山下敦弘監督、渋谷(しぶたに)すばる、二階堂ふみ主演の「味園ユニバース」。またまた山下監督の不可思議な魅力に魅了される映画の登場。題名が関西以外の人には意味不明なので、そこから書く。「味園ユニバース」というのは大阪・ミナミの千日前に実在する総合レジャービル、味園ビルにある貸しホール(元キャバレー)。味園ビルは1956年に建設され、宴会場、サウナ、スナック、キャバレー、ダンスホールなどが集まった施設として有名だったらしい。テレビCMが有名だったらしいが、もちろん関東圏では全く知らない。キャバレーは2011年3月15日に営業を終え、今は貸しホールになってるという話。
そういう大阪「土着」文化を代表するような場所で、「赤犬」という実在のバンドが活躍している。ある日、ある野外コンサートで、ライブ中にわけの判らぬ男がフラフラ入ってきて歌を絶唱する。この男は映画の冒頭で、刑務所を出所した後で、街中を歩いていたらなぜか襲われた。そのまま記憶喪失になってしまったらしいが、歌だけは覚えている。赤犬のマネージャー、カスミは彼の歌にひかれるものを感じ、音楽スタジオをやってる実家に連れてきて、「ポチ男」と名付けて面倒を見始める。
ポチ男が渋谷すばるで、「関ジャニ∞」のメンバーだというけど知らない。記憶喪失の謎は次第に解明されるけど、そうすると魅力も失せていく。歌だけが残った設定の冒頭のシーンが圧倒的な印象で、どうしようもない焦燥と孤独を生きる切実さが伝わってくる。カスミが最近の日本映画を支える女優、二階堂ふみ。親が死んで高校にも行かず、認知症の祖父の面倒を見ながら、スタジオやカラオケの小さな場所を守っている。その過去に縛られた青春と、過去を失った男。その男にも実はしょうもない過去があったわけで、そんなドラマが歌と大阪の町を通して展開していく。二階堂ふみは、いつもと少し違って、ほとんどはむっつりしたまま進行するのが心に刺さる。
山下敦弘(のぶひろ)監督(1976~)は、愛知県出身で大阪芸大出身だから、大阪はなじみの深い土地のはずだが、映画に出てくるのは初めてだろう。「リンダ リンダ リンダ」や「天然コケッコー」といった忘れがたい青春映画の作り手だが、それよりも「何だろうなあ?」みたいな作品がけっこうある。「松ヶ根乱射事件」「もらとりあむタマ子」が代表的で、ストーリイ的にも技法的にも引っかかるところはどこにもないんだけど、見た後に「何、これ?どうして?」みたいな感じが残り、でも忘れがたい感触を残す映画なのである。前作の「超能力研究部の3人」になると、「何が何だかわからん」感も出てくるが、今回の「味園ユニバース」は判らないところはない。でも、何だろうなあみたいな感触は今までの作品に似ている。安易に感動も絶望もさせずに、ちょっとした「何か」が起こったところで映画を終わらせてしまうからかもしれない。映画自体が難しいということはないんだけど、一種の「異文化」探訪映画的な面がある。大阪にこういうとこがあるということ。赤犬や渋谷すばるの歌。何だかそういうことが全部心に引っ掛かりを残している。
そういう大阪「土着」文化を代表するような場所で、「赤犬」という実在のバンドが活躍している。ある日、ある野外コンサートで、ライブ中にわけの判らぬ男がフラフラ入ってきて歌を絶唱する。この男は映画の冒頭で、刑務所を出所した後で、街中を歩いていたらなぜか襲われた。そのまま記憶喪失になってしまったらしいが、歌だけは覚えている。赤犬のマネージャー、カスミは彼の歌にひかれるものを感じ、音楽スタジオをやってる実家に連れてきて、「ポチ男」と名付けて面倒を見始める。
ポチ男が渋谷すばるで、「関ジャニ∞」のメンバーだというけど知らない。記憶喪失の謎は次第に解明されるけど、そうすると魅力も失せていく。歌だけが残った設定の冒頭のシーンが圧倒的な印象で、どうしようもない焦燥と孤独を生きる切実さが伝わってくる。カスミが最近の日本映画を支える女優、二階堂ふみ。親が死んで高校にも行かず、認知症の祖父の面倒を見ながら、スタジオやカラオケの小さな場所を守っている。その過去に縛られた青春と、過去を失った男。その男にも実はしょうもない過去があったわけで、そんなドラマが歌と大阪の町を通して展開していく。二階堂ふみは、いつもと少し違って、ほとんどはむっつりしたまま進行するのが心に刺さる。
山下敦弘(のぶひろ)監督(1976~)は、愛知県出身で大阪芸大出身だから、大阪はなじみの深い土地のはずだが、映画に出てくるのは初めてだろう。「リンダ リンダ リンダ」や「天然コケッコー」といった忘れがたい青春映画の作り手だが、それよりも「何だろうなあ?」みたいな作品がけっこうある。「松ヶ根乱射事件」「もらとりあむタマ子」が代表的で、ストーリイ的にも技法的にも引っかかるところはどこにもないんだけど、見た後に「何、これ?どうして?」みたいな感じが残り、でも忘れがたい感触を残す映画なのである。前作の「超能力研究部の3人」になると、「何が何だかわからん」感も出てくるが、今回の「味園ユニバース」は判らないところはない。でも、何だろうなあみたいな感触は今までの作品に似ている。安易に感動も絶望もさせずに、ちょっとした「何か」が起こったところで映画を終わらせてしまうからかもしれない。映画自体が難しいということはないんだけど、一種の「異文化」探訪映画的な面がある。大阪にこういうとこがあるということ。赤犬や渋谷すばるの歌。何だかそういうことが全部心に引っ掛かりを残している。