尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

六本木高校でのお仕事②

2012年03月29日 21時39分46秒 |  〃 (教育問題一般)
 六本木高校では担任以外の校務分掌はずっと教務部だった。希望は常に一任だから別にいいんですけど。墨田川高校定時制で、突然校内事情で教務主任を発令されるまで、実は教務の経験はほとんどなかった。別になんだって全体の中の仕事なので、どこでもいいと思うんだけど、本当を言うと生活指導の生徒会や文化祭担当が好きかなあ。最後の10年くらいはずっと教務に釘付けで、そこはちょっと、ね。

 2番目に書くことは、だから教務関係になる。「履修指導に仮登録制度を作った」。これは多分、六本木時代に一番考えたことだと思う。六本木高校は大学みたいな完全単位制高校だから、生徒が自分で科目を希望して登録する。(まあ登録作業自体は担任が管理用コンピュータで行うわけだけど。)時間割を秋に作ってしまい、1月に示して登録作業を始める。その時点では教員の異動も決まってないから、どの授業を誰が担当するかは教師にも判らないのである。(判っていても生徒には伝えないけれど。)

 最初の2年くらいは生徒が少ないからよかったんだけど、だんだんいろいろな問題が出てきた。中学不登校生徒が急に全員来られるわけはなく、やはり高校でも通えない生徒はかなり多い。そうすると、それを取らないと卒業できないという「必履修科目」を希望する生徒が年々ふくれあがってくる。一方、六本木独自の「特色科目」というものも多いのだが、施設の都合で履修できる生徒が限られる。そういう場合、当該年度の「出席率」で落とすことになっているのだが、何人希望し誰が落ちるかが事前には判らないから、指導が難しい。落ちた後で他の科目に回ろうと思っても、その時はそちらも満杯ということもある。一方、ほとんど来ないような生徒もいるのだが、それらの生徒も呼んで登録しなければならない。

 ということで、僕が担当として考えたのは、出席率が50%を超える生徒だけを対象にして、最初に「仮登録」をさせてみるということだった。詳しい点は他にもあるけれど、一番の眼目はそこ。それで翌年度の特色授業の希望状況を見てみるとともに、希望が集中した必履修科目などは「2クラス開講」にするなどの手を打てる。特色科目を友達と希望して、片方が落とされてしまい登録できた生徒も来なくなるというようなことも、仮登録状況をうまく使えば減らせる。仮登録を変える必要がない生徒は大体はそのままで良いので、出席率が低い生徒には後から大体の傾向を見て空いている授業に誘導していける。というようなことを考え提案し、各年次等で議論しそれでやってみた。以後も続いているので、おおよその方向としてはかなりの改善だったのではないかと思う。ただ、履修登録にやりかたにベストはなく、生徒実態によりあった方策がないか考えていくことが大事だと思う。

 三つ目は「5・6年次の他部履修制限の緩和問題」。4年の学年主任としての仕事。誰もよく判ってなかった「5年、6年で卒業を目指す生徒の問題」が担任4年目になって、自分の中で大きな問題として浮上してきた。3分の1程度の生徒が3年で卒業し、大学進学や行事、部活動等で活躍する生徒は大体3卒が多い。だから教員の目は「3卒生徒」に向きやすい。正規の年限である4年を超えて6年まで在籍できるが、それらの生徒のことは数も少なくあまり意識されない。自分だって3年までは3卒生徒の進路しか頭になかった。今は、右目で3卒生徒を、左目で6年までいる生徒を見ることで、複眼的に理解していくことが大事なのではないかと思っている。なぜなら、「チャレンジスクール」という高校は、何よりも中学不登校生徒に高卒資格を与えることが最大の存在意義だと思うから。案外進学実績が良かったり、検定や部活動で活躍できる生徒が出てきたのは喜ばしいけれど、6年かかって卒業できた生徒がいるということも、教師としては大切にしたいと思うのである。

 本来僕が望んでいたことは、「転部制度」だった。卒業生が出た後は、朝や夜が大変な生徒は昼間部に集めてまとめて行くやりかたもあるのではないか。しかし、システム上の問題もあるので、それはやめて事実上の転部にあたる授業の他部履修制限の緩和の方で考えた。これはかなり慎重論があったけれど、「試行」ということでかなり頑張ってやらせてもらった。僕が大事に思うことは、この制度を使うかどうかではなく、生徒の生活実態も変わっていく中で生徒実態に合わせた指導のあり方もあって良いのではないかということである。あくまでも「生徒実態の理解」が先になければおかしいと思う。単に5年、6年はどこを取ってもいいという話ではなく。5年となると在校中に成人である。4年かけて卒業もできず、退学、転学もしない生徒はそれなりの事情がある。5年で30人、6年で10人位だろうと思う。うち卒業可能性が残るのは半数程度。後は辞める決心がつかないか、病気などで長くなっている生徒。後者は出来るだけ支援してあげたい。多分人生で一番高卒に近づく瞬間なのだから。高卒認定試験を受けて上級学校に進める生徒は高校をバイパスしても構わないけど。実際に2部中心に取らせて卒業できた生徒は数人いる。数は少ないけれども、考えて見た意味はあったかなと思っている。(この項続く。)
コメント
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