尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

映画「バハールの涙」、ISと戦う女性部隊

2019年02月07日 22時10分17秒 |  〃  (新作外国映画)
 テーマ的に見ておきたいと思う映画があり、書くかどうか迷うんだけど紹介の意味で簡単に。どっちもフランス映画の「バハールの涙」と「ジュリアン」(「ジュリアン」は次回に)。大成功しているのかという不満もあるが、テーマが重い。「バハールの涙」はイラク北部でのIS(「イスラム国」)と戦うヤジディ教徒の女性部隊の日々を描く。フランス人の隻眼女性ジャーナリスト、マチルドの目から描かれている。だけど、ホントの戦闘シーンのはずがなく、本物の戦闘員がやってるわけでもない。劇映画として創作されているわけだが、それでも貴重な映画だ。
 
 ヤジディ教徒の悲劇は、2018年のノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんによって広く知られた。クルド自治区で平穏に暮らしていた弁護士のバハールは、ある日突然ISの襲撃を受け家族を奪われ「性奴隷」として売り買いされる。テレビで恩師が救出運動を続けていることを知り、なんとか連絡を付ける。「解放」はこのように行われたのか。そして子どもを取り戻すために、女たちの部隊を作るのである。彼女たちは失うものがなく、勇敢に戦う。ISは「女に殺されると天国に行けない」と思い込まされているから、この女性部隊を恐れている。

 戦闘シーンだけをとれば、もっと迫力のある映画はあるだろう。(例えば「プライベート・ライアン」「シン・レッド・ライン」「ダンケルク」など。)しかし、どんな映画だって銃弾はスクリーンのこちら側には飛んでこない。実際に舞台上で爆弾テロが起きて観客に被害が出るんだったら、誰もそんな芝居を見に行かない。その意味では、遠い異国で映画を見てどうなるのかとも思うが、でも見て判ることもある。例えば「沈黙」の重さ。音が消えた時ほど、危険が迫っているのだ。ISの「壊滅」も近いとされるが、ISを生み出したものがすぐに消えるわけではない。この映画はISと戦う側を描くので、ISそのもののことはよく判らない。

 女性部隊はクルド人部隊の一員として戦っているが、クルド人部隊は欧米軍の空襲を頼りにしている。女性軍は早く子どもたちを解放したいし、そのためには命を投げ出す覚悟がある。地雷が埋められて危険な地下道も、IS捕虜を先頭に歩かせて進んで行く。これは「捕虜」の扱いとしては問題があるだろうが、もはやそのようなレベルじゃないんだとも思う。皆の信頼熱いバハール隊長は、ゴルシフテ・ファラハニがやってる。全然気付かなかったけど、ジム・ジャームッシュの「パターソン」の妻だった人でイラン系。監督はエヴァ・ユッソンという人だが、全然知らない。「ジュリアン」は別に重大な問題を扱っているので、別に書きたい。
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