新作というか2022年の映画だが、1年前だから「旧作映画」とも言えないだろう。ちょっと前の映画は、昔なら「名画座」があちこちにあって、見る機会が多かった。最近は名画座が少なくなって、公開時に見逃すとなかなか見る機会がない。それでも映画は映像が残っているわけだから、網を張って待っていると、どこかでやってくれることがある。キネ旬ベストテン入選の日本映画で唯一見逃していた『ハケンアニメ!』を目黒シネマで上映しているので(26日まで)、是非見たいと思って行って来た。
原恵一監督のアニメ『かがみの孤城』と二本立てだが、どういう関係があるかというと辻村深月原作の特集だった。僕は知らなかったけれど、『ハケンアニメ!』の原作は2014年に刊行されて、翌年の本屋大賞3位になっていた。原作とは少し違う点もあるようだが、アニメ業界を舞台にして非常に見応えがある「お仕事映画」になっている。キネマ旬報ベストテンでは6位になっているが、『土を喰らう十二ヶ月』『PLAN75』と同点で6位が3本もある珍しい年だった。5位の阪本順治監督『冬薔薇』とは1点差で、この4作品はほぼ同じ点になったが、僕は『ハケンアニメ!』が一番面白いと思った。
土曜午後5時にぶつかる2本のテレビアニメ作品。ひとつは新人斎藤瞳監督(吉岡里帆)の『サウンドバック 奏の石』、もう一つは伝説の巨匠王子千春監督(中村倫也)の『運命戦線リデルライト』。瞳はかつて王子監督の作品に深い感銘を受けて、公務員を辞めてアニメ業界に飛び込んだという因縁がある。二つの作品の製作現場を並行して描きながら、アニメ製作の様々な部門(脚本、コンテ、背景、CG、アフレコ等々)だけでなく、宣伝やタイアップなど広範に描き出す。しかし、基本は創作に悩む巨匠に挑む新人監督の日々を描き出すことにある。アニメだけでなく、あらゆる仕事でも似たようなことがあるなあと思わせる設定だ。
(王子監督と斎藤瞳監督)
吉岡里帆は代表作になるだろう快演で、ちょっとした仕草に共感出来る演技をしている。その斎藤瞳監督に立ちふさがるのが、プロデューサーの行城(ゆきしろ)で柄本佑が圧倒的な存在感で怪演している。この行城をどう理解するかが鍵になるだろう。一方、王子監督の奔放な言動に振り回されながらも、理想のアニメを求めて9年ぶりの王子作品に全力を注ぐのがプロデューサーの有科(ありしな)で、こちらは尾野真千子が演じている。監督対決以上に興味深いのがプロデューサー対決で、非常に面白かった。その他、数多くの人が描かれるが、ちょっと出る人も含めて皆が生きている。
(吉野耕平監督と原作者辻村深月)
監督が本気を出せば、理想を目指して皆が頑張っていけると言ってしまえば、そんなに簡単じゃないよと言われるかもそれない。でもそれが辻村深月の世界なんだし、どんな仕事にも活かせる元気の素がいっぱいある。それはここで出て来る劇中アニメを見れば一目瞭然。辻村深月が話を書いて、それをちゃんとアニメ化されていて見応え十分。吉野耕平監督(1979~)は、CGクリエイターとして『君の名は。』(16)に参加した後、『水曜日が消えた』(2020)で劇場映画にデビューした人。今回が2作目だが、どんどん新しい才能が出て来るもんだと思う。劇場じゃなくて良いから、どこかで見て欲しい映画。
原恵一監督のアニメ『かがみの孤城』と二本立てだが、どういう関係があるかというと辻村深月原作の特集だった。僕は知らなかったけれど、『ハケンアニメ!』の原作は2014年に刊行されて、翌年の本屋大賞3位になっていた。原作とは少し違う点もあるようだが、アニメ業界を舞台にして非常に見応えがある「お仕事映画」になっている。キネマ旬報ベストテンでは6位になっているが、『土を喰らう十二ヶ月』『PLAN75』と同点で6位が3本もある珍しい年だった。5位の阪本順治監督『冬薔薇』とは1点差で、この4作品はほぼ同じ点になったが、僕は『ハケンアニメ!』が一番面白いと思った。
土曜午後5時にぶつかる2本のテレビアニメ作品。ひとつは新人斎藤瞳監督(吉岡里帆)の『サウンドバック 奏の石』、もう一つは伝説の巨匠王子千春監督(中村倫也)の『運命戦線リデルライト』。瞳はかつて王子監督の作品に深い感銘を受けて、公務員を辞めてアニメ業界に飛び込んだという因縁がある。二つの作品の製作現場を並行して描きながら、アニメ製作の様々な部門(脚本、コンテ、背景、CG、アフレコ等々)だけでなく、宣伝やタイアップなど広範に描き出す。しかし、基本は創作に悩む巨匠に挑む新人監督の日々を描き出すことにある。アニメだけでなく、あらゆる仕事でも似たようなことがあるなあと思わせる設定だ。
(王子監督と斎藤瞳監督)
吉岡里帆は代表作になるだろう快演で、ちょっとした仕草に共感出来る演技をしている。その斎藤瞳監督に立ちふさがるのが、プロデューサーの行城(ゆきしろ)で柄本佑が圧倒的な存在感で怪演している。この行城をどう理解するかが鍵になるだろう。一方、王子監督の奔放な言動に振り回されながらも、理想のアニメを求めて9年ぶりの王子作品に全力を注ぐのがプロデューサーの有科(ありしな)で、こちらは尾野真千子が演じている。監督対決以上に興味深いのがプロデューサー対決で、非常に面白かった。その他、数多くの人が描かれるが、ちょっと出る人も含めて皆が生きている。
(吉野耕平監督と原作者辻村深月)
監督が本気を出せば、理想を目指して皆が頑張っていけると言ってしまえば、そんなに簡単じゃないよと言われるかもそれない。でもそれが辻村深月の世界なんだし、どんな仕事にも活かせる元気の素がいっぱいある。それはここで出て来る劇中アニメを見れば一目瞭然。辻村深月が話を書いて、それをちゃんとアニメ化されていて見応え十分。吉野耕平監督(1979~)は、CGクリエイターとして『君の名は。』(16)に参加した後、『水曜日が消えた』(2020)で劇場映画にデビューした人。今回が2作目だが、どんどん新しい才能が出て来るもんだと思う。劇場じゃなくて良いから、どこかで見て欲しい映画。