ロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督(1964~)の映画「ラブレス」が公開されている。2017年のカンヌ映画祭で審査員賞を獲得している。それだけの力作に間違いないけれど、あまりにも暗い画面の連続で「愛の不在」を描いて、見るのが辛くなるほどだ。カンヌのコンペ部門に出るぐらいの映画だから、エンタメ性がなくてもいいんだけど、アントニオーニの「愛の不毛」を超えて現代は「愛の不在」なのかと暗然とする映画ではある。
ズビャギンツェフ監督は2003年の「父、帰る」や2014年の「裁かれるは善人のみ」など、内容は暗いけど重量感のある映画を作ってきた。国際的な評価も高い。しかし、プーチン政権下のロシアを象徴するかのような、暗雲が頭上に立ちこめる圧迫感がすごい。今回の映画もある夫婦がそれぞれ違うパートナーを作って、離婚間近でひたすらケンカをしている。見ている方が鬱陶しくなる。12歳の男の子がいるんだけど、どっちも引き取りたくないらしい。そんな事情を知らされて、子どもはとてもつらそうな顔をしている。
その子アレクセイがある日、行方不明になる。父の方は妻に出ていけと言われて、妊娠中の新しい愛人の方に行っていた。母の方も愛人と会っていて夜も遅いから、子どもは寝ていて朝は一人で学校へ行ってると思い込んでいた。そうしたら担任の先生から、二日間登校してないと電話がある。警察に連絡するが、どうせ家出だろうと言われ、事件がいっぱいだからと後回しにされる。そして、子ども探しのボランティア組織に頼んだらと言われる。
この団体は実際に似たようなものがあるらしいが、実に水際立った実行力に驚く。あっという間に多数のボランティアが集まり、組織的に動いてゆく。行方不明児童探しのマニュアルとして使えるんじゃないか的レベルである。ただ一人の肉親である母方の祖母をまず訪ねるが、もともとうまく行ってなかったという話が裏付けられるだけ。この親にしてこの子ありという言葉を思い出す。子どものただ一人の友人から、「基地」の話を聞きだす。(パソコンを調べてメールにあったらしい。)そこは森の中の廃墟のホテルで、ここがまた映画のテーマを示すような荒廃ぶりである。
現実世界で起きているんだから、家出か事故か犯罪か、何らかの合理的結末があるはずだが、この映画では明示的な結果は示されないまま時間が経つ。オバマの選挙ニュースが出てくるので、2012年秋のことである。ロシアではもう雪が降り始めている。この監督は、今まで荒涼たる風景の映画が多かったけど、今回はモスクワ近郊でロケされている。都市近郊の荒廃が際立っている。数年後、ウクライナ内戦をテレビがロシア寄りで伝えている中、それぞれは新しいパートナーと暮らしている。子どもは見つかっていない。暗澹たる力作である。
ズビャギンツェフ監督は2003年の「父、帰る」や2014年の「裁かれるは善人のみ」など、内容は暗いけど重量感のある映画を作ってきた。国際的な評価も高い。しかし、プーチン政権下のロシアを象徴するかのような、暗雲が頭上に立ちこめる圧迫感がすごい。今回の映画もある夫婦がそれぞれ違うパートナーを作って、離婚間近でひたすらケンカをしている。見ている方が鬱陶しくなる。12歳の男の子がいるんだけど、どっちも引き取りたくないらしい。そんな事情を知らされて、子どもはとてもつらそうな顔をしている。
その子アレクセイがある日、行方不明になる。父の方は妻に出ていけと言われて、妊娠中の新しい愛人の方に行っていた。母の方も愛人と会っていて夜も遅いから、子どもは寝ていて朝は一人で学校へ行ってると思い込んでいた。そうしたら担任の先生から、二日間登校してないと電話がある。警察に連絡するが、どうせ家出だろうと言われ、事件がいっぱいだからと後回しにされる。そして、子ども探しのボランティア組織に頼んだらと言われる。
この団体は実際に似たようなものがあるらしいが、実に水際立った実行力に驚く。あっという間に多数のボランティアが集まり、組織的に動いてゆく。行方不明児童探しのマニュアルとして使えるんじゃないか的レベルである。ただ一人の肉親である母方の祖母をまず訪ねるが、もともとうまく行ってなかったという話が裏付けられるだけ。この親にしてこの子ありという言葉を思い出す。子どものただ一人の友人から、「基地」の話を聞きだす。(パソコンを調べてメールにあったらしい。)そこは森の中の廃墟のホテルで、ここがまた映画のテーマを示すような荒廃ぶりである。
現実世界で起きているんだから、家出か事故か犯罪か、何らかの合理的結末があるはずだが、この映画では明示的な結果は示されないまま時間が経つ。オバマの選挙ニュースが出てくるので、2012年秋のことである。ロシアではもう雪が降り始めている。この監督は、今まで荒涼たる風景の映画が多かったけど、今回はモスクワ近郊でロケされている。都市近郊の荒廃が際立っている。数年後、ウクライナ内戦をテレビがロシア寄りで伝えている中、それぞれは新しいパートナーと暮らしている。子どもは見つかっていない。暗澹たる力作である。