していると見るイスラエルは、単独攻撃も辞さずとの姿勢を鮮明にしている。それに対して、攻撃に対しては、イランはホルムズ海峡を封鎖すると言っている。
これは大変な事態だけど、日本の関心は薄いのではないか。震災対応に追われる日本は、国内問題にとらわれ国際問題に対する危機意識を失っているのではないか。イラン危機は今年最大の問題であって、日本で今議論している問題は、イラン情勢の推移によりすべてが変わってしまう可能性がある。ホルムズ海峡封鎖が仮に起きれば、原油の大半をペルシア湾岸諸国に負っている日本経済は、決定的な悪影響を受ける。原油価格の暴騰が起きれば、原子力発電所の再稼働を避けられない。消費税増税ができる環境でもなくなり、沖縄の米軍基地返還どころではなくなる。つまり、国会や論壇で今議論されてる問題の前提がすべて崩れてしまうのだ。それどころか、ホルムズ海峡確保のための国際的行動に米国から参加を求められ、「集団的自衛権」の問題へ一挙に踏み込む事態さえ考えられる。
「社会保障の税の一体改革」を掲げる野田内閣も、解散・政権奪還を目指す自民党も、国の形を変えると豪語する「維新の会」も、そんなことを言ってる場合じゃない事態が迫っている可能性を自覚しているのか。また、反原発や普天間基地返還を主張する人々も、イラン情勢によってはすべてが変わるということを自覚しているだろうか。
ということで、イラン情勢の問題を数回にわたり考えることにする。
まず、イランが成功した「ウラン濃縮」について。天然ウランには、核分裂を起こすウラン235は0.7%しか含まれていない。だからこれを遠心分離機などを使い濃縮する。ウラン235の割合が、20パーセント以下を「低濃度」、20%以上を「高濃度」という。日本が保有する原子力発電所は、軽水炉型で「濃度2~5%程度の低濃縮ウラン」を用いる。(だから言うまでもないけど、原発と原爆は全く違う技術である。だけど、低濃縮ウランでも核分裂反応後に、原爆の原料であるプルトニウムができるということはある。)
イランは「核の平和利用」を主張するが、原発を作りたいだけなら「低濃縮ウラン」だけでいいわけである。ところが、今回の発表によれば、高性能の遠心分離器の開発に成功して、「20%の高濃縮ウラン」の国産化に成功した。原爆には、90%の濃縮ウランが必要だというからまだまだ核兵器自体は作れないわけだけど、後は遠心分離器の性能を高めて行けば濃縮度は高まっていく。まだ核兵器には直結しないけど、「高濃縮技術の国産化」を実現してしまったことは、「核兵器開発を目指しているのでは」と疑われても仕方ない。それは間違いない。イランの核は、インド・パキスタンや「北朝鮮」よりもはるかに危険であることも間違いない。
イスラエルは、1981年6月7日、当時イラクのフセイン政権が進めていたとされる核開発をつぶすために、イラクの原子炉を空爆した。ヨルダン、サウジアラビアの領空を侵犯して、他国の非軍事施設を攻撃する事態は、当然国連安保理で非難された。しかし、その後フセイン政権は核開発ができなくなった(ことが、大量破壊兵器を理由にした米英のイラク攻撃後に証明された)。だから、イスラエルにとっては、成功体験である。2007年のシリア空爆でも、シリアの原子炉を狙ったとされている。イスラエルの政治構造(比例代表制による自由選挙の民主主義)では、イランに強い姿勢を見せないと選挙で不利になる。
現在、イスラエルは右派のリクードのネタニヤフ首相が労働党などと連立を組むが不安定。労働党首のバラク国防相が先ごろ来日して、野田首相も自重を要請したが、NHKのインタビューでもバラク国防相は「あらゆる選択肢を排除しない」と明言していた。アメリカのパネッタ国防長官が、イスラエルの攻撃が近いという分析をしているという記事が2日のワシントンポストが報じた。それ以来、世界的にイスラエルのイラン攻撃をどうするかが大問題になっている。
今までにイラン国内で核物理学者が襲われるなどの事件が起こっているという。これはイスラエルの秘密機関モサドの犯行とされている。一方、13日にインドのニューデリー、15日にタイのバンコクで、イラン人によるイスラエル外交官をねらったと思われる爆発事件が起きている。まさに水面下で大変なことが起きている。イランの核兵器開発意欲は認められるし、イスラエルのイラン核施設への攻撃意思も確実だと僕は判断している。