尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

月岡夢路、杉本苑子、与謝野馨等-2017年5月の訃報①

2017年06月06日 22時44分25秒 | 追悼
 2017年5月の訃報の中で、僕に一番感慨があったのは、24日の大道寺将司の訃報だった。「東アジア反日武装戦線」事件の死刑囚である。だが、そのことを書いてると長くなりそうだし、ちょっとトーンが違う文章になりそうだから、もう一回別に書くことにする。

 女優の月岡夢路(1922~2017.5.3)が死去、94歳。このぐらい高齢だと、もう女優としての旬の時代を知らず、映画史的知識の中の人という感じになる。本名は井上明子だが、これは井上梅次監督(日活で「嵐を呼ぶ男」などを作った監督。手堅い娯楽作品をコンスタントに作り続け、再評価が必要な職人監督)と結婚したためである。旧姓を「旭爪」(ひのつめ)とは今初めて知った。
 
 宝塚出身で、27期生の同期に越路吹雪、乙和信子らがいる。1942年に映画「新雪」が大ヒットしたとあるが、評判のみ高いけど見たことはない。(半分ほどが残存したフィルムが近年ロシアで発掘された。)その後松竹で活動し、やがて製作を再開した日活に移って多くの文芸映画に主演して活躍した。記録を見ると、「晩春」「君の名は」「二十四の瞳」などにも出ているが、そういえば出ていたなという感じ。日活の「乳房よ永遠なれ」(1955)や「美徳のよろめき」あたりが代表作かなと思う。前者は31歳で乳がんで亡くなった女性歌人、中条ふみ子を田中絹代が監督した。重い感動を残す映画。

 歴史小説の杉本苑子(そのこ 1925~2017.5.31)が91歳で死去。この人は晩年に文化勲章を受けた。まあ国家の授与する勲章に意味があると思っているわけでもないけど、なんで永井路子さんは文化功労者にもなってないのか。(ついでに言うと、21世紀になってからの小説家の文化勲章受章者は、杉本苑子、瀬戸内寂聴、田辺聖子、丸谷才一、河野多恵子、平岩弓枝と圧倒的に女性が多い。女性受賞者を選ぶと作家に偏るのかもしれないけど、誰もが納得できる顔ぶれじゃない。)

 吉川英治の門下生として修業し、1963年に「弧愁の岸」で直木賞を得た。これは薩摩藩が木曽川改修工事を命じられた史実をもとに、権力と人間の運命を見つめた感動作で必読本。「滝沢馬琴」や「穢土荘厳」が代表作と言われるが、前者は読んでないと思う。日本史が専門とはいえ、自分がすべての時代に詳しいわけじゃない。むしろ小説で時代のイメージをつかんだ方が授業に役立つと思って、けっこう古代・中世を舞台にした小説を読んだ時期がある。奈良時代を描く「穢土荘厳」もそういう意味で読んだと思う…んだけど、もう忘れてるなあ。

 政治家の与謝野馨(よさのかおる 1938~2017.5.21)、78歳。与謝野鉄幹・晶子の次男で外交官の与謝野秀の長男。東大法学部を出て、中曽根の紹介で日本原子力発電に就職した。もっといい会社があるだろうと思うけど、原子力が本気で夢のエネルギーだと思い込んでいた人がいた時代である。1972年の総選挙に34歳で出て落選。76年に初当選したものの、79年にはまた落選。80年にカムバックして、80年代はトップ当選を続けた。小選挙区になってからは地元の東京1区で出て、小選挙区だけで言えば海江田万里と2勝3敗だった。2回は比例で当選したが、2000年の選挙では比例区で復活できなかった。政策通だけど、選挙には弱かったのである。

 村山内閣で文部相で初入閣、小渕内閣で通産相。その後ブランクがあるが、安倍(第1次)、福田(康夫)、麻生内閣でともに重要閣僚を務めている。福田首相辞任後の総裁選に出馬して2位となり、麻生内閣で経済財政担当相となる、って総裁選に出たのも含めて全く忘れているなあ。中川昭一辞任後の財務相も務めたとある。何で忘れたかというと、自民党が下野したあとで離党して「たちあがれ日本」を結成。さらに2011年1月に、さらに離党して民主党の菅直人内閣に経済財政相として入閣した。「政策職人」なのかもしれないけど、このあたりの行動はやはり理解できないものがあった。結局死の直前に自民に復党して亡くなった。

 劇団四季の創立メンバーだという俳優、日下武史(くさか・たけし 2017.5.17没、86歳)はスペインで亡くなった。だけど、劇団四季の舞台は全然見てないから、舞台では知らないし、映画でもほとんど記憶がない。でもこの人の名前を知っているのは、外国映画の吹き替えをたくさんやってたからだと思う。それでは役者としての評価と意味では不十分なんだろうけど。

 もう長くなったので外国人は名前だけで。3代目ジェームズ・ボンドのロジャー・ムーアは、5.23没、89歳。カーター政権時代の大統領補佐官ブレジンスキーが5.26没、89歳。パナマの元独裁者で、89年の米軍侵攻で捕らえられ麻薬取引で服役したのノリエガ将軍がパナマで死去。5.29、83歳。もう知らない、または忘れている人が多いだろうが、麻薬取引に関わったとして米国で起訴され、身柄確保のため米軍が侵攻したのである。外国の指導者を、いくら問題があろうと、自国に連れてきて服役させるというのは「拉致」というもんだろう。(下の写真は書いた順番。)
  
 他に、歴史学者の岡田英弘(5.25没、86歳)、旧長銀頭取でバブル崩壊後に逮捕、起訴され、最高裁で逆転無罪となった大野木克信(5.10没、80歳)、元社会衆院議員で、その後成田市長になった小川国彦(5.20没、84歳)、東京五輪閉会式を実況した元NHKアナウンサー、土門正夫(5.2没、87歳)、中国の元外相。副首相の銭其琛(5.9没、89歳)などの訃報があった。
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