「洗骨」(せんこつ)という映画がなかなか好評らしいので見ておこうと思った。面白くかつ厳粛な力作で、伝統と現代を考えさせる。「鈴木家の嘘」にも言えるが、深刻で重いテーマもコメディタッチでゆったりと語るところに、新しい語り口を感じる。脚本・監督は照屋年之(お笑い芸人ガレッジセールのゴリ)で、確かな才能を発揮していると思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/1b/8a/65fd78322db576ddcc55e4f664475472_s.jpg)
「洗骨」とは沖縄に昔からある葬送の風習で、琉球王家の墓も洗骨で葬られたという。今では沖縄本島ではほとんど見られなくなったが、沖縄の離島、奄美群島などには残っているとも言われる。死者は最初に風葬され、数年後に肉がなくなり骨だけになった頃に、家族の手で骨をきれいに洗って「この世」に別れを告げる。この映画は沖縄の粟国島(あぐにじま)で撮影された。那覇市の西北、船で2時間10分ほどの位置にある。「粟国の塩」が有名で、映画「ナビィの恋」の舞台でもある。島の西側に「あの世」があり、そこで風葬が行われる。
4年前に母が死に、それ以前にだまされて事業に失敗した父親は全く無気力になってしまった。この父親、新城信綱を演じる奥田瑛二の存在感が半端じゃない。なんだか翁長前知事を思わせる風貌で、後半の風葬シーンになると俄然シャンとする。長男の新城剛(筒井道隆)は東京で働いて父の借金を返している。4年前は妻と子どもを連れてきたが、今回は彼ひとり。一方、名古屋で美容師をしている妹の新城優子(水崎綾女)は妊婦姿で帰郷する。未婚で母になると言っているが、島人は噂に余念ない。元気で一家を仕切っているのは、叔母の高安信子(大島蓉子)。
(風葬シーン)
前半はこれら家族の事情が様々に語られる。父と長男はいさかい、長男は妹を非難する。優子役の水崎綾女(みさき・あやめ、1989~)は出産間近の妊婦役で大活躍。最後には風葬シーンで産気づくという凄い設定に挑戦している。映画では河瀨直美監督の「光」に出ていたが、「洗骨」は20代最後の記念となるにふさわしい大力演。それにもまして大島蓉子の叔母が圧倒的でビックリした。男は頼りなく女は元気な一族なのである。沖縄の風土に合っているような感じ。
(水崎綾女)
前半のクライマックスは優子の男性問題だが、それは見る時の楽しみのために書かない。そして風葬になる。どうやって撮影したのか、まさかホンモノではないと思うけど、もう本当の死者の骨としか思えない描写。それに墓の中から見るシーンには驚いた。劇映画ではあるけれど、これほど厳粛なシーンも珍しい。それが突然、優子が産気づき転調する。ここは素晴らしいシーンではあるが、なんか釈然としない感じも残る。「風葬」はやはり「残すべき伝統」とばかりは言えないのではないか。どうもこの厳粛なる儀式に自信を持って参加できると言い切れる人も少ないのではないか。特に本土出身だとしたら。そこに臨月間近の女性が母とはいえ出る必要があるのか、などなど。ちょっと考え込んでしまうけど、力作には違いない。
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「洗骨」とは沖縄に昔からある葬送の風習で、琉球王家の墓も洗骨で葬られたという。今では沖縄本島ではほとんど見られなくなったが、沖縄の離島、奄美群島などには残っているとも言われる。死者は最初に風葬され、数年後に肉がなくなり骨だけになった頃に、家族の手で骨をきれいに洗って「この世」に別れを告げる。この映画は沖縄の粟国島(あぐにじま)で撮影された。那覇市の西北、船で2時間10分ほどの位置にある。「粟国の塩」が有名で、映画「ナビィの恋」の舞台でもある。島の西側に「あの世」があり、そこで風葬が行われる。
4年前に母が死に、それ以前にだまされて事業に失敗した父親は全く無気力になってしまった。この父親、新城信綱を演じる奥田瑛二の存在感が半端じゃない。なんだか翁長前知事を思わせる風貌で、後半の風葬シーンになると俄然シャンとする。長男の新城剛(筒井道隆)は東京で働いて父の借金を返している。4年前は妻と子どもを連れてきたが、今回は彼ひとり。一方、名古屋で美容師をしている妹の新城優子(水崎綾女)は妊婦姿で帰郷する。未婚で母になると言っているが、島人は噂に余念ない。元気で一家を仕切っているのは、叔母の高安信子(大島蓉子)。
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前半はこれら家族の事情が様々に語られる。父と長男はいさかい、長男は妹を非難する。優子役の水崎綾女(みさき・あやめ、1989~)は出産間近の妊婦役で大活躍。最後には風葬シーンで産気づくという凄い設定に挑戦している。映画では河瀨直美監督の「光」に出ていたが、「洗骨」は20代最後の記念となるにふさわしい大力演。それにもまして大島蓉子の叔母が圧倒的でビックリした。男は頼りなく女は元気な一族なのである。沖縄の風土に合っているような感じ。
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前半のクライマックスは優子の男性問題だが、それは見る時の楽しみのために書かない。そして風葬になる。どうやって撮影したのか、まさかホンモノではないと思うけど、もう本当の死者の骨としか思えない描写。それに墓の中から見るシーンには驚いた。劇映画ではあるけれど、これほど厳粛なシーンも珍しい。それが突然、優子が産気づき転調する。ここは素晴らしいシーンではあるが、なんか釈然としない感じも残る。「風葬」はやはり「残すべき伝統」とばかりは言えないのではないか。どうもこの厳粛なる儀式に自信を持って参加できると言い切れる人も少ないのではないか。特に本土出身だとしたら。そこに臨月間近の女性が母とはいえ出る必要があるのか、などなど。ちょっと考え込んでしまうけど、力作には違いない。