尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

有権者登録制度はいるか-選挙制度論議④

2013年06月10日 00時20分11秒 |  〃  (選挙)
 東京都小平市で、都の道路計画の見直しを求める住民投票があったが(5月26日)、投票率が50%に届かなかったので不成立となった。東京初の住民投票だったわけだが、投票率は35.17%だった。なお、今年の4月7日に行われた市長選挙の投票率は37.28%。過去の選挙を調べると、国政選挙や党一地方選はもう少し高いようだが、前々回の市長選挙も39.30%だった。都市部で、地方自治体の選挙が盛り上がらないのはある意味で仕方ない。住民の「住民意識」が少ないんだから。

 原発や産廃処理場、あるいは市町村の合併などで地方の町で住民投票が行われたことが何度かある。中には成立要件に投票率50%があり不成立となった住民投票もあった。しかし、日本最初の住民投票条例を作って行われた住民投票である、新潟県巻町(現新潟市)の巻原発をめぐる住民投票(1996年8月)では、投票率は89%だった。(反対が61%。後に原発計画は断念。)ホントに住民皆が自分のふるさと意識があれば、このくらいは行くのである。そこでは「先祖代々住む町」であるのに対し、都市部では「たまたまマンションやアパートがあった」から住んでいる人も多い。どこの会社に入社できたかの方が大事で、丸の内の会社なら東京の東の方が近く、新宿の会社なら小田急、京王、西武新宿線なんかの沿線が近い。たまたま住んだだけで、そのうち一軒家を買うか、都心のマンションを買うか。国民意識はあるから国政選挙は行く、だけど市区長選は関心がない。それでも市長、区長の名前ぐらいはは知ってるかもしれないが、市区議会選になるとホントに誰も知らないので入れようがない。そういう人も結構いるだろう。

 この問題は結構根が深いように思う。住民意識が薄い人が投票を放棄しても責められない。同じように国政選挙だって、国民意識が薄いというか、社会に関心がない人も結構多い。そういう人にまで投票を義務付けて、無理やり投票させても仕方ないと思う。だけど投票率が半分にもいかない選挙でいいんだろうか。行かない人の分も、投票券を送るし投票用紙を用意する。早い話、投票したくない、投票してくれない人は、もう投票券を送らなくてもいいのではないか。これは「暴論」だし、いつ気が変わって投票するか判らない。だから無理なんだけど、今のように20歳を過ぎたら自動的に投票の案内が送られてくるというので良いのか。

 アメリカみたいに、まず有権者登録が必要だということになったら、今の日本で何人が登録するのだろうか?でも「マイ・ナンバー」制度も作るということだし、インターネットでも登録可ということにすれば、いずれはできないこともないだろう。そして登録の時に、特にチェックしなければ全部の選挙に行けるけど、都道府県選挙、市区町村選挙は行かなくてもいいと希望できるようにする。そうすれば、行く気がある人だけで選挙するわけだから、投票率の考え方も違ってくる。それで住民投票をやって、50%にいかないんだったら、これは確かに不成立でも仕方ない。

 僕は、住民意識の薄い人、まあ「新住民」と呼ばれたりすることもあると思うが、最近になって移ってきた住民を地方選挙から排除したいと言っているわけではない。今現に住んでいる場所にアイデンティティがない人でも、他の場所なら関心を持っているという人もいるだろう。福島県「浜通り」出身で生まれ故郷は原発事故で全員避難中、東京の大学に入り学生時代は大学の近くの児童施設でボランティア、就職して近くに通勤して残業が多く寝る時間以外のほとんどを新宿で過ごす(よって、ポスター掲示板を見たり選挙運動を聞いたりして、新宿区の方が身近な感じ)、新宿に通勤するために便利な場所にアパートを借りて住んでいる。こういう場合、自分の帰属意識は福島、大学町、新宿区、住んでいる町の順ではないだろうか。こういう人でも、結婚して子供が出来たり、親が老齢になって東京に出てきて同居したりすれば、つまり医療、福祉、教育などが自分の問題になったら、住んでいる町に住民意識が出てくるはずである。

 この人の場合、本当は福島の故郷がどうなってしまうかが一番気になっているとする。では「ふるさと納税制度」があるんだから、登録すれば「ふるさと投票」ができる制度があれば、登録する人がいるだろうか。インターネットで投票できる制度があれば、あるいは郵便投票でもいいけれど、そういう制度自体は可能だろう。在外日本人が投票できる制度(国政だけだが)がある以上、できないはずはない。「一票の価値」の問題も、この都市部の住民意識の問題を考えに入れると、新しい見方もできるのではないか。
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