尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

2020年キネマ旬報ベストテン・外国映画編

2021年02月06日 22時18分39秒 |  〃  (新作外国映画)
 日本映画編を書いたので、もう一日自分の趣味で外国映画ベストテンの話。ベストテン選びというのは、執筆者の批評家などに10本順位を付けてもらって、1位を10点にして以下順に減らしていって、10位を1点にして総計してする。そういうやり方だから、順位が低くても多くの人が投票する映画が上に来る。日本映画で「スパイの妻」を1位にした人は5人、「海辺の映画館ーキネマの玉手箱」を1位にした人は10人いる。しかし、総計すると逆転したわけである。

 外国映画では、1位が「パラサイト 半地下の家族」、2位が「はちどり」で、韓国映画が独占した。今までに韓国映画では2010年に「息もできない」(ヤン・イクチュン)が1位になったことがあるがそれ以来である。ポン・ジュノ監督としては、「殺人の追憶」「母なる証明」が2位になっている。満を持してのベストワンだろう。1位が304点で、2位は179点だから、完全に圧勝である。カンヌ最高賞、アカデミー作品賞で、好き嫌いはあるかもしれないが完成度は頭一つ抜けていた。

 今年の注目は2位から4位を女性監督の作品が占めたことだろう。それぞれ個性の違う映画で、世界の映画界も大きく変わりつつある。2位が「はちどり」(キム・ボラ)、3位が「燃ゆる女の肖像」(セリーヌ・シアマ)、4位が「ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語」(グレタ・ガーウィグ)で、ここまでは150点超えである。5位が2作で117点なので、差がある。僕はグレタ・ガーウィグシアーシャ・ローナンのファンなので、個人的には「ストーリー・オブ・マイライフ」を推している。
(ストーリー・オブ・マイライフ)
 「はちどり」は公開時点ではベストテンで2位になるような映画だとは誰も思ってなかっただろう。女性監督のデビュー作で、あまり情報はなかった。世界の映画祭で受賞したりといった実績はなく、韓国内でも「パラサイト」と被って大きな賞は取れなかった。しかし、その繊細な描写と脚本の力には驚いた。詳しくは見た当時に書いたけれど、「小さな声に耳をすます」ことの大切さを改めて思い出せてくれる傑作だ。「燃ゆる女の肖像」は過去に材をフランス映画で、女性同士の愛を描いている。テーマも製作国も異なる3作品だが、今後も女性監督の躍進は続くだろう。
(はちどり)
 5位に「異端の鳥」と「死霊魂」、7位「フォードvsフェラーリ」、8位「ペイン・アンド・グローリー」、9位「1917 命をかけた伝令」、10位「TENET テネット」だった。ワン・ビン(王兵)監督の「死霊魂」は反右派闘争の犠牲者を描くドキュメンタリーだが、なんと8時間もある超大作。僕は体力面とどこかで夕食を取らないといけないことから、今回はパスした。「テネット」も見てないけど、クリストファー・ノーラン監督は相性が悪いので、そのうち見ようと思ってるうちに終わってしまった。「フォードvsフェラーリ」は見たけど、僕は題材に関心がないので、あまり面白くなかった。

 10位以下は、レ・ミゼラブル、ジョジョ・ラビット、リチャード・ジュエル、Mank/マンク、鵞鳥湖の夜、凱里ブルース、ミッドサマー、シカゴ7裁判、ヴィタリナ、パクラウ 名前を消された村、
 20位以下は、名もなき生涯、在りし日の歌、その手に触れるまで、娘は戦場で生まれた、ジュディ 虹の彼方に、ようこそ映画音響の世界へ、ある画家の数奇な運命、マーティ・エデン、ロングデイズ・ジャーニーこの世の涯てへ、シリアにて(30位まで)

 「Mank/マンク」と「シカゴ7裁判」はここでも書いたが、傑作だと思う。Netflix作品で、日本では小規模で劇場公開された。多分批評家向けの試写会などやってないのかもしれない。特に「マンク」はNetflixベストテンに必ず入るべき作品だが、内容が「市民ケーン」の内幕だから映画史に詳しくないと面白くないかも。いつも上位に入るクリント・イーストウッド作品が、13位だった。ベストテンに入った「15時17分、パリ行」や「運び屋」に比べて「リチャード・ジュエル」が特に悪いとも思えないけど。ここでも書いたがドイツ映画「ある画家の数奇な運命」はすごく面白かった。

 昔は長いこと見られなかったテレンス・マリック監督作品が2作も公開された。「名もなき生涯」は3時間ほどの長い映画で見逃した。「ソング・トゥ・ソング」は、これをいいと言う人もいるんだろうけど、僕は全く受け入れられない。ジム・ジャームッシュのゾンビ映画「デッド・ドント・ダイ」も全然面白くない。スウェーデンのロイ・アンダーソン監督「ホモ・サピエンスの涙」もヴェネツィア映画祭銀獅子賞だが、全く面白くない。ドイツのファティ・アキン監督「屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ」もひどかった。監督の名前や映画祭の結果は参考にはなるけれど、見てみないと判らない。
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