尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

顔写真は要らないーそもそもアナログな「マイナカード」

2023年07月07日 22時23分50秒 | 政治
 訃報特集も終わったので、「マイナンバーカード」についてちょっと考えてみたい。今まで何度か「マイナ保険証」を批判してきたが、「マイナンバーカード」そのものについてはあまり書いてないと思う。自分に必要ないと思って、持とうと思わなかったから、考える必要も感じなかった。(紙保険証の来秋廃止法が成立した)今になって、マスコミも高齢者や障害者を無視しているなどと批判している。また様々なミスが報告されて、政府も「総点検」を実施すると言っている。何を今さら…と思うけど、こうなると判っていても一度決めたことは止められない「日本政治の病弊」がまた現れたということか。

 そこで「マイナンバーカード」について考えてみたんだけど、まずこのカードは取得するまでがやたら面倒くさい。高齢者施設などで代理申請しようと思っても、非常に大変だという。顔写真も病室で寝ているところを撮影しても、背景がどうのこうのなどと言われるとか。受け取りもまた面倒で、日時を指定して役所に取りに行く必要があるらしい。任意だというのに、何でそんなに頭が高いのか。身分証明書にもなるものすごく大事なカードなんだという話で、ふーん、そうなんだと思った人が多いと思う。

 僕もそれはそうだろうな程度しか思わなかった。政府は「デジタル社会へのパスポート」なんて言ってて、大事なカードだから写真付きなんだろうという思い込みである。現実のパスポートは、国境を越えて他国の主権下に移動するために使う。本人であることの確認を相手先の国家が要求するのも当然だろう。でも「デジタル社会」って何だろう。「電子政府」という言葉もある。直接役所まで出向かなくても、自宅のパソコンやスマホから様々な行政手続が可能になるということだろう。

 じゃあ、顔写真は不要なんじゃないか。顔写真を載せても、カードを使うときに顔認証するわけじゃない。たかが行政手続をするだけのために、写真は不要なのである。それはクレジットカードでネットショッピング出来ることでも明らかだ。クレジットカードは「ツケ」でモノが買えるし、時にはお金を借りることまで可能である。そんな機能を持つクレジットカードに顔写真なんかない。他人のなりすましが心配とか、情報の流出が心配とか言い出せば、クレジットカードも持てなくなる。

 民間企業としてクレジットカードが成り立つんだから、顔写真なんか不要なのである。その代わりに信用力を確保するために、年会費が必要だったり、本人確認に二段階認証が必要だったりする。マイナンバーカードがあっても、政府がお金を貸してくれるわけじゃない。行政手続を行うためだけなら、それほど厳しい仕組みはいらないはずだ。それを言えば、名前だって不要だと思う。名前ではなく、個人識別番号で、行政機関が国民を認識するというのが、マイナンバー制度のはずである。
 
 「コンビニで住民票が取れます」と言うけど、別人の住民票が出て来たという「事故」が起きている。それは前に発行した住民票が出て来たことが多いようだから、かなり単純なミスなのではないかと思う。それより、保険証でもなんでも、「同姓同名」の人が紐付けられていたという話を結構聞く。それはどういうことなんだろうか。そもそも同姓同名でも、「マイナンバー」は別である。個人番号で識別しているのではなく、個人名を認識して住民票を出して来ているのではないのか。

 そもそも「コンビニで住民票が取れる」が本当はおかしい。「マイナンバーカードで手続すれば、住民票は不要になります」というのでなければおかしい。いちいち住民票を提出するのが面倒なのである。よほど小さなお店で働いているのなら別だが、大企業や役所に勤務している場合なら、勤務先に個人番号を届ければ済む。いちいち通勤費請求のために住民票を取る必要がない。そういうのが「個人番号」の長所のはずだ。それなのに諸手続に住民票提出が必要で、そのため「コンビニで簡単に取れます」と言われると便利なような気がしてしまう。

 現在の政府が進めている「マイナンバーカード」は、本当はアナログ行政を温存する仕組みなのかもしれない。僕はどうもそんな気がしてならない。マイナンバーカードに関して考えたことはこの後、断続的に時々書いていきたいと思う。
コメント
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