尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

改めて「紙の保険証廃止」に反対するー高齢層78%反対を切り捨て

2023年12月22日 21時58分26秒 | 政治
 好きな映画や本の話、そして時々温泉や散歩の記事を書く。そんな風にできたら、どんなに幸せだろうと思う。しかし、そういうわけにはいかない。「政治」が自分の暮らしに入り込んで来る以上、何らかの対応をせざるを得ないのである。さて、岸田内閣は2024年12月2日に「紙の保険証」を廃止すると決めた。もっとも従来の保険証の有効期間内はそのまま使うことはできる。だが、基本は「マイナ保険証」を使うことになる。この問題については、昨年からもう何度も反対論を書いてきた。判っているから何度も書くなと言われるかもしれない。それでも初めて読む人もいるだろうから、何度も何度も書いていきたいのである。

 「マイナ保険証」については、様々な問題が噴出して岸田内閣支持率低下のきっかけ(の一つ)にもなった。そのため政府はマイナ保険証の検証を行ってきたが、多くの反対にもかかわらず「紙の保険証廃止」方針を変えなかった。一説によると、岸田首相は廃止時期の決定を先送りして「保留」にする意向だったという。それに対し河野太郎デジタル相が強行方針を維持するように働きかけて、直接総理に「直訴」する意向を見せたため、首相も「廃止」に踏み切らざるを得なかったとか。 

 国民の多くは世論調査を見る限り、方針撤回か延期が圧倒的に多い。関係する自治体、保険組合、医師会、福祉関係者なども多くの反対がある。一体、何のために「紙の保険証」をなくすのか、誰にもよく判らないだろう。今までうまく行かなかったなら、変更しないといけない。しかし、今までの保険証で困っていた人がいるだろうか。誰も困ったことなどなかったと思うが。

 共同通信社の世論調査によれば、「撤回」が41.7%「延期」が31.4%「予定通り廃止」が24.6%となっている。(東京新聞12月18日)もう圧倒的に来年秋の廃止を望んでいないのは明らかではないか。特に興味深いのは、年齢別の調査結果である。若年層(30代以下)、中年層(40~50代)、高齢層(60代以上)に分けたときに、高齢層になるほど圧倒的に反対が多くなるのである。撤回+延期を反対論とみなすと、若年層=62.0%、中年層=75.4%、高齢層=78.2%となっているのだ。
(世論調査結果)
 これは全く当然のことだろう。どの世代も病院に行くけれど、高齢層が一番病院のお世話になっている。子どももそうだけど、子どもは世論調査の対象外だし、自分で保険証を使わない。障害者も同じだが、高齢者はまず「マイナンバーカードを作ること」に困難がある。そしてカードを「マイナ保険証」にするためのスマホやパソコンの操作にも困難がある。そして、暗証番号を記憶し、病院の受付で使いこなすことにも困難がある。さらに自宅(または施設等)でカードを管理することにも困難がある。

 そんなことは自分の近くに、年寄りや障害者がいれば誰でも判ることである。紙の保険証の管理だって大変なのである。何度も同じことを書くことになるが、僕の母親もよく保険証をなくしたのである。大事だからとどこかにしまい込んで、その場所を失念するのである。認知症とまではいかなくても、高齢になれば誰でも多かれ少なかれ「物忘れ」になるのである。

 だから無理に年寄りにカードを作らせて、今後はどんどん無くすケースが起きるだろう。今は再発行に一月ぐらいかかるらしく、それを政府は一週間ぐらいにすると言っている。だけど、紙の保険証なら「その日のうちに再発行可能」なのである。これは自分で経験したから確かである。高齢だと、ほぼすべての人が国民健保になるはず。だから役所(出張所)に行けば、一日のうちに新しい保険証を使えるのである。中には家族がいない人もいるから、この時差は命に関わるものだ。

 ところで政府は「保険証専用のマイナカード」を作ることにした。これは「暗証番号不要」とのことで、政府が便利になると大宣伝していた様々な機能(住民票をコンビニで取れる、様々な給付金を簡単に受給出来るなど)は使えない。これは「暗証番号を忘れる」対策にはなる。写真が付くそうで、本人確認書類にもなるという。だから運転免許証を持たない人には一定の利便性はあるだろう。だが、これでは政府が進めて来た政策と食い違うではないか。紙の保険証のままで十分じゃないかと思うけど。
(資格確認書)
 ところで、自分はまだマイナンバーカードを作っていない。それじゃ困ると思うだろうが、全然困らない。保険証がなくなっても、「資格確認書」なるものを申請しなくても送ってくるそうだ。つまり、それは「事実上の保険証」で5年間有効だそうだ。これは多くの人にとって「マイナ保険証」より使い勝手がいいものじゃないかと思う。それでいいんじゃないの?

 「マイナ保険証」は同じものが永遠に使えるわけじゃない。5年ごとに暗証番号の有効期限が来る。もうその時点で大混乱が起きるのは間違いない。10年でカードそのものの期限が来る。そのたびに作り直す必要があるけど、10年前は元気だったけど、その後病気をした、障害者になったという人が相当数出るわけだから、今度はそういう人が更新出来ない。この問題は紙の保険証廃止を決めてオシマイじゃない。今までは「口座のひも付け間違い」などが問題化したが、使い始めたらもっと問題が起き続けると思う。

 今回の安倍派の裏金問題は、やはり「国家」を強調する人々は実は自分たちの利益を最優先することを明らかにした。それは歴史の法則とも言えるはずだが、世界中で忘れている人も多いようだ。「マイナカード」というものも、政府がポイントあげます、便利になりますといってる時点で、これは疑わしいと思うのが通常の感覚だろう。そういうものは出来る限り反対しなくてはならない。昨年は『 「マイナ保険証」、廃止までの10年の闘いへ』を書いた。教員免許更新制と同じく、世の中に広く不都合が認識されるまで10年のスパンで考えるべきだと思ったからだ。だが最近の政局を見れば、もっと早く撤回、あるいは少なくとも延期を実現することは不可能じゃないと思う。まだカード作ってない人、保険証にしてない人、そのままで大丈夫。

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