尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

テロを非難し、チュニジアに連帯する-IS問題⑧

2015年03月19日 21時48分01秒 |  〃  (国際問題)
 昨日、「チュニジアはどうなるか」という記事を書いた。書いている途中で、首都チュニスでのテロ事件が報じられた。まさに心配が的中してしまったというべきで、「シンクロニシティ」とでも言うべき事態に自分で驚いている。第一報では、国会と美術館が襲われ死者8人かという情報だったが、現時点で日本人3名を含む23名が死亡と伝えられている。襲撃されたのはバルドー博物館というところで、「チュニジアのルーブル美術館」と言われるような場所だということである。隣の国会を襲撃するつもりだったという説もあるが、外国人観光客を襲撃目標としたのだと考えるのが自然ではないか。(犠牲者数は、死者二人が襲撃犯人だったことが判明し、21人とチュニジア政府が訂正した。3.21)

 「チュニジアとはどういう国か」は今さら僕が書かなくても、マスコミで多く報道されるだろう。チュニジアの目指す「自由と民主主義に基づく政教分離のイスラム教徒の国」は、「IS(イスラミック・ステート)」というテロ組織と対極にある。そのチュニジアを支える産業の柱が観光と言っていい。チュニジアの観光産業に打撃を与えるということは、チュニジアの現行体制に大きな打撃を与えることである。観光客が減れば、ますます経済が悪化し、政府への不満が高まる。結局、民主主義ではダメなんだというムードをチュニジア国民に与えることになる。「アラブの春の唯一の成功例」を失敗に追い込めれば、アラブ諸国の民衆にとっても「大きな教訓」になるだろう。結局、不満を解決してくれるのは、イスラム革命しかないのでは?ということになりかねない。それをねらって、外国人観光客が集まる場所が選ばれた可能性が高いのではないか。

 つまり、チュニジアの民主主義体制そのものが、イスラム過激派の標的になっているのだろうと思われる。そう考えると、チュニジアは危険なんだ、行かない方がいいな、行ってはいけないところだと言った反応をしてしまうなら、テロ実行者の「思う壷」ではないか。日本ではついそういう風に発想してしまう人も多いし、外務省の危険情報の程度を問題化したりする。でも、今時点でアラブ諸国や欧米のみならず、テロだけに限らず様々な危険が潜んでいるのは間違いないことであり、チュニジアの首都チュニスが特に危険性が非常に高いということではないだろう。では、チュニジアに今こそ行くべきなのかと言えば、それは「観光」なんだから人それぞれが判断すればいいとしか僕には言えない。日本からは遠くて、なんにせよそう行けるところではない。

 ただ、チュニジアのほとんどの国民は、チュニジアのイメージを損壊するテロ事件を非難し、犠牲者を追悼し、怒りと悲しみを噛みしめているだろうと思う。世界は今こそ、チュニジア国民に連帯を表明するべき時だと思う。フランスのテロ事件の時と同じく、世界の指導者はチュニスに集うべきである。この事件をきっかけに、チュニジアの自由が壊されるか、壊されなくてもテロに対する過剰な警備による強権国家になってしまわないように、チュニジアの民主主義を支える意思を世界は表明するべきだ

 とにかく、チュニジアの未来は世界の注目であり、希望であると僕は思っている。だからこそ、リビアやアルジェリアからも多くのテロリストが侵入し、これからもテロが起きる可能性があるのは否定できない。だから、今こそチュニジアを支援するべきである。東京にはチュニジア料理店もあるようだし、そういうところからでもチュニジアを知ろうとしていくことが大事ではないか。
 また、3.27にある日本ーチュニジアのサッカー公式試合は、大分で行われるので見に行くことはできないけど、その場では是非、犠牲者への追悼とチュニジアへの連帯の意思を表明する行動が望まれると思う。
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