「人気お笑い芸人」の母親が生活保護を受けていたという問題で、25日に記者会見があった。その前後から冷静な議論ではなく、大騒動になっている。という話なんだけど、僕はそのネットの議論を全然見ていない。この問題に限らず、あまり見ないようにしている。大体、「人気お笑い芸人」だという「次長課長」を知らない。そんなに有名なコンビなの?まあ、テレビはほとんどニュースとスポーツしか見ないし。それはともかく、議論の本質がずれたまま、政治的に利用されているようで、ちゃんと書いておきたいと思っていた。しかし、生活保護についてよく知らないので、なかなか書けない。書けないままにするより、少し情報提供でいいかなと思って、書いておく。
まず、僕の基本的理解。「生活保護」受給者は増大しているけれど、不要なのにもらっている人より、必要なのに受けられていない人の方が圧倒的に多いはずだと思う。どんな制度であっても、また制度改正をいくら行っても、それを「悪用」されることは完全には防げないだろう。「悪用を完全に防ぐ」ためには、「善用」することも困難なほどに面倒な申請手続きと、情報の行政への集中が必要である。だから、「悪用」を防ぐ手だてを考えることも大事だけど、その制度が「善用」されているかをまず考えなくてはならない。僕が「受けられていない人の方が圧倒的に多い」と判断するのは、ホームレスの人々や「孤立死」する人がたくさんいるという事実があるからだ。
データを見てみると、95年に88万人だった受給者は、2012年3月現在で210万人。今年度の生活保護費は3兆7千億円。2010年度に明らかになった不正受給額は、130億円だという。
生活保護問題対策全国会議のブログに載せられている、「生活保護制度に関する冷静な報道と議論を求める緊急声明」(5.28)には、以下のように出ている。
①雇用の崩壊と高齢化の進展が深刻であるのに雇用保険や年金等の他の社会保障制度が極めて脆弱であるという社会の構造からして、生活保護利用者が増えるという今日の事態はて当然のことであること、
②生活保護制度利用者が増えたといっても利用率は1.6%に過ぎず、先進諸国(ドイツ9.7%、イギリス9.3%、フランス5.7%)に比べてむしろ異常に低いこと,
③「不正受給」は、金額ベースで0.4%弱で推移しているのに対して、捕捉率(生活保護利用資格のある人のうち現に利用している人の割合)は2~3割に過ぎず,むしろ必要な人に行きわたっていないこと(漏給)が大きな問題であることなど,生活保護制度利用者増加の原因となる事実が置き去りにされている。
そういう基本的な問題もあるんだけど、今回のケースがなんだか嫌な推移をしているのは、「親族の扶養」の問題が絡んでいるからである。親戚はもとより、親子関係(は原則扶養の義務はあるのは当然だけど)に、扶養できるかどうか行政が踏み込んで行くというのは、どうもいい気がしない。小宮山厚労相は、25日、「親族側に扶養が困難な理由を証明する義務を課す生活保護法改正を検討する」と述べている。これはすごく怖い話ではないか。
聞かれて全然かまわないという親子関係なら、初めから仕送りしているだろう。扶養の気持ちがあっても、忙しくて(残業や夜勤続きで)連絡もつかないという人はたくさんいるだろう。親は田舎で一人暮らし、子は都会で働いていて、親は携帯電話がない、子供は固定電話がない、ハガキ一枚書けばいいわけだけど、字を書くのもおっくうだという、別に関係が悪くなくてもそういう親子も多いのではないか。もちろん、親から逃れるために、故郷を捨て東京に出ている子もいるだろう。それより、親の側が、生活保護を受けないとやっていけないくらい貧困、病気になっても、子供の方で面倒な書類を書かないといけないと考えただけで、「申し訳ないから初めから申請しない」という例が増えることになるだろう。
昨日ニュースでやっていたが、相模原市の場合、1万件くらい扶養できるかの調査を送って、返信されてくるのは300通くらいしかないと言ってた。公務員の数を劇的に増やしでもしない限り、家族が扶養できるかの調査なんかできるわけがないだろう。
この扶養問題についても、先の生活保護問題対策全国会議のブログにある、「扶養義務と生活保護制度の関係の正しい理解と冷静な議論のために」(5.30)が諸外国の例もあげながら詳しく解説している。また、そのブログには、緊急記者会見の動画もアップされている。
先の緊急声明の最後の方を引用しておく。
「今年に入ってから全国で「餓死」「凍死」「孤立死」が相次いでいるが,目下の経済状況下で、雇用や他の社会保障制度の現状を改めることなく、放置したままで生活保護制度のみを切り縮めれば、餓死者・自殺者が続発し、犯罪も増え社会不安を招くことが目に見えている。」
細かい論点とデータなどは、リンク先のブログを是非見て下さい。
まず、僕の基本的理解。「生活保護」受給者は増大しているけれど、不要なのにもらっている人より、必要なのに受けられていない人の方が圧倒的に多いはずだと思う。どんな制度であっても、また制度改正をいくら行っても、それを「悪用」されることは完全には防げないだろう。「悪用を完全に防ぐ」ためには、「善用」することも困難なほどに面倒な申請手続きと、情報の行政への集中が必要である。だから、「悪用」を防ぐ手だてを考えることも大事だけど、その制度が「善用」されているかをまず考えなくてはならない。僕が「受けられていない人の方が圧倒的に多い」と判断するのは、ホームレスの人々や「孤立死」する人がたくさんいるという事実があるからだ。
データを見てみると、95年に88万人だった受給者は、2012年3月現在で210万人。今年度の生活保護費は3兆7千億円。2010年度に明らかになった不正受給額は、130億円だという。
生活保護問題対策全国会議のブログに載せられている、「生活保護制度に関する冷静な報道と議論を求める緊急声明」(5.28)には、以下のように出ている。
①雇用の崩壊と高齢化の進展が深刻であるのに雇用保険や年金等の他の社会保障制度が極めて脆弱であるという社会の構造からして、生活保護利用者が増えるという今日の事態はて当然のことであること、
②生活保護制度利用者が増えたといっても利用率は1.6%に過ぎず、先進諸国(ドイツ9.7%、イギリス9.3%、フランス5.7%)に比べてむしろ異常に低いこと,
③「不正受給」は、金額ベースで0.4%弱で推移しているのに対して、捕捉率(生活保護利用資格のある人のうち現に利用している人の割合)は2~3割に過ぎず,むしろ必要な人に行きわたっていないこと(漏給)が大きな問題であることなど,生活保護制度利用者増加の原因となる事実が置き去りにされている。
そういう基本的な問題もあるんだけど、今回のケースがなんだか嫌な推移をしているのは、「親族の扶養」の問題が絡んでいるからである。親戚はもとより、親子関係(は原則扶養の義務はあるのは当然だけど)に、扶養できるかどうか行政が踏み込んで行くというのは、どうもいい気がしない。小宮山厚労相は、25日、「親族側に扶養が困難な理由を証明する義務を課す生活保護法改正を検討する」と述べている。これはすごく怖い話ではないか。
聞かれて全然かまわないという親子関係なら、初めから仕送りしているだろう。扶養の気持ちがあっても、忙しくて(残業や夜勤続きで)連絡もつかないという人はたくさんいるだろう。親は田舎で一人暮らし、子は都会で働いていて、親は携帯電話がない、子供は固定電話がない、ハガキ一枚書けばいいわけだけど、字を書くのもおっくうだという、別に関係が悪くなくてもそういう親子も多いのではないか。もちろん、親から逃れるために、故郷を捨て東京に出ている子もいるだろう。それより、親の側が、生活保護を受けないとやっていけないくらい貧困、病気になっても、子供の方で面倒な書類を書かないといけないと考えただけで、「申し訳ないから初めから申請しない」という例が増えることになるだろう。
昨日ニュースでやっていたが、相模原市の場合、1万件くらい扶養できるかの調査を送って、返信されてくるのは300通くらいしかないと言ってた。公務員の数を劇的に増やしでもしない限り、家族が扶養できるかの調査なんかできるわけがないだろう。
この扶養問題についても、先の生活保護問題対策全国会議のブログにある、「扶養義務と生活保護制度の関係の正しい理解と冷静な議論のために」(5.30)が諸外国の例もあげながら詳しく解説している。また、そのブログには、緊急記者会見の動画もアップされている。
先の緊急声明の最後の方を引用しておく。
「今年に入ってから全国で「餓死」「凍死」「孤立死」が相次いでいるが,目下の経済状況下で、雇用や他の社会保障制度の現状を改めることなく、放置したままで生活保護制度のみを切り縮めれば、餓死者・自殺者が続発し、犯罪も増え社会不安を招くことが目に見えている。」
細かい論点とデータなどは、リンク先のブログを是非見て下さい。